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獣の解体3年目。鹿&猪127頭をさばいて食べた今、思うこと。

中村安希

10月に入って久しぶりに鹿が掛かり、127頭目の解体処理をしました。夏場は3ヶ月近くも連絡がなかったので、もしかして解体はもう終了かな?なんて思い始めた頃にかかってきた電話でした。2020年に栗田さん(2021年に亡くなった師匠)の下で始まった獣の解体作業(参『獣の解体を始めて3ヶ月。鹿&猪を36頭バラした今、思うこと』)。去年からは猟友会の支部長さんの下でやってきましたが、支部長さんもご高齢の身ですし、密かに引退していても不思議ではありませんでした。3年目はもうないかな、ないならないでいいんだけどな(笑)・・・と思っていましたが、いえいえ、そんなことはありませんでした。今年もやるみたいです。そこで、3年目の始めに、今思うことを書き留めておくことにしました。


1、急増する猿の被害

狩猟ではなく、あくまで害獣駆除に関わっている立場から言うと、今年は猿の被害がキツいようです。市の駆除班も猿対策で忙しく、鹿に手が回らないことがあるくらいです。農地はもちろんですが、近所の家の庭(家庭菜園)などにも猿が出没し始めていて、犬と山を歩いていても猿の集団に絡まれることが増えました。

猿が増えて厄介な点は主に2つあります。1つは、鹿や猪などと違い、畑を囲っても上から侵入してくるということ。手先も器用なので、網や扉も簡単に開けて入ってきてしまいます。なので、猿の獣害は対策がより複雑になります。そしてもう1つ厄介なのは、猿は駆除が難しいこと。頭がいいので、罠や鉄砲でもなかなか捕まらないことに加え、猿の駆除は猟師さんが嫌がるんですよね。猿は見た目がね、やっぱり人間に近いですから。もちろん駆除すれば報奨金は出るし、鹿や猪より高額らしいですが、それでも猿撃ちをやる人は少ないと。

支部長さん曰く、

「そりゃ嫌なもんやで。猿は死んだ時、白い顔してな、人間の子どもみたいな顔しよるんや。なんぼ金払う言われても、猟師かてやりとうないわな」

とのこと。蚊やゴキブリを殺すのは抵抗がなくても、鹿を殺すことに抵抗がある人がいるように(それは私ですが・・・)、鹿は撃てるが猿は撃てない、という感情があったとしても全然驚きではありません。だから猿の駆除は難しく、被害が拡大しています。


2、増え始めた鹿、戻ってきた猪の問題

私の居住地域では、栗田さんが亡くなって残滓の捨て場(栗田さんが所有していた山)が使えなくなり、解体処理が数倍大変になったことから、駆除頭数そのものが3分の1程度(150→50)に減りました。その影響はすでに出始めていて、鹿の頭数が増えています。ただ、本格的に増えてくるのは来年、再来年以降。というのも、栗田さんが亡くなってからの1年間はプラス100頭で済みますが、そこで駆除されなかった100頭のうちの半分(雌)は今年から妊娠可能になります。また、生まれてきた鹿が雌だったりすると、翌年には成長した小鹿と母鹿の両方が妊娠する可能性があるわけです。その観点で増加ペースを計算すると・・・

1年目:100頭(雄50+雌50)

2年目:150頭(雄50+雌50+子50)+100頭(雄50+雌50)=250頭

3年目:200頭(雄75+雌75+子50)+150頭(雄50+雌50+子50)+100頭(雄50+雌50)=450頭

4年目:275頭(雄100+雌100+子75)+200頭(雄75+雌75+子50)+150頭(雄50+雌50+子50)+100頭(雄50+雌50)=725頭

5年目:375頭(雄138+雌137+子100)+275頭+200頭+150頭+100頭=1100頭

もちろん全ての雌が毎年妊娠するわけではないですし、餌不足で餓死する個体や妊娠中に駆除される個体もありますから、これはあくまで妊娠可能な個体数をベースとした計算上の増加ペースであって現実はもう少し緩やかですが、放っておくと雪だるま式で増えていくというイメージは掴めると思います。しかも、今年は支部長さんの体調が良くないらしく、50頭も捕獲できないと思うので、頭数増加のスピードはさらに加速するとみています。

また、近年は豚コレラの流行で数を減らしていた猪が、どうも戻ってきているみたいです。「猪を最近また見かけるようになった」という話を、市内と近隣県の両方で聞きました。猪は鹿と違い、一回の出産で4〜5匹は産むので、一旦増加に転じると、その増え方は鹿の比ではありません。とは言え、猪肉はそこそこ人気があるので、猟期中に狩られる数も多く、猟師の数が足りている自治体であればなんとかなるのかな、とも思います。


3、交通事故とマダニの急増

獣(私の居住地域では鹿です)が増えて何が起きるかと言うと、畑や菜園、公園の花壇が荒らされて、山の下草や木の幹などが食べられてしまいます。ただ、それ以上に最近多いのが、交通事故とマダニの被害です。

「また鹿が轢かれてた」
「うちの近所も集団で出てきて轢きそうになったわ」

が、日常会話になってるってどうよ・・・と思いますが、夜間の運転などは皆さん気を使ってるみたいです。突然飛び出してきますから。

それからマダニが大変なことになってます!鹿って本来は森の動物じゃなくて草原の動物なので、公園の草むらなんか大好きなんですよ。だから集団で里に降りてきて公園や庭や空き地で草を食んでいくんんですが、その時に大量のダニを落としていくんですね。うちは犬を飼っているので「あの公園は危険!ダニだらけ!」というような情報が入ってきますが、そういう公園で何も知らずに遊んでいる子どもやピクニックをしている人たちを見かけると、いつか深刻なトラブルに見舞われるのではないかとハラハラします。

長くなってきたので、一旦ここで終了します。続きはまた後日・・・


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