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パンプス論争で安倍首相が野党質問に同意。

働く女性にパンプスを着用することを求める慣例は差別だとする「パンプス論争」は、昨年から各方面で盛り上がってきました。石川優実氏のツイッターでの問題提起から始まった「#KuToo」運動の声は、ついに安倍首相の一歩踏み込んだコメントを引き出すに至りました。

3月3日の参議院予算委員会の質疑でのやりとり。

共産党・小池晃氏「職場の服装について、単に苦痛を強いるような合理性を欠くルールを女性に強いることが許されないことは当然です。女性だけに苦痛を強いる服装規定はなくしていくという政治の決意を語ってほしい」
安倍首相「職場の服装について、単に苦痛を強いるような合理性を欠くルールを女性に強いることが許されないことは当然です。男性と女性が同じ仕事をしているにも関わらず、女性に対し服装において、今申し上げましたような、苦痛を強いることがあってはならないということは、明確に申し上げておきたいと思います」

この両氏の発言の後、委員会室は与野党を超えた満場の拍手に包まれたといいます。与党の不祥事やコロナウイルスへの対応をめぐっては激しい批判と応酬を繰り広げてきた共産党の看板議員と首相との関係だけに、まさに“異例”のことだといえるでしょう。

「パンプス論争」をめぐっては以前にも国会で取り上げられたことがありますが、当時の厚生労働大臣の答弁は紋切れ型とても前向きな言葉とはいえませんでした。それからすると、今回の安倍首相のコメントは問題意識を明確にしている意味で一歩前進しているといえるでしょう。



筆者もハイヒールやパンプスを履いたことがありますが、男性としてはかなり小柄で華奢な体型であるとはいえ、地下鉄の乗り換えなどで階段を上り下りすると、それだけで心が折れそうになります。これを事実上の“業務命令”として通年で朝から晩まで履き続けることを思うと、苦痛でまともな仕事にならない日もあるのではと想像します。

この問題について、同じ職場で働く男性の目線は驚くほど鈍感なのではないでしょうか。物心ついたときから、男子と女子は異なる衣服を身に付けるのが当然で、それは社会人になってもまったく同じ。男性がスーツを着てネクタイを付けるように、女性がスカートを身に着けてパンプスを履くのはあまりにも当然と疑問にも思わないのでしょう。

ただ、今では実際に大きいサイズのパンプスもたくさん出回っていますから、試みに男性に着用してもらったらよいのではないでしょうか。筆者の経験では、一般的な体型の男性なら1キロはおろか500メートルも歩いたら根を挙げるのではないかと思います。



「#KuToo」運動の盛り上がりに対して、「男性の革靴もきつい」という声も聞かれます。昨今は夏場のクールビズが定着してきた感が強いですが、それでも男性はせいぜいノーネクタイでジャケット着用が望ましいとか、どれだけラフでも必ず襟付きのシャツの着用が義務付けられることがほとんどです。女性のようにカットソーやTシャツにジャケット、ワイドパンツやサンダルといった軽装が認められるのは、よほどカジュアルな職種に限られるでしょう。

これを機に「パンプス論争」には自由と融和の決着が付けられて、女性であろうが男性であろうがビジネスシーンにおけるドレスコードの自由化が加速することを強く願います。もはや適度なカジュアル化がビジネスマンとしての品位を貶めたりする時代ではなく、むしろ人間それぞれの個性と感度が投影された服飾が表現されることで、その人が綾なす仕事のクオリティーもまた向上していくご時世だといえるように思います。


学生時代に初めて時事についてコラムを書き、現在のジェンダー、男らしさ・女らしさ、ファッションなどのテーマについて、キャリア、法律、社会、文化、歴史などの視点から、週一ペースで気軽に執筆しています。キャリコンやライターとしても活動中。よろしければサポートをお願いします。