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先出) '95 till Infinity 082

90年代西オーストラリア州パースを舞台とする3人の少年の物語、" '95 till Infinity " 第5章・"Buried in the Closet"の先出有料マガジン内の記事です。

マガジンをご購入頂ければ読めますが、第4章の全エピソードの無料投稿が終わり、第5章の無料投稿が始まる段階で、無料開放されます。

↓ 以下、"'95 till Infinity 082"です。


⇒ 小説全体の目次は こちら

【 第5章: Buried in the Closet 003 】

隣の家の外灯から薄く射す光の中、ニコールの深い栗色の髪は淡い光沢を持って光っている。俺はその髪を上から下へゆっくりと撫でる、何回も何回もゆっくりと。

怒っていたのは間違いないニコールの体から諦めたように力が抜け、体の前で堅く閉じていた腕がそっと俺の体を包む。

しばらくの間俺はただそこに立ち、腕の中に感じるニコールの存在にただただ感謝する。ニコールの髪を掻きあげて、そこに見える形のいい耳にそっと唇をつけ、「ごめん」と謝る。

右手でドアを開け、その隙間にニコールが滑り込む。居間の灯りに照らされた玄関先には半分に折れたジェシーのプラスティックの特撮ヒーローものの忍者ソードだかビームブレードだかが転がっている。

なんでそんなものが玄関にあるのか俺にはわからないが、少なくとも自分が明日それを買いに行かないといけないことはわかっている。

俺はソファーに腰を下ろし、重力に任せて横に倒れる。

キッチンからは冷蔵庫を明ける音、氷がからんからんと音を立ててグラスに入れられる。続いて蛇口が捻られて、気づいた時にはニコールが氷水のグラスを持って横に立っている。

渡されたグラスを一息で飲み干す。
テーブルに置いたグラスが音を立てる。

それを見届けたニコールが、「どうしたの、何かあったの?」と俺に聞く。

俺はただ首を振って、「何も」と答えるが、何もなかった訳がないことを知っているニコールはソファーの肘掛に腰掛けたまま俺をまっすぐにじっと見ている。

ニコールの視線から逃げるように左脇のカーペットに目を逸らした俺が、「いや、仕事でいろいろあってさ」と言うと、それを聞いたニコールは肩をすくめ、まっすぐに伸びていた首の軸が微妙に歪み、軽く鼻で笑うと何も言わずにゆっくりと立ち上がる。

テーブルに伸びたニコールの細い腕が空のグラスを持ち上げて、ニコールは何も言わずにキッチンへ消えていく。

noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。