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世界で一つだけの大事な名前イン・フィンランド

日本では、呼びかける時に名前も一緒に呼ぶことも多く、特に特別なことではありあません。でもなんだか、フィンランドで下の名前を呼ぶことは、特別なことみたいに思えます。(引き続き捜査中)

フィンランド語短期留学で「すれ違ってもいちいち Mitä kuuluu? (How are you ?に当たること?) は使わない」「ほめない」などを学び「へえ??」と思いました。ほめない、というのは、おそらくはお世辞を言わないこと、自慢をしない事、という意味だとは思うのですが、言われてみれば、めったに聞かない気がします。

そしてもうひとつ「名前で呼ぶことは、特に、ない」です。

日本(語)では目の前の人に呼び名、肩書、苗字を使って話しかける、話すのが一般的だと思います。これが、外国での言語習得者にはとって「第3人称を使って相手と話す」という風にとらえられるのです。「戸田さんは」 というのはあくまでも第3人称であり、「あなたは」という第2人称ではない、ということです。私には「第3人称?何言ってるのかしら」と、ピンときませんでした。

日本人同士の日本語での会話の場合に「私は」「あなたは」といちいちつけて話すことは珍しいでしょう。外国語から訳しているみたいです。動詞は誰が主語に来ても同じで、主語に影響される活用は基本ありません。尊敬、丁寧、謙譲とありますが、主語というより、「主語が着ているご身分」によって形がかわる、ということになります。名前を使いながら話すことはごく普通。逆に目の前の人に「あなたは」と呼び掛けてしまうと、やけに堅苦しいとか、逆翻訳しながら話しているとか、たまに、嫌みな感じがしないでもない状況もあります。フランス語生活にすっかり慣れ、日本語を忘れ始めてきている日本人に「あなたは・・・」と話しかけられ、軽く違和感を覚えた経験もあります。そう思うのは私だけかな?

動詞活用って何?
英語のBe 動詞は主語代名詞によって形がかわりますが、他の動詞は、第一人称と第二人称は同じ活用。Have は第3人称だけhasですが、いい方を替えればhave とhasで仕事しています。フランス語やらフィンランド語では、Be 動詞を含めて全部主語による活用をします。活用するヨーロッパ言語は多いことでしょう。フィンランド語には、第一人称、第二人称、第3人称の主語代名詞があり、それぞれの動詞活用があります。

Olen, olet, on, olemme, olette, ovat 主語代名詞をつけずに書きました。でも、フィンランド語は、これで使うのが一般的です。主語をつけるとこうなります。
minä olen, sinä olet, hän/ se on, me olemme, te olette, ne ovat 
普段使いで話すときは、主語抜きで、主語代名詞をつける時は「わ・た・し・が」といちいち強調したいときだそうです。なおフランス人がフィンランド語を学ぶときは、フランス語の仕組みからスライドして主語代名詞ごと学びます。
ちなみに仏語はこういう感じ。
Je suis, tu es, il /elle est, nous sommes, vous etes, ils sont (フランス語)

イタリア語も動詞活用で主語代名詞がわかるため、主語抜きにできますが、フランス語はポイ捨て禁止なのです。だからフィンランド語を学ぶときであっても、動詞活用に、主語をつけて学びます。そのうち「主語を省略できます」と知識としては学びますが、「感覚」としてはなかなか習慣になりません。(英語も主語をぬいたりしません。)いきなり現地へ飛んで、主語抜きの世界に生きている場合は、逆に、いちいち主語をまなばなくてはならなくなるようです。

というわけで、名前の話に戻ります。日本では名前を呼ぶのも普通のこと、使わなかったら失礼にあたるかもしれないくらいですが、フィンランド人にはどうも違う様子。何かの拍子に友達に「メーリ!」と呼び掛けると、「マリ!」とメーリは返事をし、「メーリ!」「マリ!」と名前だけ呼び合うギャグがしばらく続いたりします。おお、名前を呼んできた、で、いったいどうした!重要事項か!?って印象も受けます。何回も聞いたことがあります。名前って重すぎるのでしょうか。

英語で授業に参加している学生が、先生に下の名前で呼びかけました。日本では無理そうですが、先生に下の名前で呼びかけることは、あちこちの国で可能なようです。しかし私はこれを聞いた瞬間、びっくりしました。フィンランド人は質問があればたいてい「すみません」(アンテークシ)もしくは「ヘイ、わかりません」から始めます。つまり、先生の名前を聞いたことがありません。英語でも受講できますが、フィンランドの文化を学べるというわけではないのかもしれない、と思いました。ちなみに、ここで驚く私の反応は、まだまだ日本人です。スルーするのがフィンランド風だと思うのです。いや、スルーも何も、ひっかからないんじゃないか、と思います。もし私が騒いだら「何が問題なの?何か起きたの?」と逆に聞かれることでしょう。自己反省を含め、多くを学んだ一瞬でした。

こんなわけで「???」という感じではあるのですが、少なくとも、話しかける相手の名前を思い出せなくても、差支えないということはできそうです。主語も抜けちゃうし、名前も抜けちゃってもいい。個人主義、というか、個人を尊重できるというのか。名前にどこまでの意味を持たせるのか。・・・とりあえず、かたっくるしくなくていいや、と考えています。

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