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我が家のファミレス

僕の実家は飲食店です。下町の食堂といった雰囲気のお店で、元々はうどん専門店だったそうですがニーズに合わせてそばがメニューに加わり、中華が加わり、洋食が加わり、僕が生まれた時には既に結局何でもありの食堂になっていました。
決して裕福な家庭ではありませんでしたがバブルの時代には地元でバンバン巨大なビルが建ち、その作業員の方々が昼も夜も押し寄せ、行列こそできないもののそこそこ広いお店が常に満席だったような記憶があります。

そんな我が家。欲しいものをねだってもなかなか買ってくれなかったのですが、食べ物に関しては良いものを食べさせてくれていたなと今にして深く感じます。
ファストフードやファミレスなどには家族で行ったことがなく、高校に入って「ファミレスに行ったことがない」というと驚かれたものです。
「えー!? じゃ、家族で飯食う時どこ行くの?」と聞かれた僕は「万世とか…」と答えると「は? 何それ?」と言われたものです。
小さい頃は肥満児で、肉好きの食いしん坊だった僕は肉の万世の本店によく連れて行ってもらったんです。万世に行くといつも二人前食べていました。ハンバーグも食べたい。ステーキも食べたい。とんかつが食べたい時もある。そんな時、父は「じゃぁ二つ食べろ」とケチらず食べさせてくれたんですね。
肉の万世もファミレス的なお店ではありますが、秋葉原の本店の上層階に行くと高級店となり、一人で一家族分のお値段となります。普段は上層階へは連れて行ってもらえませんでしたが、何かのお祝いの際には上層階へも連れて行ってくれました。

時を経て今、僕は飲食に関する仕事もしています。本業は音楽ですが、食べたカレーを文章にまとめたり、世界中でカレーを食べて来た知識を元に商品開発に携わったり、飲食店や企業へアドバイスをしたりと、そういうことが仕事になっています。

音楽の世界では「絶対音感」というものがあります。小さい頃に音楽をしっかりやっていないと身に付かないものだと言われています。
そして飲食の世界にも「絶対味覚」的なものがあると前々から思っています。小さい頃からどれだけ色々なものを食べて来たか、美味しいものをちゃんと食べていたのか、そういう経験が無いと絶対味覚は絶対音感同様に得られないのではないかと、そう思うことが少なからずあります。
有名シェフの親もプロの料理人だったということは枚挙にいとまがありません。小さい頃から家庭でプロが作る料理を食べて育ったのですから、やはり味覚は鋭くなるのでしょう。
僕の実家は美味しくもなければ不味くもないといったレベルの下町の食堂にすぎないのですが、先述したように様々な料理がありました。そして、親戚も料理人家系であり、叔父も伯父も人気店のオーナーシェフで、小さい頃からそんな親戚の店で食べたりもしていたのです。だから今、カレーも仕事にできているのだなとしみじみ感じます。
ここに関しては本当に親と親戚に感謝しています。

なんてことを久しぶりに万世本店でパーコーカレーを食べながら思ったんです。


思えばパーコーとの出会いも万世本店のパーコーラーメンでした。
万世のカレーは洋食系のカレーでありながら、中華のパーコーと合わせてしまうという今考えてみても斬新な発想。
そして相変わらずの接客の丁寧さと味の良さ。やはり万世は本店に限ります。
本店ビルが売却されたということがニュースに上がりましたが、レストランは規模縮小しつつも営業中。
これからもずっと続いて欲しいお店です。僕のソウルフードであり、我が家にとってのファミレスですから。

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