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【私の偏愛】建物と建物との間の隙間

 建物と建物との間の隙間が好きです。

wの名品

 …『ヒジョーにマイナーなのでご存知でない方も多いとはおもいますが、「隙間考学」という学問があります。大正時代の社会学者、今和次郎先生によって発足された考現学(考古学に対しての考”現”学)や、現代芸術家の赤瀬川原平による路上観察学の系譜を引く、かなり新しい学問体系です。(※学術的には「考隙間学」とすべきという指摘もございますが、ここでは私個人が馴染みのある「隙間考学」としてお話しさせていただければと思います。)平たく言えば、建物と建物との間の隙間から、建築学や社会学の領域を横断して、都市のあり方(主に都市景観)などにアプローチをかけていくのが「隙間考学」です。ほぼ水面下での学問研究が続いていたようですが、2008年の夏に、第五次隙間考学会報告会が東京で開催され、これを機に学問として周知されるようになりました。』…という設定を勝手に作ってしまうほど、建物と建物の間の隙間が好きで、好きで、好きすぎて、自らフィールドワークを行い、論文を書き、芸大に提出しました。(←これは本当のこと。)これぞまさに”私の偏愛”。

↓フィールドワーク作成時のファイル。私の宝物。

IMG_1583のコピー

↓全12分類に分けられた隙間写真が、全139箇所掲載。私の宝物。

IMG_1586のコピー


 建物=建築物というものはどんなものでも設計者が必ずいます。それぞれの建物にそれぞれの設計者の意匠意図が働いて二つの建物ができますが、その間の隙間には誰も意識を設けていません。とても強く造形を意識されたものの間に潜む”無意識”が隙間です。言うなれば、都市の中の絶対領域、無意識の”破廉恥”。それが”隙間”です。

 とはいえ、いまいちその魅力がわからないという方も多いと思うので、ここから、隙間分類の全12分類からほんの一部、私のお気に入りをご紹介させていただきます。※出典:「東京都八王子市・エリア1調査—新人スキマニアンの報告」 赤藤 南 2008年

↓コンクリ塀隠蔽型

メイン

↓コンクリ塀仕切型 (道路面の色合いも含めてとても秀麗な隙間)

店舗

↓二段

二段隠蔽

↓看板

メイン

 ビルの高層化や電柱の地下化などにより大都市圏ではこうした隙間がなくなりつつあります。他方で、田舎では家と家のとの距離が広すぎて隙間が発生しません。ヒューマンスケールな街に副次的に生まれる造形こそ『建物と建物との間の隙間』なのです。

 いかがでしょう?ここまで読んでいただいた方でしたら、隙間の奥深さに少しばかり興味が湧いてきたのではないでしょうか?まだまだ隙間に関してはお話したいことが山ほどあるのですが、今日はここまでにしておきます。

続きはまた今度。

湯浅亜木



 



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