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ゆめみのデザイナー組織について

株式会社ゆめみに入社してから丸3年が経過し、4年目に突入しました。

個人的に、現在進行形で、これまでの取り組みを振り返り、次の道筋を描こうとしています。今回は、ゆめみのデザイナー組織の変遷について少し整理していきたいと思います。

ゆめみの仕組み

ゆめみは、上司がいない組織です。所属するメンバーそれぞれが、上司であり、マネージャーであり、BOSSです。プロリクという仕組みを駆使して、個人の経費精算から全社的な組織変更に至るまで、さまざまな意思決定をする権限が、一人一人のメンバーに委譲されています(最近は、「JIKKEN」や「えいや」という新たなパターンも誕生しています)。

一方で、「組織は完全にフラットなのか?」と問われるとそんなことはありません。目的、業務範囲、役割は、それぞれのグループやチームごとに規定され、親子関係、または、上下関係の階層構造を持つことも想定されています。

ゆめみ全体の動きを把握していれば、適切なスペースに、現在不足していると感じる役割や組織を新たに定義し、作り出し、推進することができます。逆に消すことも可能です。例えば、デザインのグループにおいて「リサーチ力」が足りないとなれば、「デザインリサーチ」のチームを立ち上げることもできますし、デザインのグループ全体の方針を定める組織・人材が足りないとなれば、「Chief Designer Officer、CDO」または「CDO室」を設定することもできます。

このような組織の仕組みは、非常に柔軟性が高く、所属するメンバーの組織への帰属意識・課題意識などが高ければ、現状が整っていないことに嘆き、憤慨するだけで留まるのではなく、自らが解決に向けた道筋を描き、実行ことを可能にします。

では、ゆめみのデザイナー組織は現在どのような形をしているのでしょうか?

ゆめみのデザイナー組織の今

ゆめみのデザイナー組織(2022、現在)
ゆめみのデザイナー組織(2022、現在)

ゆめみでは、各職種チームの集まりを「ギルド」と呼びます。ギルドは、ざっくり捉えると一つの自主経営組織です。案件獲得、案件稼働調整、組織マネジメント、採用活動などさまざまな活動を担います。

デザインギルドは、大きく3つのチーム群から構成されています。

CDO室

CDO室は、経営チームの方針をもとに、デザインブランドを向上させるべくデザインギルドの戦略策定を行い、魅力的なナラティブと巧みな仕掛け・仕組みをもって、デザインギルド全体を導くことをスコープ・役割として期待されています。また、デザインギルド全体における課題を抽出し、経営チームにエスカレーションしたり、知見を取りまとめ、組織的な知識としていく役割も担います。比較的最近立ち上がったチームで、これからCDOとデザイン担当取締役を中心に活動されていく予定です。

職能チーム

職能チームは、名前の通り基本的には、メンバーごとの専門分野を中心に構成されるチームで、クライアントプロジェクトを担当します。デザインギルドだけのメンバーだけで担当するプロジェクトもあれば、大規模なシステムの企画、設計、開発、リリースまでを行うためにPM、アーキテクト、エンジニアとプロジェクトチームを組織し、推進するプロジェクトもあります。クライアントワークという事業を展開しているゆめみにとって最も基本的で、重要な活動です。

いくつもの職能チームがありますが、図に記載しているチームごとでプロジェクトを受けるわけではありません。プロジェクトに必要なメンバーは、それぞれのチーム・メンバーの稼働状況に合わせて、調整されます。例えば、既存アプリのデザインを改善する(ただし、実装はスコープ外)ようなプロジェクトがあった場合、いずれかのサービスデザインチームから1名、職能混合チームから1名、UIデザイナーチームから1名、+営業メンバーという形でプロジェクトチームを作ります。

また、ゆめみのチームは、1チームあたりの人数上限である7名となったり、メンバー間の担いたい領域・成長したい領域が異なったりした場合に、チームを分割することが必要があります。これはつまり、職能チームは、ゆめみのデザイナー組織が大きくなるにつれて、より多くのチームができるということです。

委員会チーム

委員会とは、端的にいうと通常の組織であれば、「マネージャー」という肩書きを持つメンバーが担う責務を、全員で分担して取り組むための仕組みです。クライアントプロジェクト全体に適応される業務の標準、メンバーのスキル開発のための勉強会企画・運営、ツール開発、コンテンツ作成、組織をより大きく洗練させていくための採用、受入、育成と幅広くカバーします。

委員会活動に関しては、デザインギルド全体を「プロダクト」または「サービス」と見立て、バックログのチケットを基本とした活動を行っています。それぞれのメンバーの得意・不得意・モチベーションに合わせた役割設定を行い、「みんなで無理なく優れたデザイナー集団へ進化する」というコンセプトのもと、継続的な改善・運用を実現しています。

過去の紆余曲折

ここまで、あたかも先ほど紹介した状態が常に維持され、運用されてきたような説明をしてきましたが、実はそんなことはなく、さまざまな試行錯誤や四苦八苦がありました。

2019年

ゆめみのデザイナー組織(2019)
ゆめみのデザイナー組織(2019)

2019年は、私がゆめみに入社した年でした。デザイナー組織は、まだ規模も小さく15名程度の規模だったと思います。職能チームは、3つだけでした。また、当時はゆめみ全体として前述したようなマネジメント業務の役割を分担することを目的とした「委員会」は、存在しませんでした。

一方で、有志で特定のテーマを研究することを目的とした現在とは異なる「委員会」は存在し、当時は「Creative Design Committee」というチームでの活動がありました。

図の中には記載していませんが、他にも「リベラルアーツラボ」という、VUCA時代に必要となる「教養」をアップデートすることを目的とした研究チームも発足していました。


2020年

ゆめみのデザイナー組織(2020)
ゆめみのデザイナー組織(2020)

厳密には、2019年だった記憶がありますが、いずれかのタイミングで、初期に所属したUXデザインのチームが、人数上限の7名になってしまい、分割する必要がありました。

当時はまだ、サービスデザインの「サ」の字がようやく社内に定着し始めた頃だったことと、ゆめみのデザインのケーパビリティを拡張することを目的として、新たにサービスデザインのチームを立ち上げました。クライアントに対しても、社内に対しても「サービスデザインとは何か?」「なぜ取り組むべきなのか?」の説明をしながら、その存在と意味を普及しようと奮闘していました。

同様に、UIデザインのチームが人数上限を迎えていました。チーム分割を議論する中で、一旦これまでのチームの枠組みは維持しつつ、その内部にさらに細分化したチームを作るという意思決定が行われました。加えて、そのチームと前述したCreative Design Committeeに所属していたメンバーが被っていたこともあり、クリエイティブなデザインを追求するという研究テーマを取り扱う一方で、少しずついわゆるマネジメントに近い事項の検討もなされるような状態になっていました。

また、有志の委員会活動として「ゆめみ塾」というチームを立ち上げていました。当時の私は、デザイン思考の系譜を理解することに力を注いでいる中で(ちなみにパート3まで書こうとしてお蔵入りしています)、「Design Methods Movement」とというデザインプロセスの再現性を追求した活動を知ることとなり、それを模した活動を社内で実施したいと考えていた中でのアクションだったと思います。

やっていたこととしては、社内における「〇〇さんはこれが得意」を特定し、インタビューをする中で、その特技のエッセンスを抽出してから、社内に普及させようというものでした。また、当時は社内でも勉強会が今ほど活発に行われている状況でもなかったため、社内勉強会の活性化にも寄与できればと思い動いていました。

2021年

ゆめみのデザイナー組織(2021)
ゆめみのデザイナー組織(2021)

2021年は、激動の1年でした。

まず、1年以上継続して運営していたゆめみ塾を解散するという意思決定を行いました。細かいものを探せば、たくさん書けると思いますが、一番大きな理由はとある制度・施策によって社内の勉強会開催に必要なハードルが一気に下がるとともに、開催・参加意欲を高められてしまったことにありました。

その制度・施策とは「ぱくぱくスタディ制度」と「ザツダン会」です。

ぱくぱくスタディ制度とは、勉強会を開催すると、参加者に税別1500円まで飲食の補助がつくという制度で、これまで積極的に勉強会を開催していたメンバーはもちろん、これまで消極的だったメンバーに対しても、モチベーションを高める起爆剤となりました。

さらに、ザツダン会は、「雑な登壇」を意味し、「勉強会というものは膨大な準備をした上で、万全の状態で開催しなければならない」というこれまでのある意味での固定観念をことごとく打ち崩しました。

デザイナーとして提供する「場」とコンテンツの「質」に着目した上で、勉強会促進と知識の共有を目指していたゆめみ塾とは180度以上異なるアプローチで、一気に存在意義を失ってしまう体験をすることになりました。もちろんゆめみ塾の活動を通じて、蓄積したこれまでのコンテンツや情報は、ことあるごとに深い理解と知識を身につけようとする際には登場します。一方で、普及させたり、促進したりするためのアプローチとしては、全く効果的ではなかったという学びを得ました。

次に「Experience Design Committee」という今のデザインギルドの委員会の前身となるチームを立ち上げました。2021年は、ゆめみ全体でそれぞれのギルドごとにマネジメント体制・仕組みを確立するという方針が打ち立てられていたため、それに沿う形での立ち上げでした。このチームには、特にサービスデザイナーを中心とした委員会チームとして活動をしていました。もともと異なる立ち上がりの背景を持つUIデザイナーを中心としたCreative Design Committeeとは一旦別のチームにしつつ、デザインギルドのマネジメントに一番の重きを置いた運営を行いました。

専門職能別の運営を行う中で、採用やプロセス、スキルの標準化などいくつかの領域で横断して検討しなければならないことが多々発生し始めていました。加えて、分散マネジメントの経験値や知識も一定溜まってきたこともあり、30〜40人規模でも運用できるという確信が持てる段階にきていました。そこで、より効果的で、効率的で、所属するメンバー一人一人の満足度が高まるような形の体制に変更していくために、2022年の年明けから、一つの委員会組織として活動するというプロリクを出し、現在の委員会体制へと再編をすることとなりました。


2022年、上期

ゆめみのデザイナー組織(2022、上期)

そして、2022年も年があけいよいよ新しい委員会体制での運用がスタートしました。特に1〜3月は、試運用という形で、運用方法の細かいガイドラインの整備やこれまで分かれて対応していたバックログのチケットを一つに統合を行い、メンバーに説明をし、協力を仰ぎました。

ゆめみの委員会標準
ゆめみの委員会標準

ゆめみには委員会標準があり、特に所属するメンバーが担うべき役割は、(詳しくは忘れたが)神話の登場人物のアーキタイプに倣って定義されています。この標準は、各ギルドごとで個別に上書きすることができます(フロントエンドのギルドは、かなりこだわった命名をしていた気がします)。デザインギルドでは、こちらの標準にほぼほぼ忠実に基づいて各メンバーに役割を選んでもらっています。メンバーによって得意・不得意・モチベーションもあるため、「やりたい役割」と「絶対にやりたくない役割」を選んでもらうようにしています。そうすることで、お互いに取り組みやすいチケット、依頼・相談すべき相手をわかりやすくしています。また、チケットを片付けるごとに役割を変更することができるため、個人の課題意識や成長具合によって、さまざまな領域にチャレンジできるような形になっています。

この委員会再編は、想像以上にうまくいきました。基盤となる委員会組織の仕組みを定義したことで、取り組むべきチケットへとメンバーの意識が向かい、溜まっていたバックログのアイテムは、このnoteを書いている2022年8月現在では、70%程度解決済みであり、着手中も含めると約85%になります。多くの取り組みは、現在基本的には細かい改善・運用段階へと移行しています。

新卒デザイナーの採用に関しても、より戦略的かつ効率的に取り組む中で、選考体験の質を上げつつも、一人一人のメンバーの負担を下げるような形に仕上がりつつあります。

また、正しくは計測できていませんが、デザイン関連の勉強会の種類・頻度ともに上昇しています。ざっくり観測では、1ヶ月あたり4件(週1回程度)だったものが、8〜12件程度(週2〜3回程度)にはなっていると思います。

さらに、職能チームの数も増えています。21卒のデザイナーメンバーが、UIデザインチームから飛び出し「幅広い職能が溶け合う場」として新しいチームを設立したことを皮切りに、UIデザインチームもうまく分裂し、他にもいくつかの特徴を持つチームが立ち上がりました。23卒から新卒で採用しているデザイナーの数も一気に増えてくるため、おそらくチームは今後も多様化することが見込まれています。現在私自身が所属しているシニア・サービスデザイナーとしたチームも、組織が大きくなることも踏まえて次の必要なアクションをすることになると思います。


今後の展望

デザインギルドの2022、1Q振り返り
デザインギルドの2022、1Q振り返り
再掲:ゆめみのデザイナー組織(2022、現在)
再掲:ゆめみのデザイナー組織(2022、現在)

下地は整い、いろんなものごとが進み始めました。振り返りを実施した中で、そのことを実感しているメンバーも多くいました。一方で、「全体が見えない」「新しい課題ができていない」「意味を見出せていない」などの声も見えてきました。

前提として、自らが所属する組織、または、コミュニティをより良いものにしていくべきという意識がゆめみのメンバーにはあると思います。一方で「何のためにやっているのか?」「どこを目指しているのか?」は、また別の問いだと感じます。そこが見えなければ、意味や次の課題を見つけることも難しいと感じています。

CDO室が立ち上がり、上記の部分を担っていくと思います。目指すべき方向を決めることは、組織としての天井(Leadership ceiling)を示す行為です。そして、それを実現するためにメンバーからの共感を獲得することが求められます。組織が大きくなるにつれて、有機的なコミュニケーションだけで成立していた部分にも、事前に規定されたガイドラインが必要になってきます。

この人間らしい柔らかさと人工物が持つ硬さのバランスに優れたアプローチが、ゆめみのデザイナー組織を強くし、面白い唯一無二なコミュニティにしていくと考えています。1人のメンバーとしてどのような関わり方ができるか模索していきたいと思います。


基本的に今後も記事は無料で公開していきます。今後もデザインに関する様々な書籍やその他の参考文献を購入したいと考えておりますので、もしもご支援いただける方がいらっしゃいましたら有り難く思います🙋‍♂️