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発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム 〜Jリーグシャレン!アウォーズ『チェアマン特別賞』受賞が未来にもたらすもの〜

2020 Jリーグシャレン!アウォーズ
『Jリーグチェアマン特別賞』を受賞

私も携わらせていただきました、昨年2019年7月27・28日に川崎で行われた「発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム」が、5月12日に、
2020 Jリーグシャレン!アウォーズ『Jリーグチェアマン特別賞』を
受賞しました!

日本初!
発達障害のある子とご家族のためのサッカー観戦&教室ツアーが実現

発達障害のある子どもの中には、サッカーが本当は大好きなのに、
困りごとからサッカーを嫌いになってしまう子がいます。
発達障害のある子のサッカーにおける困りごとを大別すると2つ。
それは「観ること」「すること」

サッカーを「観る」困りごと
●非日常的な場所、初めての場所や慣れない場所が苦手
●人混みや大勢の人が苦手
●太鼓の音や、大きな声が苦手
●知らない人や周囲にいる人の視線が怖い
●普段と違うトイレに行くことができない、母子・異性同伴が必要
●どんなに競技場の支援が充実していても、
 そこに行くまでの交通機関など、移動に困難さがある

サッカーを「する」困りごと
●ボールをうまく蹴れない
●手足がバラバラに動いてしまう
●片足立ちができないなど体のバランスを取るのが苦手
●自分の思い描いているプレイができない
●先生に叱られる、友達からいじめられるなど辛い思い
●サッカー(スポーツ)と聞くだけで苦手意識、自信喪失

発達障害のある子どもたちの中には、
「観たい」けど「観に行くことができない」から「観られない」
「サッカーをしたい」けど「うまくできない」から「サッカーはできない」
と、意欲があっても、あきらめている子どもたちがいるのです。

この「あきらめ」を「希望」に変えて、発達障害を手がかりとして、
すべての子どもの可能性と世界を広げるプロジェクトとして、
「発達障がい児向けサッカー×ユニバーサルツーリズム」が実現しました。

実施までに何度も積み重ねた会議の様子や、当日のお子さんたちの様子など、このプロジェクトが、種が蒔かれて花が咲くように川崎を起点として日本全国に広がっていってほしいという願いを込めて制作された「ドキュメンタリー映像」を紹介します。ぜひ、ご覧ください。

発達障害のある子とご家族のためのサッカー観戦&教室ツアーは、日本で初めて実施されたこともあり、特に7月27日の大分トリニータ戦観戦の様子は、多くのメディアでも取り上げられました。10月には川崎のお子さんとご家族がアウェイのガンバ大阪戦を応援に行くツアーも実施されました。
でも実は、これだけじゃないんです。
発達障害のある子の支援と合わせて、社会に発達障害のことをもっと深く知ってもらうための取組もされたんです!

川崎フロンターレ中村憲剛選手も登場!
感覚過敏を擬似体験できる「VR映像」

発達障害の特徴の1つである感覚過敏を言葉で理解することはなかなか難しいですよね。そこで、「見え方、聞こえ方、感じ方」の体感が出来るVR映像が制作されました。映像は体感できるだけでなく、「どの様にしたら落ち着きを取り戻せるか」「どの様にしたらできなかったことでもできるようになるか」について、具体的な方法や接し方などの「合理的配慮」を学べる構成になっています。でも、より多くの人に興味を持って見てもらう工夫も必要。言葉を選ばずに申し上げるのなら発達障害に関心のない人たちにも見てもらって、理解を深めてほしい。
そこで登場するのが、川崎フロンターレ中村憲剛選手です。

中村憲剛選手のVR撮影に立ち会った際、私は中村選手にお願いをしました。
「私たち親がどんなに発達障害のことを理解してほしいと求めても、理解してもらえないことがたくさんあります。でも、川崎フロンターレファン以外にも日本全国にファンがたくさんいる中村選手が発信してくれるだけで、一瞬で社会が理解してくれることもあるんです。だから、どうか発達障害のある子どもたちのために力になって下さい。」
そう伝えると中村選手はこう言ってくれました。
「自分も3人の子供を持つ同じ親なんで、僕にできることはやります。」

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中村選手の言葉に涙を堪えながら、私はグランドに向かいました。
でもそこで、言葉以上に中村選手の凄さを私は目の当たりにしました。
メディアにも多く出演し撮影に慣れている中村選手が、何度もテロップを読み直し、映像を見る人に伝わるように心を込めて、そして普段の収録は一発で決める中村選手が何度もやり直す、真摯で、誠実な姿を見たのです。
中村選手が登場するVR映像とあって、観戦当日のフロンパークで出店されたブースでは、どれだけ多くの人に見てもらえたことでしょう。感謝なんてありきたりな言葉では言い表せません。
今回の受賞を受けて中村憲剛選手がコメントを出してくれましたので、ご紹介させていただきます。最後には、コロナの影響で今、大変な思いをしている参加してくれた子どもたちあてにもメッセージが添えられています。

エキストラ出演「川崎市立小杉小学校」の子どもたち
この子どもたちの存在が、未来のユニバーサルデザインをつくる

そして、ぜひみなさんに知ってほしいもう一つの存在。
それがエキストラでこのVR映像に出演してくれた「川崎市立小杉小学校」の子どもたちです!当初の募集人数を上回る子どもたちが応募してくれて、たくさんの子どもたちが朝から夕方までと長時間の撮影に、嫌な顔一つせず協力してくれました。

印象的だったのは、演技の仕方について純粋無垢な眼でたくさんの質問を投げかけてくる子どもたちに、なぜ応募したのかと聞いたところ、感覚過敏などの困りごとは誰にでもあって、まわりにいる自分たちが理解して助け合えば解決することもいっぱいあるよねと、至って普通に、さりげなく答えてくれたことです。
「ねぇねぇ、どうやったら子役としてスカウトしてもらえるの?」
なんて面白い質問もたくさん浴びましたが、ここは登校シーンだからこうしようとか、ここは図工のシーンだからこんな会話にしようなど、子どもたち自らが考え行動してくれたその姿から、まちがいなく彼らの存在が未来のユニバーサルデザイン社会をつくるのだと確信しました。
『Jリーグチェアマン特別賞』受賞を受けて公開された2D版VR映像はこちらです。ぜひ、エキストラの子どもたちにも目を向けながらご覧ください。

Jリーグシャレン!アウォーズ『チェアマン特別賞』受賞が未来にもたらすもの

私はサッカーには、サッカーをする人や見る人だけでなく、その周囲にいる人や地域にも大きな影響を与え、巻き込む力があると強く感じています。毎日報道されるニュース番組のスポーツコーナーでは必ずと言っていいほどサッカーも報道されるように、私たちの日常に密接しているからです。

実は私、コラムなので正直に書いてしまうと、運動が苦手&トラウマがあってスポーツが大嫌いなこともあり、サッカーを90分間見ることも苦痛でした。もっと言うと、「私の人生においてスポーツで感動することなんてぜーったいにない」なんて言い切っているほどでした。(ごめんなさい!)
でも、このプロジェクトに携わらせていただいて、その考えは一変しました。大切な仲間と思えるプロジェクトメンバーとの出会いはもちろんのこと、川崎フロンターレのスタッフの方々やサポーターの人たち、そして笑顔でいっぱいの子どもたちとそれを見て喜ぶパパやママたち、その存在が私にサッカーの素晴らしさを教えてくれたからです。

地域や日常に密接しているサッカー界において、チェアマン特別賞を受賞したことは、川崎だけでなく、支援の質や量に地域差という課題がある発達障害の支援が日本全国の末端にまで広がっていく促進力になることは間違いありません。そしてその促進力は、以前の私のようなサッカーとは無縁の人たちや地域を巻き込み、「サッカーを好き」を共通言語・ツールとして、ユニバーサルデザイン社会を実現していくのだと、私は信じています。

改めて、この場を借りてこのプロジェクトを通して出会ったすべての方々に、深く、深く、御礼申し上げます。

見出し写真:私の大切な仲間と共に、初めての等々力競技場下見にて

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