「もうお前には2度と会うことはできない」と息子に伝えた旦那-14歳で反抗期を終えた息子とオカンの物語(12)
4年生の冬にお父さんと会えて上機嫌だった息子。
裁判でわたしが単独親権を持つことになったけれど、旦那にも息子に会う(会える)権利はあるから、過去と違ってもっと会えるようになるかな……と思っていたら、そうは問屋が卸さないようで、相変わらず会えない日々。
と同時に、息子を1年から3年生まで担当してくれたカルロスが、生徒に暴行を働いたということで、バレンタインの頃、急に学校に来られなくなってしまった(深層は闇の中だけど、結局彼はそのまま学校には戻ってこなかった。謹慎中、彼は新たに働ける学校を探して、息子が卒業した翌年から移動してしまった)。
一人でも息子のことを理解してくれている人が側にいてくれる方がありがたかったので、カルロスを慕っている生徒のみならず、父兄にも、もちろんわたしにもショックな事件だったのだ。
そのショックが和らいだ頃、息子宛に旦那から電話がかかってきた。
当時息子は父親からわたしの電話に連絡があると、スピーカーホンにして会話を聞かせてくれる。
その時も、真っ暗なベッドの上に転がって会話をしていた。
たわいもない会話をしながら、時々「お前にとってママがいいママかもしれないけれど、オレにとってはただの意地悪なBxxxhな人だった」と、わたしをなじることを忘れていない。
「いいかい、息子よ。オレはもうお前に会えなくなるんだ」
と、突然、電話口からそんなことが聞こえた。
「だけど、愛しているよ、息子よ」
あたしはこの瞬間、
一体この人は何を言っているの?
もう2度と会えないって何?
と、軽くパニックになってしまった。
話を聴いていると、
どうやら皮膚癌か何かになった「かもしれない」。
それは「たぶん」悪性のもので、もしかしたら「死に至る」かもしれない。
だからもう、お前には2度と会えないんだ。
ということらしい。
息子は淡々と「Okay, Sure, I see」と返答している。
部屋が暗いため、どんな表情をしているのかわからない。
あたしはただただ、旦那に対して怒りしか湧いてこなかった。
どうしてこの人は、息子に対して「お前の母親は bxxxh 」とか言えるんだろう。
どうしてこの人は、いつも自分ばかりで「2度と会えない」と言われた息子が、どういう気持ちになるのかわからないんだろう。
せっかく落ち着いてきたのに、なぜこのタイミングで?
❖ ❖ ❖
翌日わたしは息子と一緒に学校に行った。
担任のアレンに伝えておかないと授業中に何か起こしたときに遅いのはないか? と心配したからだ。
担任の先生は忙しかったので、副担任のUに伝えておいた。
この話を聞いたUは「大人だってもう会えない、つまり死ぬかも知れないって聞いたら普通でいられないわよ。ましてやあなたの息子はまだ10歳よ」と言いながら、首を振っていた。
あたしは安心した。
ちゃんと生徒の心に寄り添ってくれる人が息子の側にして。
アレンにも伝えておくわ、と言って、あたしは仕事へと向かった。
❖ ❖ ❖
旦那の癌の話は本当なんだろうか?
気になったので、義理母と妹に電話して聞いてみたけれど、彼女たちも本当のことがよく分かっていない。
つまり、まだまだ検査が必要だということだ。
どうしていつもいつも、彼は私たちを振り回すようなことをするんだろう。
もういい加減にして欲しい!
と思っていたあの頃。
もちろん、旦那は癌ではなかったのか、真相はわからないけれど、まだ生きている。
なんであんなことを言ったんだろう、と思うけれど最近(2021年6月半ば)になって、旦那には旦那なりの「理由」があり、そしてどう転んでも彼は息子の父親なのだ。
わたしはしっかりと彼と向き合う必要があるんじゃないか?
いつまでも逃げてはいられないんじゃないの?
と、思う。
彼についての話は、また別の機会に書ければいいなと思っている。
2006年生まれのアメリカ人とのハーフの男の子のいるシングルマザーです。日々限界突破でNY生活中。息子の反抗期が終わって新しいことを息子と考えています。