“Woman at 1,000 Degrees” Hallgrímur Helgason (translated from the Icelandic by Brain FitzGibbon) (Algonquin)

『1000度の女』 ハルグリムル・ヘルガソン
(アイスランド語からの翻訳、ブライアン・フィッツギボン)
(アルゴンキン・ブックス)

 ブラックユーモアたっぷりの本作の冒頭、レイキャビク【訳注:アイスランドの首都】のガレージで暮らす80歳の寝たきりの女性は、自身を荼毘に付す予定を立て、自伝を書き始める。
 彼女は熱心なナチスの協力者の娘だった。10歳のときに第二次大戦が勃発し、両親から引き離され、数々のおそろしい仕打ちに耐えた。だが彼女の物語は、史実に基づきながらも、戦時の悲哀を描いたありきたりなものではない。彼女は自分を含めて誰に対しても情け容赦しない。冷酷な恋人だったことにも、子供の面倒をみない母親だったことにも、見境なく世界を旅して回ったことにも悪びれたりしない。
 散文の文体はぎこちなく途切れているかもしれないが、語り手はその見栄えのしない人生を、魅力的にありありと物語っている。

The NewYorker [May 28, 2018]

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