見出し画像

現実と現実の間で

ショックを受けた。

パレスチナやギリシャ、フランスの難民キャンプで働いた後、最後に辿り着いた場所、ロンドンで。

3年前にも来たはずなのに、その様子は全く違って見えた。19歳の時に訪れたあのロンドンは、もっとキラキラ輝いていたはずだ。初めての一人旅。ウェストエンドで大好きなレミゼを鑑賞し、ホステルで出会った人たちとはしゃいだ。

それなのに、今見えているのは、時間に追われているサラリーマン、買い物袋をこれでもかというくらい下げて歩いているお金持ちそうな人たち。どれも変わらないお土産屋に溢れる商品。それを山ほど買って帰る旅行客。

わかっている。こうやって世界は成り立っている。

でも、これまでみてきた、トイレや最低限の物すらなく、雨の中キャンプ用の簡易テントで凍える人たちがいたあの場所と、ここが本当に同じ世界にあるのだろうか、と。

しばらく動けなかった。ただ、人々を見つめているしかなかった。

私がすれ違った人たちが、全員、難民問題やその他の社会問題に関心を寄せていないというわけではない。私が言いたいのはそこではない。

ただ、キャンプにいた時にその状況に悪い意味で慣れてしまっていたのだ。ロンドンで改めて気づいた。彼らにもこうやって仕事をして、お金をもらい、家に住んで、美味しいものを食べる権利があるのだ。そういう環境は、どんなひとにも当たり前にあるべきなのだ。

一方で、物で溢れたこの世界にも疑問を抱いた。私たちが幸せに生きていくために、ここまでたくさんのものが必要なのか。毎日毎日ありとあらゆる物が生産され、また捨てられていく。その裏には搾取されている人々がいるかもしれない。私達のせいで、地球はとっくに疲れ切っている。

そんなことを考えていたら、やりきれなくなった。

頭の中では、各地で出会った、難民となった人々の声が聞こえる。

「おー日本人初めて会ったよ、アンクルナカムラ(中村医師)の国だ。こんな遠くまでありがとう」「毎週毎週頑張っているんだけど、どうしてもイギリスに辿り着けないんだ。悔しいよ」「イギリスはいい国なんだろう?安全なんだろう?」「(この酷い環境は)命の危険がある自分の国よりマシだよ」「カイゾクオウニオレハナル!だろ?」「本当にこの仕事でお金もらってないの?ありえない。ありがとうありがとう」

みんな無事でありますように。また海外に出られるようになったら戻ろう。

#難民キャンプ #難民 #フランス #イギリス #ボランティア #バックパッカー #大学生 #休学


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?