パルコブックセンター

あたらしい渋谷パルコに書店がない問題?

あたらしい渋谷パルコに、私はインビテーションが来たので20日の水曜日、プレオープンに行ってきた。すんげぇ、ヤバい、ビックリ。

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そしたら22日土曜になって、「渋谷パルコに本屋がない」というツイートを目にして、へーそうなんだ。以前の渋谷パルコ地下一階にあったパルコブックセンターは、そんなに愛着持たれてたんだと、なんか意外だった。

ツイートを追いかけてみると、あそこで本を買ってたという人は皆無で、リコメンドが好きだった。時間つぶしするのが好きだった。みたいな内容しか見つけられず、なんか書店を作らなくて正解だわという気になってくる。

実は私も行った翌日木曜日、インスタやFacebookに投稿したテキストの最後は「新しい渋谷の街には、本屋はありません😭」と書いている。Instagramの投稿

え、ないんだ。象徴的だなと思ってふわっと書いたものの、趣旨はかなり違う。ふわっとじゃない、こういう内容こそnoteじゃないかと思って書くことにしました。


私がPARCOカードを作った理由

インビテーションが来たのは、PARCOカードからです。PARCOカードに入ったのは、2013年のこと。パルコブックセンターで本を何冊か買ってたら、レジの中から、書店員じゃない人から声をかけられた。
「パルコカードに入っていただくと、本も5%オフになります!」と。え、本がですか?

パルコカードの勧誘は店の外でもやってるので、5%オフどうのこうのと言ってるのは知ってましたけど、そんなに買い物することもないし、あまり興味なかったけど、本が安くなるなら話は別だ。

二言三言やりとりして、じゃあ入りますと言ったら、レジの人が「お会計変わりまして〜」とおっしゃる。
え、今から安くなるの!? と驚いちゃって。

詳しくいうと発行から1年間は5%オフ。さらに年間に10万円以上買うと、翌年も5%オフになる。年間10万なんて、本代だけで楽勝だわと。そして好きだったパルコブックセンターで、ますます集中して買うことになる。

もちろんかつての渋谷パルコが閉店される、2016年の夏までは。

工事中アキラ雪

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パルコブックスの本

私は社会人になってからずっと、月に二万円以上は本代に使ってる。
いやウソだ。最近はそうでもない。毎週3冊ほど読んでたのが、今は月に4冊程度に激減した。そうね、ちょうど渋谷パルコの閉店ぐらいから、どんどん量が少なくなっていった。

深夜に仕事関連の本を買うなら、六本木の青山ブックセンターに行ったりしたけど、今はもうない。遅い時間に、帰りの電車で何か欲しいな、ぐらいなら、渋谷ストリームに挟まれたビルの1階にあった書店(店名忘れた!)に行ってたけど、今はセブンイレブンになってる。電子書籍は、資料的なものしか買わない。

以前から家で本を読むのは、もっぱら寝ながら。ただ、あっという間に寝てしまう。眠れなくなるから、小説は年々読まなくなってきた。分厚い本を好んで買う方だけど、外でしか読まないから荷物の多いときには持ち歩かない。しかも分厚い本は、水増しされたものが多くなってる気がする。


あたらしい渋谷パルコは縦積みされたテーマパーク

閉店後、PARCOカードはまったく使っていません。本を買うのが激減したから、だけではなくパルコ以外でPARCOカードを使う動機がありません。それでも解約しなかったのは、建て替えられたら使い始めるだろうな。とりあえず年会費もないし、そのままにしておいていいんじゃない。ぐらいの気分です。

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パルコの建て替え中、骨格が出来上がりつつあるのを見て、なんか最近の渋谷にありがちな、容積率めいっぱいな四角い建物だなぁ、ついにパルコもかと思っていました。

ところが一階のフェンスが外されると、かなりセットバックされたのが見えたのです。公園通り側は、もう広場の趣。スペイン坂からの流れは真ん中に取り込んでる。これはもう渋谷駅周辺とは異なる、あたらしい渋谷の街のハブになるんじゃないのと思っていましたが、それだけじゃなかった。


プレオープンに行ってみて、これは各階とも、数年後の街をイメージしたようなテーマパークだわと思った。テーマパークを集積した街。
1階とか曖昧なフロアもあるけど、共通しているのはエスカレーター周辺の空間は、それなりに見通せる。ところが周囲は急に狭く、行き止まりになっていたり、ぐるっと回されたりと迷路のような路地裏感のある動線になっている。文字にすると大したことなさそうですが、ここまで徹底しているのは今までの商業施設にないはず。

巨大ショッピングセンターなどでも目抜き通りがあって、そこからつながる通路は狭くなっていても、あくまで機能的な動線。渋谷パルコは、どこだよここ? どこから行けばいいんだと迷わせる、それを狙ってるだろと思える動線。無秩序に造られた路地裏、外から見えないアヤシサ、みたいなものが随所にある。

最も分かりやすいのは、地下一階の飲食店街カオスキッチンにある「GALLERY X」。なんで飲食フロアにギャラリーがあるんだよと言いたくなるけど、ジビエと昆虫食の「米とサーカス」から「コンドマニア」「HIPSHOP」の間を通って、奥まったところにGALLERY Xはある。私はフロアマップをふんふんとサラッと見てGALLERY Xに向うと、辿り着かず、一度もどって細かく調べてから再度向った。目立たないように配置された従業員出入り口のような奥まった場所にあった。

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アヤシイというと語弊があるかもしれないけど、あんまり目立った場所にあると誰も入らないだろうよと思える店が、ここにいますよ、路地裏ですけどね、という感じに配置されている。コンドマニアなんて原宿店は、明治通りと表参道の交差点にある。目立っていて宣伝にはなるけど、客は入るの?という感じだ。でもカオスキッチンの路地裏なら、殺到していても不思議じゃない。

館外の通りの取り込みといい、フロア内のゾーニングといい、計画が計画として制御されず、有機的な無秩序さというか、なんと言えばいいんだろう。要するに、わちゃわちゃした賑わいを生み出せそうな予感がする。こんなの仕組んだって、なかなか仕組めない。探す面白さ、見つける楽しさがある。

プレオープン自体、人は多かったけれども、間違いなく室温が上昇してるでしょというぐらいに賑わっていて、明らかに客のテンション上がってたのは6階のCYBERSPACE SHIBUYA。「Nintendo TOKYO」「ポケモンセンター」「CAPCOM STORE」もあるし、確実に売上げを見込めそうな、その手のトップコンテンツを集積してる。Nintendoでは巨大なスクリーンでゲームを体験させてた。私にはほぼ興味ないジャンルだけど、面白そうだ。子供が小さいときなら連れてきて、奥さんに怒られそう。

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そういう熱気から逃れるように、外に出ることもできる。驚くのは10階ROOFTOP PARKからだったか、とにかく上層階から外階段、外通路があり、渋谷パルコの建物をグルッと回りながら、降りてくることができる。

単なる通路ではなく、広い踊り場もある。パルコ劇場の裏側に出て、劇場からの出口にもなっていそうな様子には驚いた。ここから出てきた人は広いスペースにたむろって、余韻にひたりそうだ。以前のパルコ劇場は、終演するとエレベーターも階段も同方向で、ラッシュ時の駅ホームさながらで、うんざりした。あたらしいパルコ劇場は、あちこちに帰る人が分散しそう。

外ではないけれども建物外側の回遊性も確保されている。一階から続く階段で、3階のvisvim横だったか隅入りするドアもある。ここ出入りしていいの? とためらうような造り。

整然と整理された動線と区画なら、どこの再開発でも見ることが出来るが、偶然の出会いが少ない。目的の店に向って行くには効率的だけど、知らなかった店に思わず入って行く確率は、きっと少なそうだ。それがあたらしいパルコでは、出会う確率が高そうに思える。

この動線の多様さはフロア単位でもゲームなどに興味がなかった人も、6階に迷い込んだり、熱気に誘われて誘導されてしまうかもしれない。いやまさに私がそう。スーパーマリオのグッズ、ピクセルアートのクッション?みたいなのには、へーっと思った。パルコで自分が散在してしまったら、ここで子ども向けに何か買って帰る親だっていそうだ。

これが路面店やビルの中にガッチリ区分された店なら、興味がなくて、あらかじめ買う気のないところに入って行くのは難しい。ここではどの店も、かなりオープンになっている。2階 MODE & ARTのラグジュアリーブランドでさえ、かなり開けっぴろげな店舗デザイン。境界に什器を置き、内と外をバシッと壁の区切っているブランドはなかったように思う。


出会いやすい環境を設計に仕込んでいること

スペイン坂や公園通りなど、通りを取り込む外と内との境界のあいまいさ。そして各フロアを行き来する動線の多様さ。まるで隠れるような死角の多さ。もちろん見えない場所ではなく、監視カメラがあるんだろう。

環境デザインと言われがちだけれども、計算された境界のあいまいさ、動線の多様さ、死角多さは現実の街を模しているように思える。再開発されまくっている駅周辺と、道玄坂小路から百軒店・円山町、道玄坂一丁目エリアなどのレトロでヤバそうなエリアのコントラストは、渋谷の大きな魅力でもある。角を曲がって小路に入ったり、あるいは坂を昇りきると景色が一変したりするのは、渋谷ならではだ。

渋谷駅周辺の再開発エリアはキャットストリートを挟んで原宿方面へ、代官山方面へと流れを作ろうとしている。あたらしい渋谷パルコは渋谷駅周辺とは別の、中心になるハブを作った。でもそのパルコの中は中心があいまいで、周縁だらけ。

効率一辺倒に計算したら、きっとこういう建物は設計されない。床効率からしたら、ムダが多過ぎる。そこが面白い。そして楽しくなるように設計されているのは、画期的だし未来的だ。

そのムダを、どこで回収していくか。

あたらしい渋谷パルコは、かつての一等地を、もしかすると駅直結のビルにも劣らない一等地に化けさせた、かもしれない。そうだとすれば売場に、以前よりはるかに高い収益性を持たせないと、商売が成立しないだろう。


アートで顕著な収益への試み

上にも書いているように、私は「GALLERY X」を探してた。AKIRA展を見るために。やっと辿り着いたと思ったら、入口でチケットを拝見しますと声をかけられた。え、チケット!? 無料じゃないんだと思いながら、「チケットはどこで売ってるんですか」とお聞きすると、「PARCO MUSEUM TOKYO」で共通のチケットを売っているとのこと。4階かぁ。

しかし4階に向っている途中で萎えた。というか、なにより時間がなかった。最後にGALLERY Xに行ってから出ようと思ってた。正味パルコにいられるのは1時間半ほどしかないなかで、現実問題として残りは15分ほど。それに最初から、PARCO MUSEUMの展示は見るつもりがなかった。なぜって、建て替え工事中のフェンスアートの再構築。フェンスのは、スペイン坂を上がったところにワンポイントのようにアキラの乗ったバイクが描かれているときから3年間、ずっと見てきた。

それを再構築されたからと言って、有料かぁ。確か1000円だったのでセコい話だけど、以前の渋谷パルコにあったGALLERY Xは、ずっと無料だった。あまり濃い展示はなかったけれども、アンダーワールドのカール・ハイドのインスタレーションが公開されたときには驚いた。これが無料なのかと。本当にハイドのペインティング?と疑ったぐらいだ。

カールハイド

パルコが解体されて、スペイン坂下に単独ギャラリーとして移転されてからのGALLERY Xは有料だったり無料だったり。PARCO MUSEUM TOKYOには何度も入ったけれども、ここはずっと有料。でも私は無料だった。

というのは最初に書いているPARCOカード。年間10万円以上使ったら、パルコブックセンターの割引が翌年も続くだけじゃなく、ピンク色のクラスSに昇格する。すると、少なくとも私が行ったPARCO MUSEUM TOKYOの展示はいつも無料になってた。これは大きい。有料なら、どうかなぁと躊躇するような展示でも、無料ならとりあえず入ってみる確率が高くなる。有料なら蜷川実花さんがイケメン俳優たちを撮った展示に、私のようなおっさんは入らない。

私にとってはパルコブックセンターほか、パルコで買い物をし続ける大きな動機だった。解体後はまったく使ってないので、通常のPARCOカードに切り替えられている。どうなったんだろうと検索してみたら、なんとこの9月に改訂されてた! え!?😳

まあ怒る筋合いじゃない。PARCO MUSEUM TOKYOのような展示が、無料で鑑賞できることの方が不思議だった。ただ私にとってここの展示は、パルコブックセンターと同様に、かけがえのないキュレーションだった。

新生パルコの売りのひとつでもあるアート。自前ギャラリーのほかには、NANZUKAやNADiffといったアートギャラリーを入れている。いやギャラリーとしてと言うよりもギャラリーショップとして入っている。NANZUKAが運営する「2G(ツージー)」の第一弾エキシビションは「ダニエル・アーシャム / 空山基」コラボだった。私はダニエル・アーシャム作品めちゃめちゃ好きなので、最初に向った。

おお、入口狭い。まあね、賃料高いだろうし。入ろうとすると「販売していないものもございますから」と声をかけられた。!??? 
入って行くと、左右にはアパレルやグッズしかない。アートトイは、高い。ギャラリースペースどこなのと進んで行くと、突き当たりを左に曲がったところにあった。おっと狭い。

アーシャム

「Meets by NADiff」もギャラリーショップの壁面が作品展示スペースになっていると言った方がいい。

渋谷にあるNANZUKA、恵比寿にあるNADiffはアートギャラリーだけではないものの、ギャラリーは無料。考えてみれば無料なのが不思議だし、そこがパルコに出てきて高い賃料でショップを成立させるには、広い無料ギャラリーをやってる場合じゃないだろう。

私がどれだけ作品を好きだと思ったところで、ダニエル・アーシャムのためにお金を使ったことは一円もない。アーティストが食べて行くためには作品を売らなきゃいけないけれども、NANZUKAやNADiffでの収益はどうやって確保されてたんだろう。両ギャラリーともに、海外でのスーパーリッチ層への作品販売が主力なんじゃないかと思うけれども、実際のところは知らない。

パルコで売っているのは、もちろん、そんな大型の作品ではない。2Gの構成は、NANZUKAのギャラリースペースはサブのような扱い。入口からズラッとあるのはファッションやアートグッズ、そしてアートトイ。3つ(3社?)が一緒になった併設店らしい。
ベアブリックも数多く売ってるから、これを目指して買いにくる人もいるだろうし、MODE & ARTのフロアだから、いまどきリアルモードの高いファッションを買う人なら、自宅に高価なベアブリックを飾っていてもマッチしそうだ。あるいはNintendo TOKYOの次ぎにここに来て、買って帰る人がいても不思議じゃない。

ともあれ、アーティストの作品はどうか。小作品と言えるものだけど、いったいいくらなの? 作品リストを見ると、値段のところにはシールが貼ってあった。どうも、ASKということらしい(笑)
実際にアーティストの作品がここで売れるかどうかは分からないけれども、売るなら渋谷パルコしかない気がする。NANZUKAやNADiffが扱うアーティストは先鋭的だ。いわゆる現代アートと呼ばれるジャンル。六本木や銀座だと、もっとオーセンティックというかコンサバというか資産的というか…


22日オープニングのテープカットでは、アーティスト集団Chim↑Pomのエリイさんも参加したそうだけど、新生渋谷パルコはなかなか大胆だ。深いかどうか、Chim↑Pomと渋谷パルコは浅からぬ関係があるみたいだ。

道が拓ける

アーティストにとっては、作品が売れることが本筋。ほかは個展を有料にするか関連グッズを販売する、ぐらいしかないけれども、どういうアートかということが問われるし、それによって制限される。考えてみれば音楽アーティストなら、知らないバンドのバンドTがファッションとして売れるという現象があるのに。ユニクロではニューヨーク近代美術館(MoMA)と組んだTシャツやフーディが、数年前から売られている。

今年だと国立新美術館でクリスチャン・ポルタンスキー展、東京オペラシティーアートギャラリーでジュリアン・オピー展を見た。両方とも、グッズ販売に力を入れていていた。アートグッズというよりも、ファンダムアイテムと言った方が良さそうな。もちろん展覧会自体有料だし、このへんの大御所がファンダムで収益増加を志向しているのは驚きだ。

どういう方法がビッグネームではないアーティストやギャラリーのビジネスとして成立するのかはわからないけれども、コンサバティブではないアートが一等地に出ていく。日本では初めての試みなんじゃないだろうか。

そしてその試みは、小さく、周縁で始められている。


レコ屋はあるけれども書店はない

地下一階のディスクユニオンは入ってないから分からないけれども、WAVEにはテンション上がった。スペイン坂上がってきて真っ直ぐの通路にある。小っこいけれども、カッコイイわ。

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キヨスクみたい。いやキヨスクほどの面積はないよ。私が知ってるようなのはないだろうな見ていたら、DEVOが覗いてるし、バッハリボリューションやYMOもあってニヤっとした。だけど考えてみたら、家にはまだアナログのLPレコードはあるけれども、ターンテーブルがないじゃんと(笑)

アメリカでは今年、33年ぶりにアナログレコードがCDセールスを抜くほどの勢いだというけれども、日本ではどうなんだろう。もとよりWAVEが扱うようなジャンルが売れるのか。

それもなんとも分からないけれども、復活したWAVEは小さく小さく始めてる。リスクをできるだけ抑えたんだろうけど、それでも存在感はある。

アートもレコードも、もちろんアパレルもなにもかも、採算が取れなければ撤退するだろう。そんなのどこだって同じだろうし、しょうがないこと。
街自体もそうだ。チェーン展開するような店は原宿や表参道、渋谷で旗艦店を出して、成功すれば地方にも展開する。ダメなら旗艦店でも撤退する。最近このエリアではどうも、2年以上保つのは難しそうだ。

ファッションビルやショッピングセンターなどでも同じ。それでも渋谷パルコはちょっと違うだろうと想像できるのは、路地裏店・周縁店みたいなエリア・区画を作って、小さな試みから始めていること。

ほとんどのアパレルは渋谷パルコ限定商品を出したところで、ベースの商品は他の店舗でも買える。VMDをまったく違えるとか、売り方を変える、ぐらいのことだ(COMME des GARÇONS GIRLは初の単独店だし、もしかすると渋谷パルコにしかない限定アイテムの方が多いかもしれない)。
だからちょっとアパレルは違うけれども、この記事で取り上げているような小さな店は、ほぼ渋谷パルコでしか買えないものだらけだろう。パルコとしても店としても、かなり思い切った挑戦。

共通するのは小さく、今までになかった収益への取り組みをしていることが大きな特徴。類似するケーススタディがないのだから、そこにマーケット自体あるのかどうかも分からないから、リスクを抑えてトライ&エラーしているように思える。


本には何か特別なものがあるのか?

最初に「以前の渋谷パルコ地下一階にあったパルコブックセンターは、そんなに愛着持たれてたんだと、なんか意外だった」と書いたのは、私が行ったときにはいつも、客の大半が雑誌コーナーにいた。書籍はどこの区分も極端に人が少なかった。そしてレジが混み合ってたことは、まずなかった。

これを復活させ、リスクを抑えて小さくトライ&エラーするなら雑誌だけのキオスク方式にする? 駅のキオスクでは立ち読みできないけど、立ち読みだけする人が増えるだけだ。洋書や写真集・画集だけにしても、どうなんだろう。

サブカルチャー本のセレクトショップ化を考えるなら、ヴィレッジバンガードやタワーレコードがあるし。HMV & BOOKSには、かなり独自の編集があるし。
渋谷最大のMARUZEN & ジュンク堂書店は、とにかく数が多いだけ。探せば予期しない出会いはあるけれども、時間がかかりすぎる。独自色とかキュレーションは、ほぼない。手軽に駅近ならTSUTAYAだし、大盛堂もあるし、リアルでは三方から囲まれてる。

リアル店にセレクトやキュレーションを求めるのは、思いがけない出会いがあるから。特定の作家とか、似たような本を手に入れたいなら、Amazonのリコメンドでいいはず。
もはや考えるまでもなく、方法はなさそう。


私は本が好きだ。紙で印刷された本という物体自体が好きだ。紙の質感、装丁。集中して深く読んでいくこと、学んで行くスタイルも好きだ。署名性が、はっきりしているのも好み。文章じゃなければ没入させられない表現だって嫌いじゃない。大昔には時代の流れを変えた書籍もあったし、何十年か前にはカルチャーを牽引した雑誌もあった。

まあ音楽だって、ストリーミングやデータより、パッケージも含めてCDの方が好きだ。データよりフィジカルの方が好みだ。そしてCDよりもアナログの方が好きだけれども、うちにはターンテーブルがない。ターンテーブルを買う気もないし(笑)
音楽は多様な形態で、ルートで流通している。でも書籍や雑誌はどうなんだろう。電子書籍をリアル店舗で売ったところで意味がないし。そうね、誰かのセレクションで、USBメモリで売ったら面白いかもしれないけど(笑)

デジタル化は、コピペを簡単にした。コピペは、ネットの専売特許じゃない。音楽ならサンプリングリミックスと、元ネタがあっての表現というプラスにもなる手法あるけれども、書籍のサンプリングリミックスは元ネタが分からない。デジタルデータじゃなければ、コピペも簡単には見つけられない。書籍でもコピペはどんどん増えている。著者自身のサンプリングリミックスだって、少なくないですよ。もはや。

情報爆発だって、ネットだけのことじゃない。あらゆるコンテンツが競い合って、時間を奪いにくる。本じゃなければ表現できないこと、伝えられない世界はどんどん減っている。代替するものはいくらでもある。
渋谷パルコにパルコブックセンターが復活したとして、何かあたらしい試みができたかどうか。

それに新生パルコに、コンテンツとして本を期待する人は多くても、買いに行く人は少ないと。私にしたところで、5%オフにならないなら、どれだけパルコブックセンターが好きでも、そこでしか買わないなんてことにはならなかったはず。

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