100均商品の間違った使い方教室(塗装編)

100均のプラスチック商品のほとんどはポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレンが使われています。これらの素材はプラモデルの塗装などで汎用的に使われているラッカー系塗料が定着しない難塗装材料であるため、専用の塗料、及び手順が必要となるのでこれを解説いたします。

※あくまで自分の場合の手順をご紹介してますので「これが最良」というより「今のところこれで上手くいってる」程度のノリで読んでください


1.あると便利なもの

・GPクリヤー……接着の必要がある場合、アロンアルファや通常のG17,G10でくっつかない素材に効果を発揮します。青/黄でカラーリングされたチューブが目印。似たデザインで青/白でカラーリングされた「Gクリヤー」というのもありますが、色が透明なだけのG17と同じですので間違えて買わないように気を付けましょう。

・ロックタイト・スーパークリアー……PVC(塩化ビニール)専用の接着剤。PVC×違う素材を接着する時も、PVC側に一度塗って乾かしてから、GPクリヤーでの接着を行うとよいでしょう。地方だとなかなか売ってませんが富山の場合はプラント3にあります。

・スポンジ研磨材……塗料の食いつきをよくするというより、食いつかない素材でも摩擦係数を高めて定着しやすくするため、塗る前に必ず目荒しを行います。「スーパーファイン」と呼ばれる番手なら細かな作り込みが潰れません。模型店で買うと千円近くしますが、大きな(←重要)ホームセンターに同じものが200円ちょいで売ってます。ムサシとか、問屋町のカーマならあります。

・サーフェイサー……ごくまれに、PC用(塩化ビニール系)塗料で歪みの発生する素材があります。慣れてくると質感でなんとなくピンときますが、正体不明の素材は目荒しのあと、これで周囲をくまなく覆ってからPC塗料を吹きましょう。このサーフェイサー自体もラッカー系であり、難塗装素材に食いついてる訳ではないので、塗膜の上からでもPC用塗料によるプライマー処理は必須です。1000または「ファインサーフェイサー」と呼ばれる番手なら細かな作り込みが潰れません。色ももっともスタンダードなグレイの他、白、黒、ピンク、こげ茶などあるので、吹き洩らし防止のため素材とは違う色、且つ、上塗り色の発色の妨げにならない色を選びましょう。ちなみに白とか金とかで仕上げたい場合グレーは鬼門です。

・タミヤPC用塗料……ラジコン扱ってる模型店で買えます。スプレーならキャップ、筆塗ならラベルに「ポリカーボネート専用」と書いてあります。ポリカーボネート専用といいつつ他のポリマー系難塗装素材にも行けますが、アクリルとウレタンだけは鬼門です。通常のプラカラー(ラッカー系)と違うのは、素材に「食いつく」のではなく、乾くと薄いビニール膜を生成し、素材を覆ってしまうため、剥離が起きにくくなります。従いまして、これを一層吹いておけばその上からラッカー系なら好きな色で塗装できます。上塗り色の発色の妨げにならない色なら何でもいいのですが、フラットクリヤーあたりならトップコートにも兼用できるので、割と使いであります。「タミヤPCスプレー」には「プライマー」という商品もありますが、実はこれアクリル系で、素材に曲げ等の応力がかかると割れてくるので間違えて買わないようにしましょう。

・粘土板……100均の学童文具コーナーにポリプロピレン、ポリエチレンといった、やはり難塗装材料製のものが売っています。新聞紙の上に直置きだとひっくりかえした塗膜が癒着する恐れがあるので。

・ターンテーブル……某大手100均チェーンの300円商品で、テレビ台用として売られています。この上に粘土板を置く事で、素材に触れる事なく向きを変えながら全方向から塗装するのに便利。


2.禁則事項

PC用塗料と塗り重ねてはいけない塗料及び素材は

・ウレタン系……化学反応を起こして未来永劫乾きません。合皮にもウレタン系があるので注意、うっかりウレタン合皮にPC用塗料吹いちゃった場合は上から強引にラッカー吹いて何食わぬ顔しましょう(ベタつきは消えます)。

・水性のアクリル系……化学反応を起こして未来永劫乾きません。あまつさえアクリルの塗膜自体に靱性がなく塗膜が割れやすいので、最初から使わないのが無難です。水性ホビーカラーとか、筆塗だとラッカー系のMrカラーと間違えて買いやすいので注意。あとMrカラーはラッカー系ですが、トップコートだけ水性のアクリル系です(おとなしく市販のプラモだけ作ってる人がメイン客層なので、ラッカーの塗膜を溶かさないよう、そうなっております)。なのでトップコートは必ずPC用のクリヤーを使いましょう。

・エナメル系……化学反応を起こして未来永劫乾きません。

塩化ビニール、ウレタン、アクリルの3者は常に三つ巴の喧嘩してると思ってください、みんなと仲がいいのはラッカー系だけです。


3.知っておくと便利な硬化・乾燥時間

気温にもだいぶ影響を受けるので、ここでは一番悪い条件下(雪国の冬場)での時間を記載しておきます。

・ラッカー系塗料、番手1000以上または「ファイン」のサーフェイサー……2時間以内

・PC用塗料、液状ゴムスプレー(ウレタン系)……4時間以内

・ベーシックパテ、溶きパテ、番手500または「スーパー」のサーフェイサー……6時間以内(溶剤自体はラッカー系と同じものですが、粘度があるため揮発に時間を要します)

以上いずれも気温の高い夏場は早く乾燥しますが、判断を誤ると悲惨な事になるので私は季節を問わず厳守しています。

さて以上の事を頭に入れたら、いよいよ実践してみましょう。


4.実践手順例:ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレンの両面をシルバーに塗装する

100均のプラスチック商品のほとんどが上記3つのうちどれかです。

①スポンジ研磨材で軽く目荒しした素材を粘土板の上に寝かせ、PC用塗料を吹きます。フラットクリヤーでもいいのですが、最終的にシルバーで仕上げたい場合は下地色は黒にしておくときれいになります。(ちなみにゴールドにしたい場合は下地色には赤がお薦めです。)

②完全乾燥後ひっくり返して裏面にもPC用塗料を吹きます。5~10分放置すると塗膜が安定してくるので、続けてラッカー系の上塗り色を吹きます。(ひっくり返さず続けて重ね吹きする場合は完全乾燥までしなくても、油性同士であれば大丈夫です。)

③完全乾燥後(乾燥時間は後から吹いたラッカー系を基準に)ひっくり返して表面にもラッカー系の上塗り色を吹きます。5~10分放置すると塗膜が安定してくるので、続けてトップコートとしてPC用のフラットクリヤーまたはお好みによってパールクリヤーを、一歩下がった位置から(←重要)吹きます。

④完全乾燥後ひっくり返して裏面にもPC用のフラットクリヤーまたはお好みによってパールクリヤーを、一歩下がった位置から吹きます。シルバー、ゴールド以外のメタリック色(メタリックブルーとか)に仕上げたい場合は5~10分放置して塗膜安定後にラッカー系の半透明色(クリアーブルーとか)を吹きます。尚ラッカー系にはクリアーグリーンがないので、メタリックグリーンに仕上げたければPC用のフロストグリーンを使いましょう。

⑤完全乾燥後ひっくり返して表面にPC用のフラットクリヤーまたはお好みによってパールクリヤーを、もう一度吹きます。ラッカーの塗膜保護のため、トップコートは2層に吹くのです。他の色で模様など入れたい場合は2層目のトップコート吹く前に筆塗用のラッカー系で描いたあと、5~10分放置して塗膜安定後に2層目のトップコートを吹きます。

⑥完全乾燥後ひっくり返して裏面にもPC用のフラットクリヤーまたはお好みによってパールクリヤーを、最後にもう一回吹いて乾けば完成です。トップコート1層目と2層目の間にラッカー系の半透明吹いてる場合は⑤⑥の工程をもう一回繰り返します。


以上、大変時間のかかる手順であり、工期的に厳しい場合は短縮工程も工夫次第でありますが、まずは丁寧な手順を覚えた上で、短縮工程に手を染めるようにしましょう。EVAシートとか軟質素材についてはまたご要望ありましたら別の機会に解説したいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?