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先出) '95 till Infinity 076

90年代西オーストラリア州パースを舞台とする3人の少年の物語第4章・"The World is Yours"の先出有料マガジン内の記事です。

マガジンをご購入頂ければ、読めますが、第4章の先出しが終わり、第5章の先出有料投稿が始まったところで、この記事は無料開放されます。

↓ 以下、"'95 till Infinity 076"です。


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【 第4章: The World is Yours 008 】

導かれるようにふらふらと一番近くの店まで歩いき、マルボロの赤を買い、釣りを貰い店を出て2、3歩歩き、セロハンを剥がし、銀紙を破る。

煙草を1本引き抜き口にくわえ、ズボンの左のケツのポケットからライターを出し、そして、俺は気づく。何年も前に煙草を止めた俺がライターなんか持っていないことを。

煙草を吸うのにライターがいることすら俺は気づきもしなかった。

自分で自分を鼻で笑い、出てきたばかりの店に戻り、ライターを買い、また一人歩きだす。しばらく歩いたところでおもむろにくわえた煙草に火をつけてゆっくりと深く煙を吸い込む。

煙を吐き出し終わる前に襲ってくる強烈な眩暈、きちんと立つことすら困難なほどの立ちくらみに俺は足を止める。

だから言ったんだ、煙草なんて吸うもんじゃない。
こんなモンが体に良い訳がない。

足の裏全体で大地を受け止めて、体全体でバランスを取りながら俺は歩く。

立ちくらみがマシになったと思ったら、今度は胸焼けが強烈な吐き気に変わりやがった。そう思った瞬間、胃が内容物を押し上げる。俺は歯を食いしばり我慢しようとするが、堅く閉じたはずの唇からゲロが飛び出す。

飛び出したゲロが赤茶色のレンガに飛び散る。

それを見た向かいから歩いてきた老カップルはあからさまに顔をそむけ、歩道の反対側へと斜めに進む。

俺はよたよたと走り出す。
50mも走れば左側に駐車場があるはずだ。

俺はそこへ走り、膝をついて思う存分に吐く。いくら吐いても吐いても吐き気は収まらない。永遠と思い続ける時間俺は吐き続け、それに慣れ、その苦しみの中でも余裕ができた頃に、酒を飲みだしてすぐの自分を思い出す。

自分が飲める量を知らなかった俺はこうしてよく吐いていた。そして、毎回吐く度に俺は苦しみながら祈っていた。神様、二度と酒なんか飲まないから、どうか、どうか俺を助けて下さい。

それでも、俺は3日もすると信じてもいない神様に懇願していたことなんかすっかり忘れて、バカみたいに飲んではアホみたいに吐いていた。

酔っ払って吐くのなんて何年ぶりだろう。

noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。