連帯保証からは逃げられない……。でもこんな手があります。 その6 「訴訟と督促、司法への恨み」

 前回の記事をお読みになっていただいた通り、こうして調停が不成立に終わったことで、話し合いによる解決の目はほとんどなくなりました。息子は相変わらずLINEも電話もブロックしたままで、私からの連絡を受け付けない状態です。
 さて、次の手をどうするか。

 法テラスで教わったことを実行に移すとすれば、次は当然「訴訟」、つまり相手を訴えることになるわけです。
 ですが、さんざん不義理を働くどうしようもない相手であっても、仮にも息子。実の親子が裁判所で争うとは、なんとも情けない限りです。暗澹たる気持ちで、地元の簡易裁判所に相談に行ったのでした。

 相談といいましたが、管轄であるH簡易裁判所の対応は、それは酷いものでした。
 簡易裁判所の職員というのは、民事裁判に必要な書類を提示したり、それぞれの裁判について説明する仕事なのですが、あくまでそれは表面的なことだけ。こちらが訊きたい具体的なこと、例えばこういったケースではどう書いたらいいかといったアドバイスなどは一切してくれません。ただ制度や形式を伝えるのみです。こちらは素人で、どう書いていいかもわからないのに。
 まぁそのために司法書士という存在があるのでしょう。これについても一悶着あったのですが、それは後ほど。

「それは裁判長が判断することですので」
「こちらからそれについては言えません」
「よろしいですか? 先へ進めます」
 乱暴に言うと、この無限ループでした。

 大げさかもしれませんが、このH簡易裁判所に行って、私は司法関係者に対し一生残るほどの不信感を覚えました。公明正大であるべき法の番人が、弱い者に対してこれほど不親切であるとは……。

 それでもなんとか食い下がって得られた情報は、
・調停で埒があかなかった場合の訴訟には、通常のものと少額訴訟の二つがあること。
・訴訟の他に、相手に支払いを促す「支払督促」という制度があること。
 この二点です。

 身内相手の訴訟にためらいを感じていた私にとって、支払督促という制度は福音に思えました。裁判所が相手に「支払いなさい」と公的書類を通達するのは、かなり有効な手段に思えたのです。

●司法書士会の役割って?

 というわけで、息子の住んでいる地域のF簡易裁判所宛に、支払督促の申立書を送ることにしました。
 当然のようにH簡易裁判所では書き方を教えてくれなかったので、ネットで検索したテンプレートの文言を元に、自分なりに書いた申立書をF簡易裁判所の事務官宛に送ると、後日、同封したハガキで返事が来ました。一言で言うと、申立書の体をなしていなかったそうです。
「司法書士に依頼することを強く勧めます」

 そこで司法書士に依頼した場合の料金をネットで調べたのですが……。
 請求する金額よりも遥かに高いのです。これでは全く意味がありません。

 悩んだ挙句、東京司法書士会というところに相談に乗ってもらおうと電話したのですが、ここの対応がまた酷いものでした。

「支払い督促の書き方を教えてもらいたいんですが、時間単位でレクチャーする有料プランなどはありませんか」
「こちらでは書き方については一切教えられません」

 まぁ、木で鼻を括ったようなH簡易裁判所職員の対応を見ていたので、この答えは半ば想定済みでした。

「では、そういった分野が得意な司法書士さんを教えてもらえませんか」
「そういったことは、こちらではわかりません」

え? じゃああなたたちはなにがわかるの?

「ちなみに、そういった依頼の料金って、いくらくらいなんでしょう」
「料金が自由化されましたので、人によります」
「相場というものがあると思うんですが」
「それも人によりますので」

 だんだんこちらの沸点も上昇してきました。人を馬鹿にするのもいい加減にせぇよ。

「だったらあなたたちは、この相談ダイヤルに電話してきた人たちに、いったいなにを教えてるんですか?」
「お近くの司法書士の連絡先をお伝えしています」

 耳を疑いました。

「そんなもの、スマホに検索項目を入力したら、いくらでもネットで調べられるじゃないですか」
「そういったことが苦手な方もいらっしゃいますので」

 少しも悪びれず言ってのける電話の相手に、私は呆れ果てました。
 つまり東京司法書士会の電話相談窓口とは、情報弱者にとっての電話帳なのだそうです。

 絶句していると、「よろしいですか?」と訊かれ、それに答える間もなく、ガチャンと電話は一方的に切られました。
 スマホの画面を見つめながら、いま電話で話した人は、こういったわかりませんできませんと答えてガチャ切りすることで、月に何十万円かの給料をもらってるんだろうなぁ、と思いました。

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