'95 till Infinity 012
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【 第1章: 2nd Summer of Love of Our Own 004 】
ひとしきり笑った俺たちは何事もなかったかのように滑り出す。
そこからは無言のスケートタイム。
頭の中に描いた最高の絵に自分を少しでも近づけて、それを実現するために集中し、自分が持つイメージに可能な限り忠実に体を動かし、コンマ数秒の中で板の的確な部分を蹴ろうとする。
その瞬間の俺たちは学校のどんなテストの時よりも集中していて、時間はスケボー雑誌の連射写真のようにコマ送りで進む。
そして、その一コマ一コマが自分の頭の中の連射写真と重なった時、世界のありとあらゆる物事があるべきところに収まったような感覚を得る。
外に飛び出していった板を取ってきたトーニは水が滴る板を一回ブンと振り、一個一個のウィールをシャーっと回してベアリングの中の水を切り、ジーンズの太腿で軽く板を拭く。
しばらくスケボーの上に座って煙草を吸っていたトーニは俺を呼び、パーカーの前のポケットから半折りになった黒い紙を俺に渡す。
その大げさに近未来的なデザインがされた葉書大の紙には聞いたこともないDJの名前の羅列、15ドルという値段と、どこかのコミュニティーホールの名前と地図が載っていた。
ざっと目を通した俺にトーニはスケボーに座ったまま、
「それどう思う?」
と聞いてきた。
「どうって、これ、レイブかなんかのフライヤーだろ。いきなりこんなの持ってきて、どうしたんだよ?」
「いやさ、ここに来る途中でバスターミナルから歩いてくる時にすっげーかわいいコに声掛けられてもらったんだけどさ、どう思う?ちょっと行ってみようよ。」
「はぁ?これってお前、これテクノとかそういうやつだろ?なんで俺たちがそんなの行かないといけないんだよ?大体俺たちはテクノとか聴かないだろ。あんなの人間の聴く音楽じゃねぇよ。
バン、バン、バン、バンって歌詞もなければなんもない、あんなのは機材さえあれば誰でもできるただのマシーンミュージックだぜ。それにこれ、15ドルって書いてるぜ。そんな金をドブに捨てるような真似できねぇよ」
と、俺が答えるとトーニは下を向き、何かを考えながら煙草を2、3回空ぶかしして、最後の一服を深く吸い込んで続ける。
noteも含めた"アウトプット"に生きる本や音楽、DVD等に使います。海外移住時に銀行とケンカして使える日本の口座がないんで、次回帰国時に口座開設 or 使ってない口座を復活するまで貯めに貯めてAmazonで買わせてもらいます。