先出) '95 till Infinity 077
90年代西オーストラリア州パースを舞台とする3人の少年の物語第4章・"The World is Yours"の先出有料マガジン内の記事です。
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↓ 以下、"'95 till Infinity 077"です。
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【 第4章: The World is Yours 009 】
体の気が済むまで吐いた俺は口から垂れる胃液混じりの唾液を拳で切り、体を起こす。
アスファルトの小粒が転がる荒れた駐車場に痙攣の度に押し付けられた肘と膝に感じる鈍い痛み。たった今まで吐いていた場所の横でフェンスに背中を預けて座り、そのままそこで吐き気が収まるのをじっと待つ。
「おい、ニィちゃん、大丈夫かよ?」
知らない誰かに肩を叩かれて目を覚ます。
いつの間に寝てしまっていたみたいだ。
どれくらい寝てしまったのか?
俺は首を上げて目の前にしゃがんだ声の主を見る。
目の焦点は合っていないし、この照明も届かない駐車場の端でその姿は見えないが、アクセントと声の質からこの声の持ち主がアボリジニだということは間違いない。
俺ははっと思い出す。
俺の友達や知り合いのアボリジニに関する様々な話を。
トーニはスケボーでスッ転んだのをバカにされて言い返した一言でセイント・ジョージス・テラスのバスセンターの側からハイゲートまで追い掛け回された。
もちろん、トーニのことだから言わなくていいようなことを言ってしまったのだろうけど、トーニの話では追いかけるアボリジニの集団が口笛で合図をする度に脇道からどんどんその数は増えていき、最終的には15人ほどにタコ殴りにされた。トーニは2、3週間は外に出ることもできなかった。
ブレーカーのケインはそれこそこの先の路地でアボリジニのガキに煙草をせびられ、気前よくバッグの外側のポケットから煙草を出したはいいが、煙草の箱を出す時にポケットから落ちた50ドル札を奪われた。
落ちた金を拾おうと屈んだ瞬間に顔面に蹴りが飛んできたそうだ。
その晩カイロの家であったケインは腫れ上がった顔に氷の入ったビニール袋を当てたまんま喋りもしなかった。
どう見てもアボリジニにしか見えないタイ人のガイは「アボリジニのくせして白人とつるんでんじゃねぇ!」と言われ、すれ違いざまにいきなりぶん殴られた。
別に全てのアボリジニが悪い奴らだと言う訳じゃないが、俺の周りにはそういった話があまりにも多すぎた。
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