アルセーヌ・ルパン『813』-国家警察部長VSルパン!LとMそして813の謎とは?-
翌日、グレル刑事はもう一度ケッセルバッハ氏が泊まっているパレス・ホテルを訪れたが、みな姿を消していた。
フロント係に聞くと、昨日、口ひげをはやした男が、ケッセルバッハ氏はこれからベルサイユのレゼルボワール通りに泊まると言っていたという。
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グレル刑事は、その口ひげの男が、昨日応対した人物と似ており、氏が急に姿を消したことに不安な気持ちになった。
刑事はケッセルバッハ氏が泊まっていた部屋に入るため、部屋の前まで来ると、中から人のうめき声が聞こえてきた。
入ると、侍従たちが縛られており、氏は椅子に座ったまま死んでいた。
心臓を細い針のようなもので、一突きにされていたのだ。
そしてグレル刑事は、氏の胸にピンで留められている名刺の名前を見て驚愕する。
「アルセーヌ・ルパン」と書かれていたからだ。
あの男は死んだはずだ!
やがてグレル刑事のもとに、ルノルマン部長がやってくる。
ルノルマン部長は若く見えるが、55歳を過ぎていた。
しかし、輝かしい功績によってパリの国家警察部長に就任し、数々の難事件を解決していた。
グレル刑事にとっては、尊敬すべき上司だった。
グレル刑事が、いきさつを話し、ルパンの名刺を見せるとさすがの部長も驚いた様子だった。
グレル刑事は、なぜ縛られて身動きできない人間を殺したのだろう?と部長に話す。
グレル刑事と部長がケッセルバッハ氏の部屋を調べていると、フォルムリ予審判事や検視医たちがやってきた。
予審判事とルノルマン部長はそりが合わず、仲が悪い。
とりわけ、予審判事は殺人者がルパンだと知って、捕まえる気満々だった。
ケッセルバッハ氏の侍従たちの証言から、共犯者がおり、名前がマルコだと分かる。
判事は事件の全貌を把握し、そして犯人の動機は、なめし革の袋と小箱を手に入れることだとわかり、あとは犯人を捕まえるだけだと言ったとき、ルノルマン部長がそれに異議を唱える。
殺しの前に既に盗みは行われていた。
なぜ、これまで一度も人を殺したことのないルパンがわざわざ人殺しをしたのか?
そして部長はこの部屋の隣にある部屋を調べてみたいと言う。
この部屋はケッセルバッハ夫人のために予約されていた部屋であり、全てのドアに鍵がかけられ、誰もその部屋に入った形跡はなかった。
しかし、見回りにきたボーイがある物を拾ったという。
それはシガレット・ケースでLとMの頭文字が彫られているものだという。
それを聞いた侍従のチャップマンが驚いて、本当にそのシガレット・ケースを拾ったのか!?と聞く。
そしてここにそれを持ってきてくれと頼む。
ボーイは取りに行ったが、どれだけ待っても戻ってこない。
チャップマンや支配人が見に行くと、彼は死んでいた。
ルノルマン部長は急いで「ホテルの出入り口を封鎖して見張れ!」と指示を出す。
そして部長はある紙切れが落ちているのに気づき、ポケットにしまう。
それには「813」と書かれていた。
冒頭から既に2人の殺人が行われて、これからどうなっていくのだろう?という展開ですね。2人目の殺人は、判事や警察関係者がいるホテル内で起こったので、犯人はよほど焦っていたとも考えられます。
LとMのシガレットケース、そして813と書かれたメモがとても気になります。重要な手がかりですね。ケッセルバッハ氏の(誰も泊まっていない)隣の部屋まで調べてみて正解でした。ルノルマン部長のスマートさが分かりますね。
続く。
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