コーポレート職種の採用はなぜ難しいのか? ~ 実体験と解決策を添えて ~
こんにちは。Gaudiy HR/PRチームの加藤 燦(あきら)です。
先日、Gaudiyに入社してから個人的に取り組んだ、チームメンバーへの成長支援を振り返ったnoteを公開しました!(読んでね)
3日目の担当だったコミュニケーションデザイナーのtanashoさんからは、寿司の握り方の記事を期待されたのですが、それはまたどこかで🍣
今回は、自分のメインミッションの1つであったコーポレート職種の採用活動について振り返ってみたいと思います。
他社の人事仲間からは、
という声を聞くことも少なくなく、私も実際に活動をする中で、スタートアップのコーポレート/バックオフィス採用の難しさを痛感しました。
エンジニア職や他の職種は、noteなどで採用ノウハウが公開されていることも多いですが、コーポレート職種においては組織立ち上げの記事はあっても採用に関する記事は少ない印象です。
そのため、今回の記事が、
コーポレート採用に注力しているHRの方
コーポレート組織の体制作りを担っている方
の参考になればという思いで、採用活動を通じて得た学びや実際の取り組みをまとめましたので、ぜひご覧ください!
コーポレート、バックオフィス、管理部門
本題に入る前に、「コーポレート」が何を意味するのかを整理します。
その名称や管掌範囲は、企業によって異なります。コーポレート組織の呼び名としては、「バックオフィス」「管理部門」「人事部門」などが一般的かと思いますが、自社独自の呼び名を使っている企業もあります。
そして、どの役割/職種が、どの組織に内包されるかも会社によって違いますが、代表的なコーポレート職種としては、
が挙げられるかと思います。
Gaudiyでは、経理・財務、労務、情シス、法務、総務の領域を総称して「コーポレート」と呼んでおり、私が所属しているHR、PRの領域は別組織として置かれています。
この組織体制は、歴史的背景や組織の哲学、事業モデルによって様々です。採用活動を取り組む上で、なぜそのような体制なのか、役割配置になっているかは、会社のコーポレート領域に対しての哲学や戦略が反映されやすいため、HRとしても把握することが重要です。
ちなみに、初めてコーポレート採用に携わる方は、こちらの書籍がおすすめです。
Gaudiyに入社してから私が取り組んだのは、「経理・財務」「労務」「総務」の3ポジションでした。
採用の背景としては、1年間で社員数が2倍弱になると同時に外国籍メンバーも増加する中で、コーポレートの業務量が急増し、業務範囲も広がったことや、一部ポジションでは退職者が出たこともあり、会社の屋台骨であるコーポレート領域の採用が急務な状況でした。
各職種ごとに採用Tipsがありますが、今回はあくまでコーポレート領域全般を主語にして語っていきたいと思います。
採用市況に向き合い、厳しい現実を知る
昨今、中途転職市場は回復傾向にあり、求人倍率も引き続き増加傾向にあります。そして、コーポレートの職種も例外ではありません。
2024年10月末時点のdodaの転職求人倍率レポートによると、その傾向がよくわかります。
他の職種も含まれている数値ではありますが、コーポレート職種が含まれる「企画・管理」「事務・アシスタント」の求人倍率を2019年から切り取ってみると、採用市場の変化を読み取れます。
また、株式会社MS-Japanが公開した「経理・財務」の転職市場レポートでも求人倍率が上昇していることが示されています。
細かく職種ごとに分類すると多少の違いはありますが、これらのデータからもわかるように、多くの企業がコーポレート人材を求めていることがわかります。
私自身もこの市況感を目の当たりにすることがありました。
経理・財務ポジションの候補者の方と面談をしている際に、「今回の転職でビズリーチを登録したところ、1日で40通スカウトが届いて、1週間後には100社の企業からスカウトがきたんですよね。」とおっしゃっていました。
エンジニア採用では珍しくない件数ではあるのですが、コーポレートの領域でも同様の現象が起こっているとは、驚きでした。
こういった背景には、バックオフィス人材の流動性の低さもあると言われています。退職率が他の職種よりも低く、在籍年数が長くなる傾向が強いために、新しい人材が流れてこない市場になってしまっている。先ほどご紹介した候補者の方も、転職市場において貴重な1人だからこそ、全方向からアプローチを受けたのだと思います。
一方で、企業側としても、コーポレートに求める専門性と業務水準が高まっています。コーポレートの仕事は定型的な事務業務だけでなく、専門領域と事務業務に分けた考え方が広がっています。さらに、IT化への対応や法令理解などの背景が相まって、求められる水準が徐々に高まると同時に、人数も増やしていかなければならないような状態です。しかし、このような環境に適応できる人がすぐには増えないため、採用市場全体で需給バランスの歪みが発生しています。
そして、スタートアップでは、立ち上げ時期の一人目ポジションや将来のリーダー候補としての若手層を採用するケースが多いかと思います。なおのこと、上記背景が相まって、さらに採用難易度は高まっています。
本当の意味での差別化要素を見つけ出す
市場が変化し、採用難易度が上がっている中で、受け身の姿勢では採用できないこの時代。能動的に候補者にアプローチしていく必要性があります。
しかし、アプローチできる手段を持ち合わせていたとしても、振り向いてもらえなければ採用はできません。企業が惹きつける(アトラクトする)ことができなければ、候補者から選ばれることは残念ながらありません。
(そもそもの認知を高める必要もありますが、今回は割愛します)
株式会社Haul 代表の平田さんのnoteの中でも、採用活動におけるアトラクトの重要性が語られています。(HRのみなさん必読)
こうした厳しい市況感だからこそ、非常に重要なのが、惹きつける要素の言語化とアプローチ手法の選択です。
『同時に40社からアプローチを受けた候補者が目の前にいた時に、本当の意味での差別化になる要素は何か』
という問いに答えられる人はそう多くはないと思います。
さらに、スタートアップの企業にとっては、魅力を見つけ出すのが本当に難しい場合があります。
下記画像は、株式会社MS-JAPANが公開している「「経理職」に聞いた「仕事とキャリア」の意識調査!【2024年】」レポートです。
経理職を例として挙げていますが、働くモチベーションの上位として、「報酬・給与面」「ワークライフバランス」「仕事への情熱&興味」「自己成長やスキルアップ」が挙げられています。
もちろん、これらの要素を満たせる惹きつけポイントがあれば、どんどん前に出していくべきです!しかし、スタートアップ企業においては、他社と比較した時に「伝わりやすい強みがない」もしくは「まだ整備されていない」ケースも往々にしてあります。(例えば、年収やワークライフバランスなど)
事業フェーズとしても、「N-○期」や「上場企業」などの魅力的な要素があればよいのですが、それも無いことが多いです。
では、「業務内容で差別化できないか?」と考えてみるのですが、ここも悩みどころです。なぜなら、コーポレート領域の業務内容は、職種の特性上、必要となる業務自体が決まっていることも多く、他社との差別化が難しいことが多いです。
例えば、弊社の労務求人の業務内容です。
おそらく、皆さんの会社でも同様の業務内容になるかと思います。そのため、仕事の内容では他社との差別化が難しいからこそ、他の要素での惹きつけが求められます。(ここで違いを作れたら、それはそれで素晴らしい。)
このように、コーポレート職種の採用は、他社との本当の差別化ポイントを見つけるのが難しいことが多いです。そのため、行動量は絶対に大切という前提はありつつも、無意味なスカウトをとにかく送ったり、確率論的に多くの接点を持つことに注力する施策を取ってしまいがちだと思います。
組織の未来を描くことが差別化に繋がる
では、どうすれば差別化ポイントを見つけ、候補者を惹きつけることができるのでしょうか。
結論としては、「未来を一緒につくっていける」点を訴求するのが一番だと思います。この要素自体は他職種でも同じことが言えますが、この「未来」をどう描くかが、差別化になると考えています。
特に、一人目ポジションやリーダー候補を採用していくにあたり、「コーポレート組織を今後どのような組織にしていきたいのか?」「大切にしていきたい組織哲学は?」などの将来のwillや価値観のすり合わせが重要です。
実際、私もCorporateチーム責任者の橋本さんと幾度となく、つくりたい組織について会話を重ねました。橋本さんとしては、各職能の代表者が自律的に担当領域を推進しながらも、チームとしては同じ目標に進んでいく自律分散的な組織をつくっていきたいという強い思いがありました。
(キングダムの「六大将軍」を例に出して何度も説明してくれたのですが、私がそもそも履修しておらず、キングダムを全巻読むところからスタートしました(笑))
採用担当者としては、理想の組織に向かって1歩でも近づける仲間を採用するためには、「どのように未来を伝えることで魅力に感じてもらえるのか?」を考えきることが、前述した他社との差別化要素を磨くことに繋がります。
そして、忘れてはならないのは、どのような人を採用したいのかのすり合わせです。スーパーマンを求めてもどこにもいない採用市場において、リアルな人物像を描くことは重要です。そして、スタートアップの環境下では、自分の専門領域の業務だけでなく他の業務領域をサポートしていく、もしくは、複数領域を任されるケースもよくあります。
そのため、採用職種を定めながらも、専門領域とは別に、何の経験があればよいのかを言語化し、優先順位付けを行うことで、採用したい人物像を明らかにしていきました。Gaudiyでも、労務を軸にしながら、経理、総務の経験がある人や、総務経験がありつつも、他領域の経験も持っている人など、経験の掛け合わせでペルソナを設定していました。
最終的には、【コーポレート組織の未来 × 採用したい人】の解像度を高めることで、未来の仲間に伝えたいメッセージを研ぎ澄ますことができますし、唯一無二の強み・差別化ポイントにたどり着くことができます。目に見えない抽象度の高いものになることもありますが、そこは気にせずに候補者に届けていくことが重要です。
出会いを生み出す3つの取り組み
コーポレート採用市場に向き合い、懇意にしている数社のエージェントさんにご協力いただき、採用媒体も活用しながら、最終的に、当初の目標だった3名(労務、財務・経理、総務)を無事採用することができました👏(採用経路は、SYNCA経由2名、ビズリーチ1名という結果でした。)
採用活動の取り組み自体は、あたりまえのことばかりなのですが、様々な施策を走らせた中で効果があったものをご紹介します!
①差別化要素を求人とスカウト文章に散りばめる
前述したとおり、採用候補者は、大モテです。企業として、一瞬の接点を持てた時に「あなたのことです」と思ってくれるような要素を散りばめる必要があります。
散りばめる場所
求人内容(募集背景や業務内容に盛り込む)
スカウトタイトル(最初の見出し勝負)
スカウト文章(語り尽くす)
Gaudiyは、「Web3×エンタメドメイン』という特性上、候補者の方々が求める傾向が強い「安定」のイメージと真逆の印象を持たれることが多いです。はじめはそのイメージを払拭しようとしていました。しかし、入社したコーポレートメンバーにヒアリングをしてみると「Web3で実現したいビジョンに共感した。」「自分もオタクで、事業内容に興味を持った。」という声が多く、多くの人には刺さらないかもしれないけど、1人が振り向いてくれたらよいというスタンスに途中から切り替えました。具体的には、Web3×エンタメのキーワードや、業界ならではの挑戦できる業務などを各所に散りばめていきました。
さらに、スカウト文章では、前述したコーポレート組織の現状を赤裸々に告白しつつ、目指す世界についても伝える構成にしたところ、結果的に多くの方から返信をいただけるようになりました。
もちろん、いきなり完成形を作るのは難しいです。スカウト文章ひとつ取っても細かな改善を重ねていく必要があります。多いポジションだと、4回ほど大幅なアップデートをおこない、候補者によってメッセージングを変え続けた結果、スカウト返信率は、SYNCAで20%、ビズリーチはポジションによりますが、15%〜25%に着地しました。
そして、実際のスカウト文章を抜粋してお見せします!
内容としては、普通のスカウト文章に見えるかもしれないですが、採用したい人に刺さるような内容を幾度となくチューニングしながら変更を加えた結果になります。
実際に入社を決めてくれたメンバーのスカウトへの返信は、まさに伝わった感覚があり、こっそり喜んだ思い出があります。
②全員が最前線に立つ
Gaudiyでは、「全員採用」の概念を大切にしています。
今回の採用活動でも、
コーポレート責任者がカジュアル面談に出る
コーポレートチームのメンバーと可能な限り全員と会う
HRも同席をしながら、候補者にも伴走する
の3点を重視して選考を進めていました。
特に、「コーポレート責任者がカジュアル面談に出る」は振り返ってみると重要な取り組みでした。カジュアル面談の場で、責任者からコーポレート組織の現状と目指す未来の話をすることで、候補者側の立場から自分に合う・合わないを判断いただくことができました。未来を語れる人が伝えきれないと採用しきれないという痛みを味わってきた過去の反省から、初回の接点の重要性を改めて感じました。
また、コーポレートの職種においては、同チーム内の横の連携も発生する特性もあるため、Corporateチームのメンバーにも必ず会えるようなフローを組んでいました。(忙しい中でもフルコミットしてくれて大感謝👏)
面談の前には、メンバー個人の価値観に触れることができる社員の「入社エントリ」を事前に送ることで、他社の差別化要素を作れるようにしていたりと、「この人たちと働くんだ」という気持ちの醸成にも注力していました。
そして、HRの私も同じく面談・面接に参加しながら候補者にも伴走していくことで、手触り感を持ちながら採用活動の改善を行うことができ、同時に、差別化要素を見つけ出すことにも繋がりました。
③社内への声掛け
採用の成果までは繋がらなかったですが、社内への声がけ(リファラル採用)は、コーポレート職種の採用においては、非常に親和性が高い施策でした。
Gaudiyのリファラル文化については、こちらの記事をご覧ください。
社会人経験がある方であれば、最低でも1人は過去一緒に働いてきたコーポレート職種のメンバーが思い浮かぶと思います。事業部とのコミュニケーションも多く発生するコーポレート職種では、カルチャーフィットも重要な要素になるため、現メンバーからの紹介は確度が高いことが多く、良い出会いになるケースが多いです。
かつ、昨今の転職市場においては、エンジニア職種や採用が難しい職種と同じように、転職意向が上がらない内に、いかに接点を持てるかが肝になってきています。その観点からも、リファラル採用の取り組みは、コーポレート領域の採用においても非常に重要になってきています。
おわりに
いかがだったでしょうか。
個人的な振り返りとしては、現実に向き合う重要性を学び、変化の荒波を乗りこなすための活動にコミットしてきた半年間だったなーと思っています。
一方で、今回の採用活動では、緊急度との兼ね合いもあり、地上戦での採用活動が多くなってしまったのは反省点です。来年は、採用広報の観点から、出会いたい人たち一人ひとりに届くようなコンテンツを作りながら、Gaudiyのコーポレート組織への共感の輪を広げていけたらと思っています!
今年もたくさんお世話になりました!少し早いですが、良いお年を!
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そして、多くのポジションで絶賛採用中なので、エントリーをお待ちしております!