はぐれミーシャ

旧ソ連の国、ベラルーシ在住のはぐれミーシャです。 ベラルーシ生活についてやこれまでの人…

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旧ソ連の国、ベラルーシ在住のはぐれミーシャです。 ベラルーシ生活についてやこれまでの人生について書いていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

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はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間⑦ 8月1日(最終回)

8月1日(火) 運命の日である。これで俺の中でタシケントが終わる。いや、多分これからも続くのだろうが、タシケントを離れれば少しは気も楽になるだろう。長い長い旅の一区切り。 5時前に目が覚めた。寝たのが2時近くだから、強烈に眠い。しかし、時間に遅れるわけにはいかない。眠気を振り払って身支度をする。ラリサ叔母さんとアントンが見送ってくれるのは知っていたが、アレーシアも空港に行くと言い出した。それはとてもうれしかった。 いつものようにお茶を飲むのだが、今日はなんか雰囲気が違う

    • はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間⑥ 7月31日

      7月31日(月) 明日、タシケントを出る。朝8時15分の飛行機で。もう腹は決まっている。迷いはない。昨日あった一つの出来事も作用しているのだが、それを書く元気は今のところない。 今日は忙しい。まず、彼女の家に送ってもらった荷物を取りにいかなければならない。1ヶ月前に両親が送ったものだ。宛名は彼女のところになっている。とはいっても、彼女のところに荷物があるわけではなく、郵便局に留め置きになっており、その引換証を彼女のところに取りに行くのだ。それ以外にも、彼女の家に置きっぱな

      • はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間⑤ 7月29日

        7月29日(土) 今日はモスクワ行きの飛行機の切符を買わなければならない。昨日の夜、アレーシアが「いっしょに買いに行こう」と言い出したので、彼女のテニスの練習が終わる2時ぐらいまで家でごろごろすることに。 昨日のこともあってラリサ叔母さんとは話したくない。ひとこと言ってやろうかと思ったが、我慢した。酒を飲んで騒ぐのは自由。それは俺には関係のないこと。でも、アレーシアのことを考えると・・・。俺は許せない。ラリサ叔母さんは母親だ。一人で生きているんじゃない。一人で生きているん

        • はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間④ 7月28日

          7月28日(金) 今日こそはなんとかパスポートを手に入れなければならない。12時に電話をする約束になっていたが、電話では埒があかない。直接行ってみることにした。 12時ちょっと前に行くと、そこにフサンの姿はなく、そこにいたのは秘書のおばちゃんだけだった。パスポートはまだないと言う。預けてある機関に電話をしたのだが、責任者がいないから3時に来い、と言われたのだそうだ。仕方がない。 そして、ビザのお金は払えないことを告げた。その理由は、飛行機の切符が高いということ。高いのは

        はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間⑦ 8月1日(最終回)

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          はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間③ 7月27日

          7月27日(木) 出きるだけ早くパスポートが欲しいところだが、今日は手に入れることが出来ない。その前にやるべきことをやってしまおう。問題は山積みである。 まず、税関申告書の件。タシケントの空港についたときに、あるウズベク人の家族に税関手続きなどを手伝ってもらった。外国人は税関申告書を二枚記入しなければならない。1枚は入国するときに提出して、もう1枚は出国するときに提出しなければならない。しかし、俺はそのウズベク人にならって1枚しか記入しなかったのだ。彼らはウズベキスタンの

          はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間③ 7月27日

          はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間② 7月24日

          7月24日(月) 最近、よく夢を見る。親が出て来たり、日本の風景が出て来たりという典型的なホームシックの症状だ。あまりにもあからさまである。これではフロイトも分析のし甲斐がないだろう。ホームシックの夢ならまだいいが、今日の明け方は彼女の夢だった。そんなにいい内容ではなかったが、やはり恋しくなってくる。目覚めの気分は最悪。胸が苦しい。落語に出てくる若旦那もきっとこんな恋煩いをするのだろう。俺がタシケントに残ればきっとまだチャンスがあるはず、なんていう甘い期待まで湧き出してきた

          はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間② 7月24日

          はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間① 7月23日

          7月23日(日) 今日は日曜日。昨日、ここの娘のアレーシアと町に出かける約束をした。朝からわくわくしている。アレーシアは15歳。ちょっとしたデート気分だ。少しでも気持ちを盛り上げないと落ち込んじゃうからねえ。最近、彼女のことを思い出す時間が増えてきている。ここタシケントにいるかぎりこの苦しみは続くような気がする。出きる限り早くタシケントを脱出して新しい生活をはじめたい。今日はそのことを忘れよう。まあ、デートとはいっても相手はまだまだ子供。出発前、ずっと「トムとジェリー」のビデ

          はぐれミーシャ純情派 タシケントな時間① 7月23日

          はぐれミーシャ純情派 黒い水②

          それがある日、突然、「明日の昼、1時にうちまで来て欲しいね」とグーリャのほうから言ってきた。やっと会える。グーリャがこっちに来るのはわかるが、彼女のうちまで来いというお願いにはかなり驚いた。俺は出入禁止になっているはずなのだ。ラリサ叔母さんはそのことを聞いて、自分のことのように喜んでくれた。 俺は今、ラリサ叔母さんのところに住んでいるわけだが、戻れるものなら彼女のところに戻りたい。彼女の家族が許してくれるわけがないと思っていたのだが、もしかしたら、許してくれるのかな。 次

          はぐれミーシャ純情派 黒い水②

          はぐれミーシャ純情派 黒い水①

          うちへ帰ると、そこにはグーリャとアーニャが待ち構えていた。彼女はいつものように「どうも」と言って、にっこり笑った。でも、俺はそれに答えることが出来ない。何と対応していいかわからない。それにずっとフサンと外を歩いていたせいで、またも日射病になっていたのだ。俺は適当に返事をして、転げ込むように自分の部屋に行き、ベッドへと倒れこんでいった。実際、立っていられなかった。何を言っていいのかわからない俺にとっては、ある意味、好都合でもあったのだが。 グーリャはすぐにおれの部屋に入ってき

          はぐれミーシャ純情派 黒い水①

          はぐれミーシャ純情派 タシケント激闘編③ 2000年7月7日、8日

          7月7日 とりあえず大学に行くことにする。11時ごろ大学に着いて、引越しのことを告げる。みなとても嫌そうな顔をしていた。彼らが言うには、外国人は登録(レギストラーツィア)をしなければならない、その場所以外に住んでいることがばれた場合、本人と大学側が罰金を払わなければならず、下手をすれば逮捕され日本に強制送還されるのだそうだ。大学側は二つの案を出してきた。しばらく我慢して寮に住むか、昼は借りた部屋で過ごし夜だけ寮に泊まるか。二つ目の案に同意した。当然、守る気などさらさらない。

          はぐれミーシャ純情派 タシケント激闘編③ 2000年7月7日、8日

          はぐれミーシャ純情派 タシケント激闘編② 2000年7月6日

          7月6日 7時ぐらいに目が覚めた。夢を三本立てで見てしまったので、よく寝れなかった。もう一度寝ようと思うが、それも出来ない。とにかくここを出たいという気持ちでいっぱい。ベッドのなかで今日の計画を立て、8時半には部屋を出る。計画といっても、俺はタシケントで一人ぼっち。手も足も出ない。これが東京だったら、頼る人間がいっぱいいる。もし非常事態になれば山形に帰ることもできるのだ。でも、いま俺がいるのはタシケント。 今日、住むところを見つけなければ、他に行くところは・・・ない。 彼女

          はぐれミーシャ純情派 タシケント激闘編② 2000年7月6日

          はぐれミーシャ純情派 タシケント激闘編① 2000年7月5日

          7月5日(書いているのは7月7日)  今日、ついに彼女の家を飛び出してしまった。もう愛されていないことを知っていながら彼女のそばにいることは苦痛以外の何物でもない。そのことが明らかになってから3日ほど耐えた。その間、どんどん溝は深まっていった。関係を修復したいと思いながらも、彼女が求めているような「ぼく」であることは出来なかった。愛が壊れたときに笑っていられるやつがいるか? 別れた彼女が友達になるなんてことが本当にあり得るのだろうか? ぼくにはできない。そんなことを言うとよく

          はぐれミーシャ純情派 タシケント激闘編① 2000年7月5日

          はぐれミーシャ純情派 第十三話 僕たちの約束の場所

          2000年6月25日の朝、僕はタシケントに向けて旅立った。 グーリャと出会ったのは1月4日のこと。 知り合って半年ちょっとしか経っていないのに、僕はすでにタシケントへ向かっている。 我ながら早いと思うが、それまでもロシア語圏で日本語を教えようと思っていたわけだし。 たまたま予定が早まっただけで、たまたま行き先がウズベキスタンになっただけのこと。 この旅立ちが人生の重要なターニングポイントになることなど微塵も感じない。 むしろグーリャとの生活、見知らぬウズベキスタンの文化のこ

          はぐれミーシャ純情派 第十三話 僕たちの約束の場所

          はぐれミーシャ純情派 第十二話 愛で自転車が曲げられますか?

          グーリャがタシケントへ行ってしまった今、僕がするべきことはただ一つ。 一刻も早くタシケントへ行くことだ。 そのためにしなければならないことは山ほどあるはずなのだが、グーリャのところへ行くためなら、僕は何でもしよう、何にでもなろう。 空港から戻った僕は、早速手紙を書き始めた。 タシケントではインターネットを使うこともままならない。 タシケントではグーリャは家族がみんな帰ってくるまで叔母さんのうちに住むことになっている。 当然、そこにインターネットはない。 手紙と電話しか、彼女

          はぐれミーシャ純情派 第十二話 愛で自転車が曲げられますか?

          はぐれミーシャ純情派 第十一話 束の間の別れ

          グーリャが日本を離れる日まで2週間を切った。 僕たちを待っているのは一ヵ月半の別れ。 遠距離かどうかなんて関係ない。 会えないのなら、遠くても近くても同じことだ。 「心が一つなら・・・」などという綺麗事を言う余裕は僕たちには全くなかった。 心も体も一つになっても、まだ何かが足りない。 その「何か」がないことが、僕たちを不安にさせた。 ある日、うちの母親が「東京へ行く」と言い出した。 「ウズベキスタンでお世話になるんだから、一度会ってご挨拶しないといけないだろう」というもっと

          はぐれミーシャ純情派 第十一話 束の間の別れ

          はぐれミーシャ純情派 第十話 桜の花びらが舞う頃

          グーリャはもうすぐタシケントに帰ってしまう。 僕が彼女の元へ行くのは、その一ヵ月半後だ。 僕たちに残された時間は少なかった。 いずれまた一緒になるということがわかっているのに切ない。 僕たちはその「束の間の別れ」を恐れていた。 そして、そのことをできるだけ口に出さないようにしていた。 時間は止まらないものなのだということを改めて思い知った。 4月の終わり、僕たちは箱根に行った。 新宿からロマンスカーであっという間。 箱根の駅を出ると、少し肌寒かった。 僕たちは特に目的があ

          はぐれミーシャ純情派 第十話 桜の花びらが舞う頃