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ディレクションしてみて分かった、デザイン思考に必要な個人・組織のスキルセット

そもそもデザイン思考とは

デザイン思考の5つのプロセス
世界的デザインコンサル会社、IDEOのCEOであるティム・ブラウン氏が提唱した手法であり、
デザイナーが業務で使う思考プロセスを活用し、解決策を生み出す方法を体系化したものです。
変化し続けるユーザーのニーズを発見し、前例のない問題の解決策を導き出すことに長けています。

Google、Apple等の大企業や海外のイケてるスタートアップはデザイン思考をいち早く取り入れ、様々なソリューションを世に生み出していますが、
日本国内の状況を見ると、Panasonicやトヨタなど一部企業やスタートアップ等で動きが見られるものの普及しているとは言い難い状況です。
(ここまで前置き)

私は、デザイン思考を取り入れて様々な企業・プロダクトオーナーを伴走支援する事業でUI/UXデザイナーをしています。
メイン領域はUIなのですが、一昨年くらいから徐々にUX方面にスキルをのばし、昨年はじめてUXディレクターとしてクライアントワークに関わってみた結果、様々な気づきを得られたので記録代わりにつらつら書いていきます。

1_デザイン思考は万能ではない・やりきった感に騙されてはいけない

一番重要なのはアイディエーションの質

どんな手法でもそうですが、デザイン思考は万能ではありません。

意思決定プロセスをチームで体験するので合意形成しやすい上に、ワークショップでやりきった感出てしまうので誤魔化されてしまうのですが、デザイン思考のプロセスを踏めば必ずとびきり画期的な価値創造ができる訳では無いです。

デザイン思考で良いソリューションを産むには、ユーザーへの共感や深層の課題抽出は重要であり、その後の結果を大きく左右しますが、
1番重要なのは結局アイディエーションの質です。(※持論です)
リサーチによって集めた点を、時には思いもよらない場所から運んできた点と結ぶような大胆な発想が出来なければ・あるいは良いアイデアを生み出そうと真剣に自分ごと化して悩み抜かなければ、
結局ありきたりで凡庸なソリューションしか生まれないのです。(前提として、リサーチを疎かにするとアイディエーションの種すら生まれないのですが…)

良いアイデアを生み出すために必要なこと

様々な業界に長いアンテナを張り
どんな技術がトレンドなのか、
どんな社会課題があるのか、
今後の政策はどうなって行くのか、
など幅広く情報収集し、ある程度未来のことまで想像できる力が必要になります。デザインシンキングで画期的なソリューションを生み出すには好奇心旺盛なマインドセット・大胆な発想・価値創造への情熱が不可欠です。

2_デザイン思考は仮説の検証で効果を発揮しやすい

個人的には、デザイン思考は新たなソリューションアイデアを生み出す部分よりも、すでにあるソリューションアイデア(仮説)の検証の方がハードルが低く、効果が発揮しやすいと考えています。
ソリューションの種があるなら、本当にニーズがあるのかをインタビューやプロトタイプで検証すれば事業計画のブラッシュアップができますし、ごく小さい機能を市場投入してユーザーの観察をすれば、結果が悪くてもやり直しがきくので損失は少なく済み、失敗によって原因箇所を特定できたりもします。

そもそもデザイン思考のプロセスに「プロトタイプ」「テスト」があるのは、「失敗を前提としているから」です。
どんなプロダクトでも、市場に出さなければ成功か失敗かは分かりません。
プロダクトの確度を高くし、失敗から学ぶプロセスが体系化されたデザイン思考は、全てのビジネスマン必修スキルと言えるでしょう。

3_何よりチームが大事

デザイン思考はチームの信頼関係がないとうまく行かない

先程「好奇心と大胆な発想と情熱が必要」といいましたが、それを育てるのがチームだと思っています。

例えば、ミスがあれば追求される・業務連絡以外をしない等、信頼関係の築けていないチームで下位者が目立った発言をするのはリスクです。
自分の仕事をミスがないように、言われた通りにこなす事に神経を使ってしまいます。
アイデアやディスカッションが重要なデザイン思考において、人は対等である必要があるのです。役職はただの役割だと思っておいた方が良いです。

チームのグッドコミュニケーションを産む方法

一見良い雰囲気のチームに見えても各々が抱える課題感は把握できてない事はよくあります。
私はそれで失敗してから、定期的にmiroでKPTを使った振り返りを行うようにしています。課題に感じていることを発言する機会を作り、解決策を全員で検討することで問題の先送りを防げます。

また、ディスカッションの手法は様々で、8upなどは経験上結構盛り上がります。是非色々試してチームでのコミュニケーション円滑化に取り組んでください。

miroを使ったKPTの例

自分のチームに問題を感じたら、チームの5つの機能不全モデルを見るようにしています。自分のチームがいまどの状況か振り返り(もしくはメンバーに直接聞いて)改善を試みることができます。

チームの5つの機能不全

4_組織のあり方や開発体制もセットで考える必要がある

BTCトライアングルで様々な知見を取り入れる

デザイナーだけではマーケットの調査や事業ロードマップの立案は容易ではありません。BTCトライアングルと言う言葉がありますが、デザイン思考でもまさにBusiness、Technology、Creativeの横断チームが必要です。

縦割りの組織だとBTCの連携がスムーズに行かない場合が多いので、そういった部分の是正も必要となります。
(組織間でいがみ合うのはもうやめよう)

ウォーターフォール型の開発と相性が悪い

また、デザイン思考は失敗を前提としているので、アジャイル開発との相性がよく、ウォーターフォールとは相性が悪いです。
ウォーターフォールでは大量のドキュメントを作って丁寧な要件定義を行いますが、更新されずに打ち捨てられてることありませんか?

アジャイルでは要件定義の代わりにユーザーストーリーを書きます。
誰が、何のために、どのような事をするのかをユーザーニーズに沿って表すものですが、これと画面機能一覧があればデザイナーは着手できます。

要件定義で延々と承認会開くより、動くプロトタイプ作って見せた方が早いです。(※持論です)
現物があるので問題点もイメージしやすく、改善もスムーズ。しかもターゲットユーザーに試しに触ってもらうこともできます。
figmaやXDを使えばCSSの閲覧やコンポーネント管理も楽々ですし、ブラウザでプレビューも可能です。
(私はfigma派。アプデでオートレイアウトがさらに便利になった。)

デザイン思考を取り入れるならぜひ、アジャイルと一緒に導入してください!

5_とはいえデザイン思考を組織で浸透させるのは至難の技

いきなり声高にデザイン思考を叫んでも「めんどくさい事言い始めたな」と思われるパターンあるあるだと思います。
また、推進者がソリューション検討の場にいない部外者であるパターンもあります。

この場合はいきなり上流からデザイン思考組み込もうとせず、比較的短期で結果を出しやすい「テスト」フェーズから着手し、じわじわと有用性を分かってもらうのが良いでしょう。

既存のプロダクトのユーザビリティテストを実施し、ユーザーが困るところを洗い出し、改善を提案するのです。そして徐々に信頼を勝ち得て自分の守備範囲を広げ、偉い人に言いましょう。

「これがデザイン思考です」と!!!

▼参考図書

さいごに

先輩方から「何当たり前のこと言ってんだ」とか「こいつ全然わかってねーな」とか怒られる気がしますが、今の会社に知識ゼロで入社してから、2年間上流のUXに関わり獲得してきた知見の中で、今強く発信したいのがこれまでの話でした。

※今後たくさんの人とディスカッションしていく中で、意見は変わるかもしれません。

界隈の若手へのエール

私が遅いだけかもですが、ディレクションを経験することでようやくデザイン思考が分かってきたような気がします。一つ一つのプロセスの意味目的を深く理解する意味でも全体を設計する経験は必要です。
また、デザイン思考は意思決定や合意形成の連続です。ディレクションをやることでそのセンスが磨かれていきます。
若手の人は臆せずどんどんディレクションやりましょう。

余談ですが、初めてソリューション提案のディレクションをした際、お客様にアウトプットを好評いただき、追加で巨額の開発や別案件の受注もいただくことができました。(やったー!)
こんな喜びを味わえるのも実践あってのことです。

今は大幅に増員したチームで開発のためのデザインディレクションを行っていますが、コンセプトから開発まで携われるのはとても光栄なことです。
成功したのは個性豊かなチームメンバーのおかげであり、たくさん助けられたので、やっぱりチームの関係性は大事だなぁと思います。

fin.

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