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「地域おこし協力隊」だからこそ。

伝えたいこと

今回伝えたいのは、
「地域おこし協力隊」として地方に入るメリット、その役割
についてです。

それをお伝えするための前提が長くなるのですが、
お付き合いいただけたらうれしいです。

自己紹介

はじめまして。
新潟県の津南町というところで地域おこし協力隊をしている、
長井惇子(ながい あつこ)と申します。

現在任期4年目に入ったところで、やっっっと、津南のことや自分のことについて整理がついてきたところです。

協力隊になる前は、コンサートやライブのMD事業を請け負っている会社にいました。
正直なところ、その多忙さやスケジュールに追われる日々に参ってしまいまして、辞職しました。

転職活動をしてみたものの、あまりピンとこなくて。
そんな中、「仕事ベースではなく、人生でやってみたかったこと」で考えてみよう、と急に思い立って。
スカイダイビングとか旅行で全都道府県制覇とか、規模の大小ある中であったのが、
「田舎で暮らしてみたい」
でした。

埼玉県生まれ埼玉県育ち、少しだけ東京暮らしという私にとって、旅行で訪れる地方は、その雰囲気や自然に囲まれた環境という面であこがれの対象でした。
「訪れる場所」ではなく「住む場所」となったとき、自分はどんな印象を抱くんだろう?体験してみたい!
という思いから、その手段を調べはじめ、
行きついたのが「地域おこし協力隊」でした。

今いる場所。津南町秋山郷

せっかく移住するなら、絶対にご飯がおいしい場所がいいなあ。
お酒好きだし、お酒がおいしいところにしよう。
そうして最後は勢いで着任したのが、新潟県津南町。
私は秋山郷地区担当の「地域密着型」の隊員として、着任しました。


冬の秋山郷

津南町は、日本でも随一の豪雪地帯です。
毎年2~3m降る雪は、とけて水となり、地面に浸み込んでいきます。
苗場山と鳥甲山の火山噴火物や、それを削っていった川たちによって日本有数の河岸段丘が形成されている津南では、
その水が自然ろ過され、柔らかい湧き水となって農業用水や飲み水として、大地を潤します。
そうして育ったお米や野菜はみずみずしく、暮らす人も潤していきます。

たくさん降る雪は厄介に思われがち。確かに大変な相手ではあります。
朝は早めに起きて雪かきをしなければいけないし、
屋根の雪おろしが必須の家はもっと大変。
タイミングもはからないといけない。
自然と、冬は家を空けるわけにはいかなくなります。

ときに敵として処理される雪ですが、
それでも津南にとっては確実に必要な存在であり、生活の一部だと感じます。
そして、敵として捉えられている間でさえも、
人々が結託するための繋ぎ役となってくれるのです。
「そっちも大変だな」「少し手伝おうか」
そんなやり取りを聞いたり、「ちょっと休憩しようや。茶飲もう」というお誘い文句をいただいたりすると、
雪があるからこその人の繋がりを実感することができます。

そんな津南町の中でも特に雪が多い地域、秋山郷というところが、私の拠点です。
秋山郷とは信濃川の支流、中津川の上流域に点在する集落の総称で、津南町から長野県最北端の村、栄村へと続いています。山肌迫る渓谷美は、紅葉の名所として知られ、平家落人の伝承やマタギ文化など、昔ながらの生活様式が色濃く残る秘境地域です。
豊かな自然の恩恵を受け、厳しい自然と共存し、自らの手で住む土地を整えながら、人も動物も植物も力強く生きている地域です。美しい風景はもちろんのこと、昔から残る保存食や野菜の保存技術といった食文化にもつながっており、豪雪も含めて魅力に溢れる場所です。

協力隊活動のこと

私の活動内容については、簡単に。

1年目は、ひたすら挨拶まわりやお茶飲み、町内のドライブや写真撮影を繰り返しました。
地域のことを知ること、自分を知ってもらうことを徹底すべきだと思ったからです。

2年目、地域交流ツアー(移住体験ツアーのようなもの)を開催しようと思いいたりました。
地域をまわる中で、「外から人が来ないと地域が成り立たない」という声があったからです。
あとは、話すたびに「よくこんなところに来たなあ」というネガティブな発言が「いいところだろう」に変わるといいなあと思ったのも開催理由です。
私がいくら「いいところだね」と言ってもなんだか信じてもらえてる感じがしなくて、、、。ツアー参加者からの生の声を届けられたらいいなと思いました。


地域交流ツアー

3年目、地域交流ツアーを継続しながら、改めて自分にとって何が大切か、地域に対してどのようなことをしたらいいのか、何をしたいのかを考えるようになりました。

コロナ禍の着任だったため延長措置があり、4年目にはいった現在、
「こんなの津南にあったらいいな」を自分でつくれるかも!というワクワク感でいっぱいです。
食べることが大好きな私にとって、農業者が多いこの町は、着任したというご縁も相まって応援したい大好きな町になりました。
娯楽が少ない津南町で、つくれば何でも一番乗りという魅力や可能性もあふれていて、今何からしようかと準備を進めているところです。

4年目に入って感じる、「協力隊」のメリット

「地域おこし協力隊」という存在は、とても曖昧で、幅が広くて、よくわからないものです。
津南ではほぼ地域密着型での採用なので、地域密着型基準で話させていただきますね。

すでに先輩隊員が実績を残している地域では、その実績をもとに比較されたり、「頼りになる存在」として評価されたりする。
取り入れるのが初めてな地域では、どんな風に扱っていいかわからなかったり、逆に隊員も何をしていいかわからなかったりする。

「地域おこし」という名前にひっぱられて、スペシャリストかのような期待の目を向けられることもあるし、
「新しい風」なんて曖昧なもので、来れば何かしてくれるだろう!というやや放置気味な対応を取られることもある。

でも多くの隊員は、捉え方が「協力」隊なんですよね。
地域の、何か目標ややりたいことに対してお手伝いをする存在、として協力隊になる人は多いんじゃないかな、と思います。

この捉え方の差は、結構顕著にあらわれます。
地域の方が「地域おこしの人」と呼ぶのと、隊員自身が「協力隊」と略すのがそのあらわれのひとつだと感じています。
そしてそのギャップに悩まされることもあります。私がその1人でした。

ここまで言うと、どこにメリットがあるんだ?と思いますよね。
どちらも正直で嘘偽りない私の意見です。
でも私は、この曖昧さに協力隊のメリットがあるんだと思っています。

メリット

まずは箇条書きで、書き出してみます。

1.フラットな立場で地域に入れる
2.「地域おこし協力隊」のネームバリュー
3.色々なアプローチから、「地域活性」と「自己実現」を繋げられる

1.フラットな立場で地域に入れる

地域おこし協力隊として地域に入ると、
「地域の人間」であり、「役場/企業の人間」である。
という二面性をもちます。

当然、元々その地域に住む人も、多くの場合はその二面性を持ち合わせているのですが。
「協力隊」となると、ひと味違うように感じるのです。

少なくとも津南町では、地域にいながら役場の人間として振る舞う、ということはあまりないように思います。
「住んでる集落があって、1人の人間があって、職業は後付けである」
という認識が根付いているのがその理由だと思います。
私が思う津南の魅力のひとつでもあります。

ただしこの認識は、長年そこに住んだ人に限るように思います。
協力隊として地域に入った人は、最初から、
「地域の人であり役場の人」です。
なおかつ、「役場に所属して地域のために活動する人」です。
つまり、
役場の人間として地域に入ってきた地域の人、という
なんだかややこしいような複雑なような立場が協力隊です。

このような二面性は、地域内のどこにいっても発生します。
役場においても「地域の人」がチラつくし、
初対面の人にあっても「秋山郷地区」と「協力隊(公務)」というふたつの情報が同時に入ります。

これは、ときに板挟みの原因にもなったりするのですが、
私は人に寄り添うことのできる二面性だと思うのです。

要は、どっちの気持ちも分かってあげられる。調整者、バランサーになれる大きな要因になります。
それこそが協力隊のメリットであり、楽しいところだなあと感じています。

地域で役場への意見が出たら、私から話してみるよと宥められるし、
役場から地域にこういう取り組みで入りたいんだけど、という案があれば、
それならこの人に話を通せばきっとスムーズだから一緒に話しましょう、と調整することができる。
私も両者とのコミュニケーションのきっかけになるし、信頼も得られる。

そして、両者をさらに理解しようと調べ、聞き、行動することは、地域や役場、ひいては町全体の現状理解に繋がり、その後の指針に大きく影響してきます。

地域おこし協力隊は、あくまでも地域の助けになることが基本です。
そのためには、現状把握は最も大切なことだと、私は思います。
その手段としても、協力隊の立場は、振る舞いやすいと思うのです。


集落のお茶飲み会

2.「地域おこし協力隊」のネームバリュー

「地域おこし協力隊」は、一定の信頼がそもそも付いてくる名前です。
正直、大層な名前だなあと思ったことは何度もあるのですが、
それでも、享受できるメリットの方が大きいなと思うのです。

地域内で初めて会う人でも、具体的に何をしているか知らなくても、
「ああ協力隊なのね」となんとなく受け入れてもらえます。

単なる知らない人が急に込み入った話を振っても、
ちょっと怪しく、あまり本音は出てこないかもしれません。
その点、協力隊という立場を明かして話をすると、
ある程度安心して話してもらえると思います。

それだけではなく、何か行動を起こすときにもめちゃくちゃ便利。
「こんな取り組みを始めた」
「こんな話し合いの場を設けた」
「意見を募っている」
の前に、「協力隊が」が付くだけで、なんとなく画期的な雰囲気が出ませんか?
外から来た人が頑張っている、なのか、それを後押しする自治体、なのか
一緒に頑張っている地域、なのか、、
協力隊自身の活躍だけでなく、その周りの人や団体にも注目が集まります。

結局何事も、口コミに勝るものはない、というのが個人的な意見です。
そこに、この「協力隊」という名前はとんでもなく価値がある。

少し計算高い見方なのかもしれませんが、利用しない手はない、と思います。

3.色んなアプローチから、「地域活性」と「自己実現」を繋げられる

これもあくまで主観的な話、津南の話です。
田舎、少なくとも津南は、要素は多いけれど、少ないものも多いと思います。

例えば、津南の野菜はどれもみずみずしくておいしい。
河岸段丘のおかげで、作付けや収穫に時間差を生み出せるため、ほかの地域よりも長く楽しめる。とうもろこしは、9月末まで収穫を行っています。
だけど、それをふるまうレストランや食堂はあまりないような、、。
ご自身やご近所がつくる野菜や料理が一番おいしい、というのも理由のひとつなのかもしれませんが、商売っ気がないというか、外に出す気がない。
(それがいいところのひとつでもあります。)

ほかの要素でも、同じようなことが起こっています。
奥ゆかしいというか、なんというか。

後は、津南の地形も、おもしろい要素のひとつです。
面積170㎢と小さな町ですが、
川や山で分けられ、どこにいくにも橋を渡ったり、少し遠回りをしなければいけません。
元々地区ごとが村で、合併したという歴史もあり、地区ごとの色も濃い。

こうした要素は、なんでもやれる、ということに繋がるなと感じました。

農業の担い手はどこの地域でも欲されているし、
兼業農家(趣味の農業も含む)もたくさんいて、仲間は大歓迎、
カフェや食堂は「この地区にはあるけどここにはない」があるので、注目されやすい。
そもそもいわゆる娯楽施設と呼べるものはないし、
レストランもコンセプトに空きがある。

どんなものにも挑戦できる環境だな、と思えました。
そしてそれは、結果的に必ず「地域活性」につながっていく。

自己実現が地域のためにもなるなんて、
贅沢だなあ、ありがたいなあと思います。

改めて、「地域おこし協力隊」ってなんだろう

メリットとして3つあげてみましたが、
結局「地域おこし協力隊」って何なんだろうなあと、私なりに改めて考えてみました。
このお話しをする上で、前提が2つあります。

1つ目は、先述したとおり、地域おこし協力隊は地域の助けになることが基本である、ということです。

極端な例ですが、地域の向かう方向と自分のやりたい方向性が180度違ったら、地域の方向性を優先すべきだし、きちんと話し合いをして調整をすべきで、最終的にはほかの地域を探した方がいいかもしれません。
もちろん、今まで地域になかったアプローチが画期的である可能性もありますが、あくまでそれは地域に納得(もしくは、最低限の許容)をしてもらった上でないと、意味がありません。

2つ目は、人の原動力は自己実現である、ということです。
たとえそれがボランティア精神のようなものであっても、
「ボランティアする自分」「感謝される自分」を実現したいから。
他人のためは、結局は「それを行う自分」のためだと思います。

この2つの前提の上で、
「地域おこし」とは、「地域活性」とは何なのだろう、
そして「地域おこし協力隊の役割とは何だ」と考えました。

元も子もない話ですが、
「地域おこし」なんて、なんておこがましい言葉なのだろう、と私は思います。
前向きな名称に見えて、実はめちゃくちゃネガティブな言葉なのでは?とも思います。
だって、「おこす必要がある地域ですよ!」って言ってるようにも聞こえる。
そんなつもりはなくても、現状のままでよかったらそもそもそんな存在必要ないわけです。
だから、最初地域の人に「地域おこし協力隊として来ました」って自己紹介するとき、毎回ドキドキしていました。
そんなもんいらん!失礼な!って言う人もいるかなあ、って思ってました。
全然そんなことなかったですけどね。温かかったです。
でも、それくらい危うい言葉だなとも思うのです。

秋山郷に入ってしばらく経って、
「お~頑張って地域をおこしてくれや~!」って言われたとき、
毎回「おこす必要なんてないじゃないですか!そもそも素敵な場所です」
と言っていました。もちろん本心です。

きっと、他の地域もそうなんだと思います。
元から素敵な場所で、魅力的な場所です。
それを少しだけ、外目線で伝えるだけ。
そこに住んでいる人に、「ここは素敵だね」と伝えたいし、
来たことない人に「こんなにいいところです!!」と言いたい。
そしてその伝えるお手伝いを、少しするだけなんだと思います。

そのために、綺麗な写真を撮るのか、おもしろい映像を撮るのか
自分が農業をするのか、観光的なものを展開するのか、地域内で交流をはかるのか、、
アプローチに幅があるのが「協力隊」なんじゃないかな、と思います。

「地域おこし協力隊」っておもしろい

長々と書いてしまいました。これで最後です。
何度も書きましたが、あくまでも主観的な話です。
参考程度にしてください。

よくわからなくて、曖昧で、大層な名前をもつ協力隊。
その名前や立場は、隊員にとっても地域にとっても役場にとっても、
利用価値のあるものだと思います。

もちろん、お試し移住としても、とても有益なものです。
3年かけてじっくり相性を確かめられるので。

今回は協力隊という立場から見る地域や仕事のことでしたが、
いち住人として、津南に、秋山郷に感謝していることはもっともっとあります。
ひとつだけあげると、資本主義に飲み込まれない生き方を見つけられたような気がしています。
協力隊という立場と同じで、資本主義は利用するものであり、そのシステムに飲まれるのは何だか悔しいなと思うようになりました。
その話はまた別の機会に。

実際のところ、津南町は豊富な資源がありながら、ちょっと厳しい状態にあると思います。
でも悲観しなくて済むのは、溢れんばかりの魅力と、そこにいる人たちの温かさがあるからです。
小さい町で、いわゆる娯楽施設はほとんどないけれど、
だからこそ、他のマネをすればなんでも一番乗りになれるという魅力もあります。

そうしたことに気づけたのは、やはり協力隊という立場で地域に入り、
自分なりに考え、聞いて、また考えたからだと思います。

だから、協力隊っておもしろい。
皆さんも、ぜひ。


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【日時】
令和7年2月19日(水)  19:00-21:00
 
【参加方法】
オンライン開催(バーチャルプレイス「ovice(オヴィス)」を使用)
 
【対象者】
地域おこし協力隊の活動に興味のある方、応募を考えている方、
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【申込等について】
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<参加申込フォーム>
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdqTNW58C2h1jhGQDLkqj8ckhfUfoVMF-r1Vu9tSEHOgtG-5A/viewform
 
・申込いただいた方には、開催前に参加方法等をお知らせします。

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