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テクノロジーとデータでSHEが挑む、レガシーなキャリア観の再定義

キャリアパスという言い方に代表されるように、キャリアは直線であり、順を追って進むものだという考えは、世の中に広く蔓延している。しかしながら、キャリアが直線だというのは嘘である。少なくとも、僕自身のキャリアは全く直線的なものではなかったからだ。
最初のキャリアは居酒屋のホールスタッフだった。職場の雰囲気は素晴らしかったけど、正直全くバリューが出せていなかった。1年働いたけれど、お客さんから自分が何を期待されているのか、スタッフがどのように連携していて今自分が何をするべきなのか、最後まで理解することができなかった。
次はメディアのライターだった。エキスパートへの取材内容を、読者に向けてわかりやすく構成し直す仕事でそれなりに楽しかったが、自分が理解したものをどこの誰かも知らない読者に再度説明することにあまり興味がもてなかったし、句読点や日本語の正しさにもあまり意味を見出せなかった。
転機があったのはこの時である。たまたま隣の席にエンジニアチームがいて、年下の僕にいろいろ親切にしてくれていた。真っ黒なターミナルに打ち出す文字列が、動くサービスとなっていく過程に、知識がないながらも魅了された。そして、数日経たない内にこう打診したのである。『エンジニアになりたいです』
僕自身のキャリアはこのように始まった。こんなキャリアを送ってきたからか、キャリアが直線的なものだとは僕にはどうしても思えない。キャリアとは、もっと自由でカオスなものであるはずなのだ。選択とスキル習得とOJTのカオスの中から、徐々に立ち上がってくるものだと思うのだ。
そして僕たちSHE株式会社は、"学ぶ"と"働く"が循環するキャリアプラットフォームとして、学ぶと働くをシームレスに繋ぎ、まさにこのカオスからキャリアが形成されていく過程を、再現性高く多くの人たちに提供する仕組みをつくろうとしている。

学びと働くの融合による真のキャリア支援を

我々は"学ぶ"と"働く"が循環するキャリアプラットフォームという立ち位置で事業を展開している。これまで断絶していた"学ぶ"と"働く"の両方を一つのサービスとして提供し、スキルの習得からお仕事を通したアウトプットまで、SHEのサービス上で一気通貫で行うことができるようにするのだ。

キャリアプラットフォームのイメージ図

聞こえは良いけどリスクのある意思決定である。toCとtoBそれぞれの組織・オペレーションが必要になり煩雑だし、サービス領域も増え、選択と集中が難しくなるからだ。それでも我々はキャリアのダイナミズムを捉えるために、"学ぶ"・"働く"の両方を提供することが必要だと信じている。学ぶことと働くことは一方通行ではない。不可分に入り混じるなかで、真に自分らしいキャリアの方向性が見えてくるのである。
そして、SHEのプロダクトのミッションは、データとテクノロジーを通してキャリアが立ち上がるプロセスを再現性ある形で社会実装していくことなのだ。

キャリアにおけるテクノロジー活用余地

再現性を確立するために、プロダクト・テクノロジーが解くべき課題はどこにあるだろうか。学習する会員さんとお仕事を提供する法人さん側それぞれに課題があると考えている。

会員側 — リスキリングの民主化

会員に対する課題は、一言で言えばスキルの再習得を伴うジョブチェンジ、すなわちリスキリングを民主化していくことである。大きなジョブチェンジを伴うキャリアのアップデートは、これまで清水の舞台から飛び降りるような強い覚悟と意思によるドラマとして語られることが多かった。しかしそれは従来の画一的なオペレーションでは、適切にサポートできなかったという話であり、本質的にはもっと簡単にできるはずなのである。テクノロジーによって、そのような体験の構成要素を再編し、スケーラブルな形で万人に提供していく必要がある。

課題① — 適切な選択肢が可視化されていない
一つ目の課題は、選択肢が可視化されていないことである。
キャリアにおける選択肢は、これまで学習者本人の意思や指向性というより、オペレーションによって決定されてきた。本来取り得る選択肢は、一人一人違うはずなのだ。例えばコミュニケーションが得意で時間が使えるかたであれば、学ぶのをすっ飛ばしてアシスタントとして働く方がずっと早く習得が可能であることもある。テクノロジーによって個人の経歴と価値観を深く理解し、一人一人に適切な選択肢を改めて評価し提示していくことが、プロダクトとしての一つのミッションである。
キャリアとは自ら切り開くものであると、僕たちは強く信じている。キャリアについての意思決定は『デザインコースを受講する』といった小さなものから、『フリーランスデザイナーとして独立する』といった大きなものまで、会員であるシーメイトさん自身の手で下される必要がある。テクノロジーによって、誰もがワクワクする選択を通してキャリアを切り開ける仕組みを構築して行く必要がある。

課題② — 選択をやりきることが難しい
二つ目の課題は、選択をしてもそれをやり切ることが非常に難しいということだ。多くの人が仕事や育児との両立をしながらキャリアへの投資を行っている中で、楽しいときも苦しい時も、毎日椅子に座り続けながら、選択した目標をやりきっていくことはとても難しい。誰もが変化を起こし続けられる世界を作るためには、個人に行動を委ねるのではなく、より再現性の高い仕組みを模索していくことが必要だ。
コミュニティによる伴走に我々は勝機を見ている。個人としては心が折れてしまう時でも、適切な人と人との繋がりがあれば人は頑張り続けることができることを、我々は理解している。課題はタイミングとマッチングである。テクノロジーを通して、適切なタイミングで、適切な人をつなげることで、誰もが自分の選択を挫折せずにやり遂げられる仕組みを構築していく。

法人側 — 未経験者の受け入れ体制整備

法人側の注力課題は、受け入れ体制の整備である。
我々の会員は、基本的に学習者であり、キャリアの過渡期にいる。これまでの意味での信用を持たない彼らを、どのように法人が安心して受け入れられる仕組みを作っていくか。ここにプロダクトとしての可能性がある。

課題① — 学習者に対する信用判断ができない
中でも中心的な課題が信用判断である。キャリアの過渡期にある人たちを法人の人たちとマッチングするためには、その人がその企業で成功することを我々が自信を持って言い切ることができなくてはならない。キャリアの初期にある人たちを、どのように実践の場であるお仕事の機会をつなげていくか。これが最大のチャレンジである。
従来の信用モデルはワークしない。我々として、新しい信用のモデルを定義していく必要がある。重要なのは、これまでのロールベースの信用定義ではなく、スキル単位で精緻に信用を見積もって行くこと。信用をロールからunbundleしていくことである。
例えば、デザインを3ヶ月勉強している人がいたとしよう。デザイン単体のキャリアではお仕事を得ることは難しいかもしれない。しかし、例えばマーケティングの経歴が強い方であれば、マーケを軸に徐々にデザイン領域へシフトしていくという登り方があるかもしれない。また時間に余裕がありコミュニケーションが苦にならない方であれば、アシスタントとして現場にまず入ってもらうようなOJTがワークするかもしれない。
これまで情報化が難しかっただけで、信用とはもっと多様でダイナミックなものなのだ。プラットフォームとして、我々は経歴・学習データ・コミュニケーションタイプなどを総合的な情報からスキルを評価し、できるだけキャリアの初期からお仕事を通してキャリアを開いていける仕組みを構築していく。

開発組織のこれまで

さて、上記の課題を解消するために、開発組織としてやってきたことをまとめる。

主要な体験の整備 – 学習・ポートフォリオ・お仕事
これまでの開発チームの歴史は、構想のために必要なことを全力で実現していく過程であったと言える。検証段階にあるものも含めて、構想に必要なものをとにかく実装し、フィードバックを得て、改善を回して行く。SHElikes Multicreator Course Designer,  SHEbeauty, SHEmoneyと半年で3つの新規サービスをリリースしたことに始まり、とにかくハードな開発ロードマップをこなし続けてきた。そんな歴史であった。
その甲斐もあり、キャリアプラットフォームとして、学習からお仕事まで、SHEのサービス上に主要な顧客体験の要素が一通り揃ったところまで来ている。提供するコースも全32コース105レッスンを数え、会員さん一人一人のキャリアを支援できるカバレッジが充実してきている。まだまだ荒削りなところも多いが、一人一人のキャリアの変化に伴走できる体験が少しずつ整ってきたように感じている。

一人一人の個性や価値観を尊重しつつ、試行錯誤を経て、キャリアを切り開き生き方を変えていくところまで伴走する。多様性と経済性の両立ができるプラットフォームの輪郭が見えている。

圧倒的なリーンさの追求 – マイクロサービスとGraphQLへの投資
さて、ハードな開発ロードマップの追求は、技術基盤への投資にもつながった。短期的なスピード重視した開発スタイルでは、中長期の成長は見込めないという思いから、早期にマイクロサービス化を決意。開発スピード力向上のためのGraphQLへの投資と合わせて、無駄のないリーンな開発スタイルを追求してきた。
そのおかげで、実戦に裏打ちされた洗練された技術選定が行えていると自負している。特にGraphQLでは、モダンなプラクティスを他社に先んじて取り入れられているという自負がある。
TypeScript + Prismaを用いたバックエンド開発であり、Fragment Colocation + Storybook + Chromaticを利用したDesign Opsへの投資であったり、最近ではGraphQL Gateway / Schema Merging等のサービス横断での連携にも力を入れていたりもする。



データ基盤への投資 – dbt / Fivetran / Lookerによるモダンなデータ構築

また、キャリアプラットフォームとしての競争優位性がデータにあるという信念は創業当初から持ち、データ基盤への投資を進めてきた。キャリアの再現性を見出す鍵はデータにあるのである。データは、開発者だけでなく、運営スタッフも含めてオープンにアクセスできるものでなければならない。
そんな思いもあり、初期からBIツールにLookerを採用するなど、データ基盤への投資を惜しまなかった。よりスケーラブルなデータ基盤を目指して、上期にdbt + Fivetranを利用したパイプラインへの移行を実施。データの出自を含めて、誰もがアクセス可能なデータ基盤の構築を実現した。
BIツールのWAUは75%を超え、文字通り誰もが、データを日々の意思決定で利用している環境が構築できている。

開発組織のこれから

さてこれから我々は、学ぶ"と"働く"が循環するキャリアプラットフォームの実現に向けて、これまで以上に本格的にアクセルを踏んでいく。

組織の圧倒的スケーリング

まず、エンジニア採用を加速する。4月末までにエンジニアの正社員数を2倍に、1年で3-5倍まで組織を増加する予定だ。これまでの少数精鋭での爆速開発開発を維持しつつ、より大きな構想を実現できる体制へ、組織として大きく舵取りをしていく。

未来を描くDiscovery機能の強化 ー CPO採用

次に、プロダクトの理想像を描く機能を強化する。CPOを迎え、これまでの必要な機能を整える開発から、構想を実現するための理想の体験を、意思を持って作って行く、より強いプロダクト組織への転換を図って行く。

作りたいのは最強のエンジニアリング組織

上記を通して作りたいのは、月並みだが最強のエンジニアリング組織である。学ぶ"と"働く"が循環するキャリアプラットフォームを作るという構想は我々だけのものではないが、実現したところはまだない。
その実現には何よりもまず、エンジニアリングとしての洗練が重要である。これまでの少数精鋭の開発スタイルを踏襲しつつも、より少ないコストで見込みのあるアイディアを評価し、実装し、リリースしていける組織を作るにはどうしたらよいか。全ての構成要素を疑い、改めて今後5年・10年を支えるエンジニアリング組織の基盤をこの1年で整え切りたい。

最後に

駆け足になってしまったが、SHEのエンジニアリングは今改めて転換点を迎えている。正社員5名の少数精鋭組織から、この1年でどういう変化を遂げるのか、今からワクワクしている。
正解は誰もわかっていない。エンジニアリングとしての理想を強く持ち、泥臭く試行錯誤を重ねていける人、ぜひ僕たちと一緒にSHEの未来のエンジニアリングの形を定義していって欲しい。
あなたの想いが刻まれた数十年続く組織を、今作っていこう。そしてそれを通して、キャリアのこれまでのあり方を変えるようなプロダクトが生まれたら最高じゃないだろうか。

おまけ

11月には、Mirrativさん、LayerXさん、SHEの3社でプロダクトに関するイベントを開催する。SHEのプロダクト開発の軌跡と展望を、踏み込んで話す予定なので、是非是非参加してほしい。

代表福田のnoteは是非読んでみてほしい。ビジョンや構想についての解像度が上がるはずだ。

そして11月20日(日)、東京日本橋でSHE初となる、日本最大級の女性リーダーサミット「INNOVATIVE WOMEN’S SUMMIT」を開催する。基調講演には小嶋陽菜さんや弘中綾香さんにご登壇していただく予定だ。この日しか味わえない豪華ゲストとの濃密な時間をぜひ楽しんで欲しい。

またこのサミットを共創する協賛パートナーを募集しているほか、法人チケットプランも用意している。興味ある方は下記フォームから問い合わせて欲しい。


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