でき太くん三澤のひとりごと その172
◇ 中学受験について
つぎの「ひとりごと」のテーマを何にしようかと考えているとき、「そういえば、しっかりと中学受験について自分の考えを述べていないな」と思いつきました。
そこで今回は、私が中学受験についてどのように考えているのかについて書いてみたいと思います。
首都圏では、「受験をしない」というお子さんが珍しいというほど、中学受験は一般化してきたように思います。
選択肢の少ない地方都市にお住まいのご家庭でも、一度は「中学受験」について考えたことがあるのではないかと思います。
私が、今日までの実践経験をもとに皆さんにアドバイスできることは、中学受験に向いているお子さんと、向いていないお子さんがいるということです。
ここで誤解していただきたくないのは、中学受験に向いていないからといって、能力的に劣っているという意味ではないということです。
まず中学受験を視野に入れる前に、ご自分のお子さんが受験に向いているか、向いていないかを冷静に観察することが必要だと、私は考えています。
中学受験に向いているお子さんは、早熟なお子さんです。
早熟なお子さんは、小学1年生で小学2年生や3年生の内容を負荷なく、楽しみながら自学自習できたりします。
また、言葉の発達も早く、2つ、3つ上のお子さんを言い負かしてしまうほどの会話ができたりします。
中学受験は、このような早熟なお子さんが有利です。
逆に、中学受験に向いていないお子さんというのは、晩熟型のお子さんです。
晩熟型のお子さんの多くは「自分のペース」というものがあり、じっくり時間をかけながら、ゆっくり成長していきます。
小学校のころはあまりパッとしませんが、中学、高校と進学していくにつれ、徐々に頭角をあらわしてきます。
このような晩熟型のお子さんは、中学受験はせずに、高校受験のタイミングか、大学受験で志望校に挑むようにすると良いでしょう。
自分のまわりのお子さんがみんな中学受験するからといって、晩熟型のお子さんが受験をすると、ろくなことはありません。
受験をして入学する中学は、いわゆる「できる子(早熟型の子)」の中の「できる子」が集まるところです。そして多くの中学が「進学率」を向上させることを目標としています。
ですから、授業については公立中学の倍以上の速さで進みます。
開成、灘といった難関校は、中学1年生のうちに3年生までの内容を終えます。他の学校でも、遅くても中学2年生までには、3年生までの内容を終了します。
このことからも、いかに授業進度が速いかが想像できると思います。
このように学校の都合でどんどん進んでいく授業に、「自分のペース」でじっくり取り組む晩熟型タイプのお子さんは対応できません。
晩熟型タイプのお子さんは、「自分のペース」でじっくり取り組めるときには能力を発揮できますが、「自分のペース」を乱されると、とたんに能力が発揮できなくなります。
普段しないようなミスをしたり、冷静に物事を考えられなくなったり、学業不審に陥るケースが少なくありません。
ですから、晩熟型タイプのお子さんは、その子のペースでじっくり学習できるような環境を整えてあげることがとても大切なのです。
私のこれまでの実践経験の中では、晩熟型タイプで中学受験に成功したお子さんもおりましたが、多くのお子さんが進学後には学業不審に陥っています。
授業進度についていくことができず、日々学校の宿題をこなすことだけで精一杯。定期テストでは満足いく点数はとれず、どんどん成績は下がっていきます。
それでも最初のうちは努力するのですが、成績順位もビリから数えたほうが早いような位置にくると、もう努力もしません。
「どうせやっても無理、、、」と、あきらめてしまうのです。
こうなると、残りの中学生活は悲惨です。
毎日わからない授業を聞かされ、テストでは「自分はダメ」ということを見せつけられる。
「セルフイメージ」はどんどん傷ついてきます。
自己肯定感など持つことすらできません。
学生時代に傷ついた「セルフイメージ」を修復するのは、とても大変な作業です。多感な時期の傷は癒すのにとても時間がかかるのです。
良かれと思って挑んだ受験で、その後の人生を左右するような傷を「セルフイメージ」につけてしまうようでは本末転倒です。
このようなことにならないために、日々じっくりお子さんの様子を観察してみてください。
自分のペースでじっくり歩んでいくタイプなのか、それとも早熟なタイプの子なのかを観察してみましょう。
子どもと長い時間を過ごすお母さんであれば、子どもが早熟であるのか、晩熟であるのかはしっかりわかると思います。
中学受験をしないからといって、何も失敗ということではありません。
長い人生の中での「勝負どころ」が違うだけです。