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穂が出たぞ〜

かわいいのうかわいいのう。

これが言いたくて頑張ってきたと言っても過言ではない。
(稲作勉強の為に最初に手をつけたのは「天稲のサクナヒメ」というゲームでした。オススメです。)

私たちが育てている品種「夢山水」の主要産地は弊社よりも2〜300m標高が高い地域です。その地域では7月下旬〜8月初旬に穂が出ますが、この里山では2週間も早く出てしまいました。ちょっと早すぎましたね。来年は育苗からやらないといけないことがよく分かりました。

カメムシご来田

穂が出る前から少しいたのですが、穂が出てからは何かのお祭りなのかと思うくらいに来ています。

クモヘリカメムシです。はじめまして。大型のカメムシで、他のカメムシと比べて細身の体型をしております。成虫はスギなどの針葉樹林で越冬し、イネ科雑草の穂が出ると移動して産卵と増殖をします。その際、イネ科雑草の穂の方が好きではあるのですが、稲の穂も彼らの餌となってしまいます。写真のようにもみ殻にストロー状の口を突き刺して中の汁を吸います。吸われた穂は米に黒い斑点がついたり、場合によっては登熟不完全(しいなやくず米)になったりします。要するに害虫です。

普通ならここで農薬を用いてカメムシを駆除しなければ農業として成り立たないくらいなのですが、弊社には無農薬栽培の縛りがあるので、別の手立てを考えなければなりません。

カメムシさよなら計画

2種類の忌避効果があるらしい有機の液体を撒いてみることにしました。

1つ目は木酢液と呼ばれるもので、木炭をつくるときに発生する煙を冷却して集めたものです。嗅ぐとなかなかにスモーキーな香りがします。この匂いで山火事と勘違いしてもらうことでカメムシに逃げてもらうらしいです。こちらを300倍に希釈したものを使いました。

2つ目は、私が色々論文をあさって見つけたことなので当てになりませんが、カメムシを刺激すると噴出する液体を利用したものです。このくさい匂いは外敵に対する威嚇や防御の効果がある事に加え、周囲の仲間に危険を知らせる「警戒フェロモン」としての役割があります。これを忌避剤として利用してみます。
まず田んぼにいってたくさんカメムシを捕まえます。ひと通り網ですくって周れば100匹以上楽勝で捕まえられるくらいの現状です。捕まえたカメムシを少し水を入れたタッパーに入れてガサガサ振って刺激を与えて匂いを抽出します。これを3回ほど繰り返して20Lほどのカメムシ液をつくりました。

これらの液体を圃場一箇所ずつに撒いて、撒く前と後とでカメムシの個体数を比較しました。カメムシの捕獲は36cm径の網を20回振り、網中の個体数をカウントしました。

…結果

まず木酢液の方ですが、撒く前の個体数は8匹で、撒いた5日後の個体数は26匹でした。あれ?
カメムシ液の方ですが、撒く前の個体数は21匹で、撒いた5日後の個体数は50匹以上でした。多すぎて数え切れませんでした。

惨敗です。撒いている時も感じてたのですが、撒いた直後は2〜3mほど飛んで別のイネに着地するのですが、そこからなかなか飛び立とうとしないんですよね。生命の危機を感じているような動きではないです。ちょっと鬱陶しいなくらいだったようです。つまり無農薬では圃場に侵入されたらもう打つ手がないようです。人力でカメムシを取っていくことも考えましたが、少なくとも稲が受粉する時期に網を振り回してしまうと花粉が詰まった葯を叩き落としてしまうのでやめました。

以上のことから、今年はカメムシに関して白旗を振る事にしました。こんなにも集まってきてしまった原因はいろいろ考えられるのですが、1番はこの里山でダントツの早さで穂が出てしまったことだと思います。少しでも集まれば、カメムシの集合フェロモンの濃度も濃くなることでさらに集まります。お見合いパーティ会場の完成です。当会場は無農薬栽培の良品質の稲を提供させてもらっているので皆様も満足されることでしょう。来年はこうならないよう調整しなければいけません。反省。

最後に一つ言わせていただきたい。


カメムシさん、密ですよ。


おわり。

おまけ

オオシオカラトンボの交尾。青がオス、黄色がメス。

ナガコガネグモと立派な巣。巣の中央のギザギザした所はかくれ帯といって、機能や役割は諸説あり。最近の説だと紫外線光を反射させて獲物を引きつけるためと言われている。

夢山水の花。もみ殻の隙間からひょっこり出ている。なお私イネ科花粉症のためこの写真を撮りに行っただけでつらい。

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