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奄美大島における新型コロナウイルスの感染者発生と、離島のコロナにまつわる現状について。


2020年4月17日、私が住む加計呂麻島の近隣離島である奄美大島でも新型コロナウイルスの感染者が発生しました。

奄美新聞(2020年4月18日)
新型コロナ・奄美市で2人の感染者
http://amamishimbun.co.jp/2020/04/17/24312/

その発表を受け、奄美大島5市町村長から「緊急共同メッセージ」が発表されました。

島内感染者確認に伴う奄美大島5市町村共同メッセージ
http://www.city.amami.lg.jp/kenko/documents/0418kyoudou.pdf


内容は、奄美大島来島者及び住人に以下のことを強くお願いするものです。

(1)島外から奄美大島等、奄美大島等から島外、いずれについても不要不急の帰省や 旅行などは、まん延防止の観点から極力さけていただくこと。

(2)医療機関への受診や職場への出勤、買い物など必要最小限の活動をのぞき、外出 を自粛していただくこと。

(3)こまめな手洗いや咳エチケットに加え、ご家庭や職場などあらゆる場面において 「密閉」「密集」「密接」の3つの密を徹底的に避けていただくなど、お一人おひとり がこれまで以上の感染予防に取り組むこと。

(4)感染された方や治療にあたる医療関係者及びそのご家族に対する不当な差別や偏見は決して許されることではありません。風評被害につながるような行動(具体的には根拠のないうわさ話や SNS での拡散など)を慎んでいただくこと。

しかし、現状、島内では観光でいらしたとみられる方がまだ見受けられ、ゴールデンウィークが近づいていることから、この内容を無視した来島者が訪れることを、在住者は危惧しています。

私が住む加計呂麻島の属する瀬戸内町では、新型コロナウイルス感染症の「感染者発生(R2.4.17)」を受けての町長メッセージが発信されています。

https://www.town.setouchi.lg.jp/jinji/chochomesseji.html

〝加計呂麻島、請島及び与路島につきましては、奄美大島の中でも“外海離島”であり、医療機関も即応できる環境にはありません。また高齢者も多く、万一感染がまん延した場合、奄美大島本島側以上に医療体制等が難しい状況下に置かれることになります。また島民の生活自体に、多大な影響を与えかねません。
 これから、ゴールデンウィークを迎え、帰省・旅行等などで、人の往来の増加が予測されますが、各島内における感染の拡大を防ぐために、皆様に感染拡大防止の行動をとっていただく事が重要となります。
 このため、5月6日までの間、加計呂麻島・請島・与路島に来島予定の皆様に、次のことへのご協力を強くお願い致します。(注:期限が変わる場合もあります。)
 (1)町外からおこしの方等は、加計呂麻島・請島・与路島へお渡りになるのは、不要不急の場合は、感染防止・蔓延防止の観点から極力さけていただくこと。
 (2)仮に、渡った場合につきましても、必要最小限の活動と、マスクの着用、こまめな手
洗いや咳エチケットに加え、「密閉」「密集」「密接」の3つの密を徹底的に避けていた
だく等お一人おひとりがこれまで以上の感染予防に取り組むこと。
 (3)町内(本島側)にお住いの方につきましても、同様に気を付けていただくこと。〟

加計呂麻島は奄美大島から船で20分ほどの離島で、常駐しているお医者さんはいません。ご病気の方は、奄美大島側の病院に行かざるを得ないし、妊娠中の方は船で20分、車で一時間半ほどかかる奄美大島の中心部である名瀬でしか検診を受けられません。
つまり、現在この状況で本当は移動したくはないけれど、移動せざるを得ない方がいます。
また、町営の船は、生活に欠かせない食料やガソリンなどを運んでいます。

沖縄タイムス(2020年4月19日)
「島が壊れかねない…」自粛求めても訪れる観光客 離島がコロナに強い危機感を抱く理由
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/561618

〝感染は生活基盤も揺るがす。「島の足」が村営フェリーだけとなる粟国村(685人)の船舶課は「感染客がいて、船員も濃厚接触と見なされたら消毒、経過観察のため2週間は運航できない」とみる。
 海路が途切れれば船積みの食料品は届かない。〟


加計呂麻島の状況も一緒です。感染者が船に乗船していたら、二週間、船が運航できません。


狭い島なので、島外の方がいたらすぐにわかります。
いつも笑顔であいさつしてくれるお年寄りも、「この前、見たことのない人がいてマスクなしで歩いていたから怒鳴らざるを得なかった」と言っていました。

「東京の友達が心配なんですよ。ほかの災害だったらそんなにつらいなら島においでよって言えるけど今は言えない」
「そうだよなあ……本当は友達が島に来てくれることなんて嬉しいことなのにな」
そんな風に私の友達や家族まで心配してくれるような、島の心優しい人びとに、人を怒鳴るようなことをさせたくはありません。


けれど、それでも、まだ島に来ようとする人がいます。


現在、Change.orgでは、
奄美大島への観光ストップ!!島を守りたい!!

私たちの手で奄美市をコロナから守りましょう。

鹿児島県への旅行者を制限し県境対策を徹底し、鹿児島を新型コロナウイルスから守りましょう。

と、観光客の入島拒否の徹底を希望する署名が立ち上げられています。

三つもの署名が立ち上がる、ということは、いまだに観光客が多いからです。

観光客による恩恵を受けている業種の方々も、今はみんな「島には来ないでほしい」と言っています。

南海日日新聞(2020年4月19日)
奄美大島5首長が緊急共同メッセージ

http://www.nankainn.com/gvmnt-admin/%e5%a5%84%e7%be%8e%e5%a4%a7%e5%b3%b6%ef%bc%95%e9%a6%96%e9%95%b7%e3%81%8c%e7%b7%8a%e6%80%a5%e5%85%b1%e5%90%8c%e3%83%a1%e3%83%83%e3%82%bb%e3%83%bc%e3%82%b8


〝県に対して要望書を提出することも明らかにした。内容は医療体制の確保や空港・港の水際対策強化、迅速な情報提供など。時期について朝山市長は「週明けにも」と語った。〟

奄美市の朝山市長は現在、県に要望書を提出。空港と港の水際対策強化を要望するようですが、現状ですと、それでも来てしまう人を止められません。

私は、Change.orgの「奄美大島への観光ストップ!!島を守りたい!!」の署名にあるように、
・奄美大島行きの飛行機・船での、乗船前の入島理由確認
(必要急務な医療関連、役場関連、教育関連、インフラ整備などでいらっしゃる方以外はすべて入島拒否。いらっしゃる方には所属機関からの必要急務である証明書を持参していただく)
ぐらい、してもいいと思っています。

自分たちも不便にはなるけど、見知った人が目の前でバタバタ死んでいくところを見るぐらいなら、全然我慢できるよ。

暗い話題が続き、各地の皆さまも疲弊しきっている状態の中、こういった記事を公開するのは、あまりしたくはなかったのですが、離島の現状を在住者としてお伝えしたくて、この記事を書きました。

皆さまに離島の現状を知っていただくとともに、現在の来島を控えていただくこと、各地でお身体をご自愛して、この騒動が終息した暁にこの美しい島にいらしてくださることを、私は望んでいます。

どうか、次は楽しい話題でお会いできますように!


作家/『ILAND identity』プロデューサー。2013年より奄美群島・加計呂麻島に在住。著書に『ろくでなし6TEEN』(小学館)、『腹黒い11人の女』(yours-store)。Web小説『こうげ帖』、『海の上に浮かぶ森のような島は』。