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税制が決まっていく舞台裏の景色。

永田町の銀杏並木もすっかり色づくなか、いよいよ6日から臨時国会が始まりました。

これまで数週間、自民党内では来年度の様々な税制改正の概要を決める「税制改正の大綱」の取りまとめに向け、大詰めの議論が行われてきました。あまり世間に知られることのない税制の議論のプロセスですが、はじめてその一端に触れ、とても学びの多いプロセスでしたので簡単にご紹介したいと思います。

毎年、8月下旬ごろに各役所では様々な政策分野の税制について翌年度に向けた改正要望をとりまとめていきます。市場状況の変化や特定の政策目的に照らして何らかの税の特例措置を設けるか、特例的に認めていた税の減免措置を延長、変更するかなど、その時々の経済状況や社会情勢を反映してたくさんの具体的な要望事項が挙がってきます。こうした各省から上がってきた改正要望はリストに取りまとめられ、財務省のHPに公表されます。(https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2022/request/index.htm)。

こうした何百項目にわたる要望事項を、取捨選択して来年度の具体的な税制改正として決定していく舞台となるのが自民党の税制調査会(「ゼイチョウ」) です。まずは税調の幹部(「インナー」と呼ばれています。)の先生方が議論して、各項目を〇(受け入れる)、×(お断りする)、 △(検討し、後日報告する)、政「政策的問題として検討する」など8分類に仕分けていきます。そして、そのインナーの初期評価に対して、党内の全議員が意見を言うチャンスを与えられるのが「マルバツ」と呼ばれる税調の会議となります。

マルバツ当日は、党本部の入り口にプラカードを持った大勢の陳情団が、支援する議員の方々に「よろしくお願いします!」と最後の声掛け。エレベーターを降りると、9Fのロビーもメディアや関係者がごった返し、お祭りのような異様な盛り上がりです。

冒頭、宮澤洋一会長より、歳入の確保という大事な意義を忘れずに健全な議論をしてほしいとご挨拶。そして、「部会長以外の各議員はご発言は一日一回まででお願いします。」という重要なルール説明。この一回ルールの制限があるため、各議員は自分が関心のある様々な税制改正要望について、議論の推移を見極めながら、どの場面で手を挙げると最も効果的かを見極める戦略性が求められます。ほかの議員が同じ趣旨の発言をしてくれるなら発言をあとに取っておく判断もありえる一方、ここぞと手を挙げても当ててもらえる保証はありません。隣の先輩議員からは、「長い発言よりも、いかに短く論理的に意見を言えるかが大事。役所のペーパーをただ読んでいると思われるとだめ。」と厳しくも温かいアドバイス。

私は、商業地の固定資産税の増額に反対する立場から発言。固定資産税が市町村にとって大事な税金であることは重々承知しているものの、コロナ禍により商店街、観光、飲食・サービス業などの商業地が大きなダメージを受け、新たなオミクロン株などにより地域経済の先行きが不透明な中、固定資産税については昨年に引き続き据え置き措置、または、少なくとも何らかの増額負担の軽減措置を導入すべきであることを強調させて頂きました。松山の大街道でも2017年に比べて地価が7%近く上昇していますが、実際に毎日街を歩いてきた感覚からすれば、パンデミックにより地価が本来の土地の収益力を発揮できる状況には程遠い状況です。私以外にも賛否両サイドから意見が表明され、活発な議論が交わされるテーマとなりました。

「マルバツ」会議のあとも、「政」と評価された重要テーマに絞って議論する「マルセイ」と呼ばれる会議や、その処理案を検討する会議など、重要な税調の会議が短期間で集中的に開催されていきます。企業の賃上げを後押しする税制、住宅ローン減税の延長など、税調の審議過程で政治的注目の集まる論点についても着々と結論が導かれていきます。様々な立場の議員からぶつけられる真剣な意見に、当意即妙に応じながら意見集約を図っていく税調会長の個人的力量もさることながら、膨大な税項目の非常に複雑なコンセンサス形成を可能にするこのゼイチョウという仕組みの完成度の高さに、政治の本質の片鱗を見た思いがしました。

週内にも与党大綱が取りまとめられる予定です。この記事を読んでご興味を持っていただいた方は是非一度目を通してみてください。

追伸:固定資産税については最終的に商業地の負担増に2.5%の上限を導入することで大筋合意に至りました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211207/k10013378671000.html


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