【子育てとキッチン】料理が奏でるBGM

子どもが成長するにつれ、子どもに関する親の悩みも変わってくる。
幼稚園児の頃は、送迎が一緒だったり園の先生と話す機会が多かったりするから、トラブルが起きても実情を把握しやすく対処できるのだが、小学校に上がるとそうはいかなくなる。

その時ママ友の友人が抱えていた悩みは、小学4年生の娘さんが巻き込まれた女子同士のトラブル。娘さんはとうとう「学校に行きたくない」と言い出し、実際に休む日がチラホラ出てきたという。

直接学校に赴いて先生に相談しようか、ママ友をたどってトラブル相手の保護者に連絡を取るか、いろいろな解決策を考えていた。

私は「自分だったらどうするかなあ」と一緒に頭をひねったが、もちろん正答なんて出ない。「うーん、そうだね」「むむむ、、、」と、言葉がどんどん細り、最後には無言になった。

突如、友人はそんな空気を打破するかのように、
「まー、おいしいご飯をつくってあげることが一番かあ!」と笑いながら言った。
私はその着地点が好きで、そんな彼女が好きなのだった。

親がしてあげられることは色々あるけれど、私も「ご飯を作ってあげる」ことが基本だと思っている。
理由はシンプル。おいしいものを食べたら元気が出るでしょう?

土井善晴さんの有名すぎる著作「一汁一菜でよいという提案」には、ご飯をつくることの利点を違う視点からも示されている。
ご飯を食べて元気になる、という図式だけではなく、その前の準備段階から子どもは「安心」を受け取っていると。

ーーご馳走であるとか簡単なものであるとか、味付けなんてことも問題ではありません。妻がその場で娘のためにつくる料理の音を、娘は制服を着替えるあいだに聞いたでしょう。匂いを嗅いだでしょう。母親が台所で料理をする気配を感じているのです。
〜中略〜
台所の安心は、心の底にある揺るぎない平和です。

「一汁一菜でよいという提案」土井善晴さん


野菜を切るトントンという軽快なリズム。卵をフライパンに落とすジュワッという音。キッチンから届く音で眠りから目覚める、というのは、ドラマや漫画で「幸せの象徴」のように描かれてきていたように思う。

料理が奏でるBGMが、子どもに安心感を与えて心の土台の厚みを増やす。
友人にも伝えたくなったから、今度お茶に誘おう。


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