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舞台公演「怪物覚醒」を楽しむために《3》~「切り裂きジャック」とは?~

今回のテーマは、今回の舞台「怪物覚醒」の重要な要素であり、ロンドンで実際に起きた100年間も未解決の事件の犯人
「切り裂きジャック」
についてお話します。。。

この記事にはグロテスクな表現が一部含まれています。
気分を害する恐れがありますので各自の責任でお読みください。

●切り裂きジャックとは?

切り裂きジャックとは1888年にイギリス・ロンドンのホワイトチャペルとその周辺で犯行を繰り返した正体不明の連続殺人犯です。
切り裂きジャックの標的となったのは、ロンドンのスラム街に住んでいた女性たちでした。この被害者たちは喉を切られた後に、腹部も切られていたことが特徴で、内臓が取り出されていた被害者もいました。

その事件の残虐性と、メディアが大きく取り上げたこともあり切り裂きジャックは世界的にほぼ永久的に有名となり、その伝説は確固たるものとなりました。この事件の容疑者として300人もの候補が浮かび上がりました。例えば…

・肉屋  
家畜の加工処理などのイメージが陳腐な形で殺人と結びついてしまったのでしょう 

・助産師 
当時の産婆さんたちは出産による出血がついた作業着で街を移動するのが一般的だったため。

・画家 
当時の容疑者ではありませんがウォルター・シッカートという高名な画家が切り裂きジャックだとする説があります。
パトリシア・コーンウェルという作家が、切り裂きジャックからの手紙をミトコンドリアDNA検査したところ、シッカートのミトコンドリアDNAが検出されたそうです。しかし、1888年当時のスコットランドヤード(ロンドン警察)には毎日何千通も「切り裂きジャック」からの手紙が届いていました。シッカートもまた手紙を出した一人なのかもしれませんが、彼が直接手を汚した殺人鬼なのかは不明です。 

・秘密結社
スティーブン・ナイト「切り裂きジャック最終結論」では、秘密結社とされる団体「フリーメイソン」のメンバーだった実在の医者
ウィリアム・ガル」が切り裂きジャックだった、と結論付けられています。フリーメイソンの儀式のために人々の臓器が必要で、解剖の経験が豊富なウィリアム・ガルが儀式遂行のために人々の命を奪っていった、という説があります。

こうした説はウォッチメン、バットマンキリングジョークなどアメコミに革命を起こした天才的なアーティスト「アラン・ムーア」によって「フロム・ヘル」というグラフィックノベルのモチーフとなりました。
さらにその「フロム・ヘル」は映画化もされ、ジョニー・デップ主演でセンセーショナルを起こしました。

・動物園から脱走したゴリラ
切り裂きジャックの事件が起きる40年近く前、文学史上初とされるジャンルの小説が誕生しました。そのジャンルこそ「推理小説」。
そして人類で初めて推理小説を生み出した人物「エドガー・アラン・ポー」彼が作り出したある小説には、人間ではないものが犯人で、残忍な事件を起こした物語があります。切り裂きジャックによる人が起こしたものとは思えない残虐性が、凶暴な霊長類であるゴリラと結びついたのかもしれません。エドガー・アラン・ポーの小説、ぜひお読みください…!

このように沢山の容疑者候補が浮かび上がりましたが当時のロンドンの警察、通称「スコットランドヤード」はこの切り裂きジャックを逮捕できませんでした。

この殺人事件は未解決のままであり、現代における切り裂きジャックの物語は歴史研究、民間伝承、偽史が混ざりあったものとなっています。現在も当時の被害者の遺留品などのDNA検査などもおこなわれていますが、現代の法医学をもってしてもその正体はまだわかっていません。そして現代、切り裂きジャックはジャック・ザ・リッパーなどとも呼ばれ、映画や漫画、小説、舞台に恐るべき存在として何度でも甦っています。

私と同世代の方なら、これが思い浮かぶのではないかと思います…(笑)

切り裂きジャックはこのように後世の様々なフィクション媒体で、悪のカリスマ、冷酷な紳士などのかたちで闇の中に潜んでいます。

しかしながら、
私aqiLaはこのような疑問を持ちます。

「本当に切り裂きジャックをそんな風に描いていいのだろうか?」

たしかに現代にいたってもその正体がわからない恐るべき存在は創作をするうえで魅力的です。ある種、完全犯罪を成し遂げてしまっているため、切り裂きジャックは神秘的なイメージを纏っていると言ってもいい。
ですが、この者は端的に言えば
何人もの人々の命を奪い、罪を償いもせず逃げた単なる犯罪者」です。
現代の私たちは時効まで逃げ回る連続殺人の犯人を、悪のカリスマのように描いたら眉を顰めるのではないでしょうか。それと同じように140年近く前の犯罪者だからと言って、実際の犯罪者に神秘的なイメージを付与して創作することは私は首肯しかねます。

そろそろ、私たちは切り裂きジャックから神秘性を剥がす必要があるのではないでしょうか。

●「ジキルとハイド」との不思議な因縁

今回の「怪物覚醒」のモチーフとなった「ジキル博士とハイド氏」は1886年にというイギリスを代表する作家によって書かれ発表されました。

すぐさま、この物語はイギリス中で大ヒット、まだ映画文化が過渡期だったことやイギリスが演劇の国でもあることから、すぐに舞台化されました。
その舞台公演でこの小説の主人公である二重人格者
ヘンリー・ジキル=エドワード・ハイド
を演じたのが、当時の俳優
「リチャード・マンスフィールド」でした。

彼はシェイクスピア劇を得意とするイギリスで最も偉大な俳優の一人で、この二重人格の存在を完璧に演じることができ、大評判になりました。まるで彼自身が本当に二重人格で、自分の中に怪物を隠しているかのように。

その恐ろしい「ジキルとハイド」の舞台が上演されている劇場の外で
切り裂きジャックは殺人事件を起こしていたのです。

その歴史的事実は、虚構と現実が揺らぐある出来事を生み出すのですが…
この続きは公演後のお楽しみです!
Twitterのスペースなどでお話するかもしれません。
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とにかく、「ジキルとハイド」と「切り裂きジャック」はロンドンという同じ場所、1880年代後半という同じ時期で生じた歴史的事実であり、両者には不思議な因縁があるのです。

●怪物覚醒~切り裂きジャックVSジキル&ハイド~

さて、長々と書いてきたこの恐るべき正体不明の殺人鬼「切り裂きジャック」を今回の「怪物覚醒」では「ジキルとハイド」の物語とパズルのように組み合わせ練りに練られた脚本の舞台化です!

歴史が証明する「ジキルとハイド」と「切り裂きジャック」の奇妙な因縁は誰しもが認めるにもかかわらずその両者が直接対決する作品はこれまで創られてこなかったのではないでしょうか。
「ゴジラとガメラが戦ったら面白いのに」
「バットマンとスパイダーマンが戦ったら面白いのに」と思いながらも意外と創られないのと同じ感じ。(後者は少しだけありますね)

そう、この怪物覚醒はジキル&ハイドと切り裂きジャックが直接対決する

史 上 初 の 舞 台 作 品 

です!

舞台だからこそできる演出とストーリーテリング、身体表現で歴史と虚構が交錯する凄まじい激闘をお見せいたします。
ご期待ください。以下、公演概要です!

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表現集団 りでんぷしょん
舞台公演「怪物覚醒」

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・脚本, 演出
aqiLa

・料金
前売券・当日券
ともに2000円

・公演日時
2022年
3月5日(土)開演時間14:00~/18:00~
3月6日(日)開演時間14:00~
(上演時間は約60分~最長70分の予定)

・出演者
aqiLa、きみちゃん、くつかけまな、國澤ひとみ、只野小平

・スタッフ
助演出:千葉祐貴
照明:瀧島隼平
音響:増田一樹

・あらすじ
1888年、イギリス。若き医学の天才ヘンリー・ジキルは人類の潜在能力を覚醒させ頭脳と肉体を今より遥かに優れたものにする研究をおこなっていた。彼がその研究を続けている理由。それはある殺人鬼を捕まえるためだった。その殺人鬼の名は───「切り裂きジャック」

・会場
北池袋新生館シアター
(東京都豊島区池袋本町1丁目37−8 中村ビル 202)
(https://maps.app.goo.gl/fds9MSSzhWmziZtg7)
会場にお手洗いがございますので開演前にご利用ください。

・ご予約フォーム
https://docs.google.com/forms/d/1OWG-fpOeulx9EtnglIaVXsCRm2YIvj7h1_z3xRpIqlI/

・お問い合わせ
メール:
sonic.screw.driver2019@gmail.com
Twitter:
@Ledemqtion
(https://twitter.com/ledemqtion?s=09)

※新型コロナウイルス感染防止対策にあたり、お客様には下記事項をお願いしております。
たいへんお手数をおかけいたしますが、ご理解とご協力をよろしくお願いいたします。
・ご観劇時のマスクの着用を必須とさせていただきます。
・ご来場時のアルコールによる手指消毒、検温をお願いいたします。
・パンフレットは紙ではお渡しいたしません。代用として当日のアンケート用紙にQRコード・URLにてパンフレットページのリンクをご紹介しておりますのでご了承ください。
・終演後の面会、飲食を伴う交流などは行いません。ただし終演後、俳優が舞台上にいる状態での写真撮影などは感染予防に留意しつつ実施予定です。

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怪物覚醒。
それは、劇場型犯罪。
そして、犯罪型劇場。

皆様のご予約&ご来場、心よりお待ちしております!

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参考文献:
・パトリシア・コーンウェル『切り裂きジャック』講談社 2003
・スティーブン・ナイト『切り裂きジャック最終結論』成甲書房2001
・アラン・ムーア『フロム・ヘル』新装合本 みすず書房 2009
・コリン・ウィルソン『切り裂きジャック』徳間文庫 1998

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