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クリプトスペルズはどのように収益を出しているのか?

前回の記事ではクリプトスペルズのカード取引がどのくらいの数、金額で行われているかを分析しましたが、今回の記事ではクリプトスペルズの収益モデル、つまり運営がどの様に収益を得ているかについてまとめたいと思います。

収益を得るポイント

現在運営が収益を得るポイントは2つあります。ゲーム内通貨(SPL)の売り上げ、そしてOpenSeaでの取引手数料です。それぞれについて分析したいと思います。

【分析条件】
・SPL購入時の送信先アドレスを抽出(10/23 ~ 11/2)
・OpenSea上で行われたクリプトスペルズのNFTの取引を抽出(10/23 ~ 11/2)

ゲーム内通貨売り上げ

ゲーム内で使用されるSPLの売り上げが運営の主な収益になっています。ユーザーはこのSPLを使ってより強いカードを購入してゲームを行います。

下図は10/23から11/2までのSPLの売上を日付ごとに表したものです。また、10/29に売上が多いのはカードセールの開始日だったためと考えられます。
この期間で173のユーザーから合計51.0Ethの売り上げがあり、売り上げは日平均4.6Eth、1ユーザーあたりのSPL購入平均は0.3Ethです。

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OpenSeaでの取引手数料

以前はOpenSeaでの取引手数料はOpenSeaの運営に支払う2.5%の手数料のみでしたが、クリスぺPrimeの導入に伴って、OpenSeaへ2.5%、クリプトスペルズ運営に7.5%の手数料を支払う規約に変更されました。

下図はOpenSeaで行われた取引の運営に入る手数料(7.5%)を日付ごとに表したものです。10/22にクリスぺPrimeが導入されたため、10/23からのデータを取得しました。この期間での手数料の合計は4.0Eth、日平均は0.36Ethでした。

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下図は10/23~11/3におけるゲーム内通貨の売り上げと、OpenSeaの手数料による売り上げ比率です。ゲーム内通貨の売り上げが、総売上(55.0eth)の約93%を占めており、クリプトスペルズの収益のほとんどはゲーム内通貨の売り上げによるものだということが分かりました。

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SPLの取得方法

ユーザーは購入以外にも下記4つの方法でSPLを取得することができます。
1. カードの売却
2. リファラル報酬
3. デイリーボーナス(クリスぺprime加入者のみ)
4. カード発行権NFTによる発行者の収益

1つ目はカードの売却です。ゲーム内マーケットで手持ちのカードを他のユーザーに売却することでSPLを取得できます。また、デッキには同じカードは2枚までしかセットできないため、発行枚数が無限のブロンズカードに関しては余剰分を一括で売却することができます(売却レートは変動相場制で最低保証価格は0.1SPL)。

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2つめはリファラル報酬です。あるユーザーから招待コードを受け取ってクリプトスペルズに登録すると、招待コードを受け取ったユーザーがSPLを購入する度に購入SPLの10%が招待コードを送ったユーザーに付与されます。

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3つ目はデイリーボーナスです。クリスぺprime加入者は1日1回35SPLを受け取ることができます(100人に1人は100SPL)。

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最後はカード発行権NFTにより作成したカードによる収益です。カード発行権を手に入れたユーザーは運営と共にオリジナルカードを作成することができます。このカードが取引された場合、その取引金額の50%分のSPLが半永久的にカード発行権を行使したユーザーに付与されます。

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上記画像は全てクリプトスペルズ公式HPより引用しました。

SPLの消費

ユーザーは基本的にカードの購入時(※)とクリスぺprimeの月額利用料(1000SPL)支払い時にSPLを消費します。また、直接支払う訳ではありませんが、カード売却時にも手数料として売却金額の10%(クリスぺprimeの会員であれば5%)を支払います。
※カードの購入はカードセールで運営からの直接カード購入、もしくはマーケットで他のユーザーからの購入を含みます。

まとめ

クリプトスペルズの収益源は
・ゲーム内通貨(SPL)の購入
・OpenSeaの取引手数料(7.5%)

であり、集計期間内の売り上げの93%はゲーム内通貨の購入によるもので、収益のほとんどがゲーム内通貨の購入であることが分かりました。ただし今後、二次流通マーケットが盛り上がると、OpenSeaでの取引手数料による収益が増える可能性はあります。

ユーザーは入手したゲーム内通貨を
・ゲーム内でのカードの取引(購入)
・クリスぺprimeの月額会費

によって消費します。

カード売却時の手数料やクリスぺprimeの月額利用料自体はSPLでやりとりが行われるため直接の売り上げにはなりませんが、SPLの消費を促し、SPL不足のユーザーが再び課金する導線になっています。さらにここで消費されたSPLはバーンされ、市場に再度出回ることがないのでSPLの供給過多による価値の目減り(インフレ)を抑える効果があります。また、ブロンズカードの売却時のカード単価に変動相場制を導入することでもSPLのインフレをある程度コントロールしています。

一方で、ゲームプレイのハードルを下げるために、ユーザー側にSPLを手に入れる方法を複数用意し、無課金のライトユーザーでも楽しめる様に設計されています。ユーザーが増えることでゲーム全体が活発になり、時間を節約してゲームを楽しみたい課金ユーザーが増え、結果的にSPLの利用も頻繁に行われ、収益に繋がります。

同様な形態でできるだけ多くのユーザーへ浸透するための施策として、プレイするハードルを下げ、どんどんユーザーを獲得していくゲームが生まれると考えられるため、これからもブロックチェーンゲーム業界の動向には注目が必要です。


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