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読書記録2 『AI vs.教科書が読めない子どもたち』

著者は数学者、国立情報学研究所教授の新井紀子さん。

シンギュラリティはこない

論のベースは多くの人がAI(AI技術)の本質を見誤っている、というところに端を発する。AIはあくまで「計算をする機械」に過ぎず、意味を理解することができない。数学の要素である「論理・確率・統計」以外のことは不可能なのだ。この本が書かれた当時、すでにAIは大学入試のMARCHレベル合格圏内まで達している。しかしながら国語と英語、すなわち「論理・確率・統計」では正答に到達しきれない教科において弱く、東大合格レベルまで到達するのは不可能と筆者は言う。(その後研究が進み、2019年の大学入試センター試験の英語筆記において185/200点(偏差値64.5まで到達した<参考>。さらに2018年10月にグーグルが発表したディープラーニングの新技術により英語の筆記試験についてはすでに東大入試レベルまで到達しているという話があり、本書が刊行当時より進化を遂げていることは間違いなさそうである)人間が会話において無意識に行っている多くのことをAIに全て覚えさせることは不可能であり、シンギュラリティ(技術的特異点)がくることは無いとしている。

職は消える

ただし仕事は急激な速度でAIにとって替わられる。その未来がすぐそこまで来ている。先述したAIの得意分野に関してはあっという間に代替されるという。そこについてはなるほどその通りだなと感じた。筆者が警鐘を鳴らすのは次である。今の日本の子どもたちは読解力が圧倒的に低く、「文章の意味を理解する」という人間特有のスキルが欠如している。筆者が熱意を持って実施したRSTというテストの結果がそれを如実に物語った。この結果にはびっくりした。「教科書の内容が正しく理解できない」のは当然だとまで思われる。もちろんしっかりとした読解力を持った子どもたちも居り、難関大への進学率が結果として圧倒的に高かった。逆の言い方をすれば、「読解力さえ高ければ高い確率で難関大に進学している」とも言えよう。(筆者は「基礎読解力が低いと、偏差値の高い高校には入れない」としている)そしてその読解力は、現在の学校教育では12歳の段階で身についている子どもが難関大に進学するという流れまでできている。筆者は「現在の学校教育において最も必要なのは教科書を読める子どもたちの育成だ」としている。なるほどそのような観点で考えたことがなかった。

読解力はどう育てる?

筆者は「読解力を育てる有効な方法は見つかっていない」という。読解力が低い人間がこれからAIに取って替わられ失業していくというのに。僕も小中高生に国語や小論文の授業を行うことがしばしばあるが、たしかに、自分の伝えたいことがしっかり相手に伝わっているか(相手が理解しているか)ということには悩まされる。言葉を適切に選んだり、まとまりを意識したり、語義の確認をしたり様々な手立てはとるが、「意味を理解させること」というのは大変難しい。もはや自分で理解するしかないのかもしれないとまで思ってしまう

ひとつ僕が考えるのは、「言語的アウトプットを幼い頃から継続する」ということである。アクティブ・ラーニングがどうのこうの言いたいのではない。結局、人と会話すること、本の感想を書くこと、国語の問題に答えること、それら全て「言語的アウトプット」である。僕は比較的幼い頃からそれを繰り返してきたように思う。AIに代替されない読解力の育成、それはテキストについての自己の理解を明確な形でアウトプットする営みによって可能になるのではないか、というのが僕の現時点での仮説である。大人になった僕は、(少々論点がずれるが)「アウトプットの質はインプットの質によって決まる」ということを念頭に置いて精進したい。

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教育学部■大学生(21卒)■

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