'95 till Infinity 155
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【 第9章 : Unfolded Nothing-④ 】
ごめんね、ごめんね、つらい時にこんな話してごめんね。自分のことしか考えてなくてごめんね。エマは何度もそう俺に謝った。
俺は何も答えずに、ただエマの温もりを、誰かの温もりを感じていた。
なぁ、カイロ、俺はエマと寝たんだ。
出しぬけにそう言った俺の言葉にカイロは驚きもしない。
カイロは軽く頷いただけで、前を向いたまま、深く煙草を吸う。ゆっくりと煙を吐き出すカイロの姿を眺めながら、その吐き終わったところでカイロの口から出る次の言葉を俺はじっと待っている。
その言葉を俺はずっと待っていた。
あの日から俺はずっと待っていた。
それが怒りの言葉であれ、蔑みの言葉であれ、俺はその審判の言葉をずっと待っていた。カイロがエマの死について考えていたように、俺もこの10年間そのことを考えていた。
ただそこに違いがあるとすれば、カイロはそのことをずっと考え、苦しんでいたのに俺は忘れている時間の方が長かった。
汚い野郎だ。俺を騙すなんて思いもしないような人間から奪い、親友を裏切った。それなのに自分だけは幸せな家庭を築こうとしている。
「そんなことはとっくに知ってたよ」
そう言ったカイロは灰皿に置いた煙草に手を伸ばし、煙草をゆっくりと吹かす。細くて長い煙を吐き出して、こう続ける。
「そんなことは俺はとっくの昔に知ってたよ。ねぇ、俺はさっきエマがヘロ中になってからの話をしたよね?俺たちがお互いを傷つけあってたってさ。
その話はエマからその時に聞いてたよ。自分の親友と寝てたなんて相手を傷つけるには最高のネタだと思わない?俺はその話を本当に何度も何度も何度も聞いたよ。」
何でもないことのようにカイロは言うが、それが何でもないことの訳がない。
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