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議員外交のバトンを繋ぐ。ベトナム訪問で見えたもの。

 8月22日夜から実質3日間、自民党青年局の海外研修でベトナムに行ってきました。

 この海外研修はコロナ禍による3年間の中断を挟んで復活した青年局の伝統行事。長年に渡り、年に一度、台湾とベトナムへの訪問を交互に重ねてきたそうです。私にとっても日越関係の特別な「地経学」的な重要性と、議員外交の意義を再認識する忘れられない訪問となりました。

 訪問団は国会議員6名に地方議員や学生らを合わせて計53名というなかなかの大所帯。出発前の梅田邦夫前ベトナム大使による日越関係の詳細なレクチャーに始まり、ベトナムのビッグ4と言われるグエン・スアン・フック国家主席やヴォン・ディン・フエ国会議長との面談、国会議員青年団との交流、抗仏・抗米史にまつわる軍事歴史博物館の見学、現地企業の訪問、環境対策に取り組むハロン湾視察など、中身の濃い日程をこなしました。

安倍元総理とも親交の深かったフック国家主席との面会

 ちなみにベトナムではコロナ禍はほぼ過去のものとなり、市内でもほとんどマスクをつけている方は見かけません。外国人観光客で賑わう夜の屋台村を歩きながら、第七波との闘いが続く日本の景色との違いを感じずにはいられません。

「特別な戦略的パートナーシップ」としての日越関係

 今回面会したフック国家主席も、フエ国会議長の口から、たびたび「ベトナムと日本との特別な戦略的パートナーシップを大事にしたい」という発言がありましたが、現地に足を運んでみて、改めて両国関係の安全保障、経済双方にまたがる「地経学」的な重要性を認識することとなりました。

ベトナム若手国会議員との意見交換、夜は交流会

 まず安全保障の面では、両国は「東シナ海、南シナ海の平和と安全を守っていくという共通の利害を有する重要なパートナー」(フック国家主席)です。この事実は歴史的にも裏付けられています。3日目に訪れたハロン湾は大小2000もの奇岩が海中から伸びたつ世界遺産にも登録されているベトナム一の景勝地ですが、国防上の要衝でもあります。13世紀には元のフビライ・ハンによる侵攻を、英雄チャン・フン・ダオ将軍が打ち破った地としても有名で、そのおかげで鎌倉幕府は3度目の元寇を避けることができたとも言われています。

 現在もハロン湾の先の西沙諸島の領有を巡り中国との緊張関係を抱えるベトナムですが、中国はベトナムにとって最大の貿易相手国。ゆえに通常は無用な摩擦は生まないように友好関係の維持に努めるものの、「主権の侵犯に対しては断固とした対応を取ると繰り返し明言し、実際に行動で示してきている」(梅田前駐越大使)とのこと。台湾をめぐる東アジアの軍事的緊張が高まる中、日越両国の緊密な信頼関係の重要性がますます高まっていくことは疑いありません。

左から川崎ひでと議員、私、佐藤啓議員(団長)、鈴木憲和議員(団長)、鈴木隼人議員、川崎修平神奈川県議

日本経済を支えるベトナムの若者たち

 経済的な観点からも、ベトナムは日本にとって欠かすことのできない存在です。ベトナムから日本へ来て働く労働者数は現在、約45万人、中国を抜いてトップの数字です。少子高齢化による急激な労働人口減少に直面する日本にとり、ベトナムの真面目で優秀な若者たちの存在は、もはや日本の社会経済の死活を左右する重要な要素となっています。

 2日目に訪問した「LOD人材開発社」は、過去30年にわたり世界各国へ7万人以上、日本にも約2万6千人の研修生を送り出してきた人材派遣会社。受け入れ先には私の地元・愛媛県の企業もいくつかあります。LODでは研修生を日本へ送り出す前に、ベトナム国内で6ヶ月の合宿研修をし、N4レベル(基本的な日本語が理解できる)の語学を習得するそうです。教室を訪問すると、新潟県小千谷市の会社に派遣予定の18歳の女性たち約30人が授業中。覚えたての日本語で「日本のことは大好きです」「冬に雪が降っても交通機関は動きますか」「日本に行ってからも日本語の勉強は続けられますか」といろんな質問を投げかけてくれました。

日本語で「パプリカ」を披露してくださった研修生の皆さん

 他方、近年はベトナムの若者を食いものにする悪質ブローカーの存在や受け入れ企業側の認識不足もあり、人権侵害や外国人犯罪の問題が大きくクローズアップされているのも事実です。また日本で研修生たちが怪我や病気をしたときに充分な補償を受けられなかったりするようなことがあってはいけません。ベトナムの優秀な労働力は国際的にも人気で、すでに台湾や韓国との誘致合戦が起こっているのが現状です。参加した山梨県の乙黒県議などから、ベトナムの技能実習生をめぐる課題改善に向け「各県の青年局でリーダーシップをとって取り組みたい」と前向きなイニシアチブも生まれました。ベトナムの若者たちが日本に来て本当によかったと思える環境づくりを急がなくては。若い研修生たちの期待に満ちた目を見て強く感じました。

30年以上前から続く議員外交、継続の力

 政府の代表でもない我々訪問団へのベトナム側の厚遇には驚きと感謝の連続でした。我々のバスの前は常にパトカーの先導車が付き、渋滞の中もスムーズに移動することができましたし、何より国家のトップ指導者との相次ぐ面談実現も、外交プロトコル上は明らかに破格の待遇です。

 今回ベトナム訪問中に、Facebookに投稿した写真を見てある先輩議員からメッセージを頂きました。

「今から30年以上前に当時の青年局長とベトナムを訪問したのを、懐かしく思い出します。」

 それほど昔から青年局によるベトナム研修が続いていることに驚くとともに、こうした長年の議員外交の信頼の基盤の上に、ベトナム側の手厚いおもてなしがあるのだと気付かされました。一緒にフォーをすすったり、夜に度数の高いお酒を酌み交わしながら、党の大先輩たちもベトナムの若い世代と肩を組んで話し込んできたのか、とその様子を想像してしまいます。外交とは結局のところ、一人ひとりの信頼関係の積み重ねを継続していくしかない。そのバトンを世代を超えて繋いでいかなければいけない。そうした外交の、そして政治の基本を再認識しました。

 深夜のハノイ空港まで我々のお見送りに来てくれたAn Trinh Xuan議員は今まで日本を訪れたことがないそうですが、

「来年の日越外交樹立50周年には必ず日本に行きたい」

と約束してくれました。彼との固い握手の感触を忘れず、今回の訪問の学びをこれからの日々の行動に活かしていきたいと思います。
 最後になりますが、今回の訪越実現にあたり大変なご尽力を頂いた在ベトナム大使館の皆様、党職員の皆様をはじめ関係者の皆様に心から感謝申し上げます。

今回の訪問は現地テレビや新聞にも連日大きく取り上げて頂きました。


 


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