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悪瞬間。

前の席に座っている人から順番に降車する。

なにか駆け引きをするかのようにいつ降りようかと

身を乗り出して良きタイミングを探ってる。

周りには自分の異変に気づいていそうな人はいなかった。

ごく普通、いやちょっと特別な、テストの日って感じ。

後部座席から立ち上がり小さな段差を少し気にしながら前進してくるT。

Tよりも少し前か後か、どちらかは憶えていないが

良きタイミングだと思い少し勢いをつけて立ち上がった。

大きな鞄と部活用の着替えが入った袋を持ち財布の中から

百均のパスケースに入った6万円の定期券を取り出した。

学校の近くに住む人達はバスカードや現金、ICカードの人もいた。

血色の悪い顔はあまり運転手には見せないように定期券を見せた。

入学当初は定期券を自慢げに運転手に見せ、あたかも自分が

貴族にでもなったかのような気分になることもあった。

実際は親が三ヶ月6万円という大金を叩いて購入したものだが。

それに気づくと「はぁ〜。」と原因不明の溜め息が出そうになる。

それから本当にチラッと見せるだけで運転手は期限を確認できているか

心配、というよりかは怠けていないか気になって、

しっかりとお金を払っているのにも関わらず疑われるのが嫌だし、

まだ疑われてもいないけど(一度も疑われることはなかった)

なぜか悔しかったから降車直前まで腕を伸ばししっかりと

期限内であることをアピールする癖がついた。

駅の改札で引っかからないようにするみたいな感じで。

後ろの人からしたら少し迷惑だったのかもしれない。ゴメンね。


ようやく外に出た。

どこのバス停のシェルターもそこそこに汚い。

ポールには爪か何かで引っ掻いて書いた落書き、屋根には苔。

所々に穴が空いていたりする。

駅に着いたときと同じようにTが僕に話しかけてきた。

多分ここで体調が悪いことを言ったと思う。

何も起きなかった。

別の方向から電車通学をしてきた二つ上の先輩の姿が見えた。

いつもなら「適当に挨拶しよ。」くらいの気持ちだが、

あの日は、今にも嘔吐しそうなときに吐き気を催しそうなものを

見たみたいに、最悪のタイミングに出くわした感があった。

また冷や汗が一滴垂れた。



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18歳。いつか19歳になります。 noteに自分の体験談や考えをほぼ毎日書いてます。何か反応をもらえると嬉しいです。 【twitter】https://twitter.com/qSWaNGop
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