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【vol.4】ありがとうを伝えたくて。

12月22日(火)、怪我からちょうど1ヶ月。
約1週間ぶりに病院へ行った。まずは受付を済ませ、レントゲン撮影。怪我から3回目のレントゲン検査だ。
1回目と2回目は2方向からの撮影だったが、3回目は3方向から撮るように指示が出ているとレントゲンの先生に言われた。今までと同じ2パターンを撮り終えた後、「膝を少し曲げてもらわないといけないんですけど、曲げられますか?」と聞かれた。‘とんでもない(驚)!’内心そう思った。案の定、耐えに耐えて先生の助けをもらいながら曲げようと奮闘したものの、撮影に必要な角度まで、というか全く曲がらなかった。膝が曲がらないのでカメラの位置や角度、方向を変えて試行錯誤していただくも、指示が出ていた3パターン目の撮影は難しいようだった。レントゲンの先生が骨折担当の先生に電話で確認をしてくれ、結局2パターンの撮影のみで終わり、診察室へ案内された。

「骨の状態は問題ないですよ。あとは曲げていく練習をしましょう」と言われた。
曲がらない不安はあったけど、いよいよリハビリが始まるのかと思うと、やっと次の段階にいけることが嬉しかった。
そして、左足をピーンと伸ばしたまま、左のお尻が椅子から落ちてしまいそうなほど浅く座っていた私を見て先生が、「ゆっくりお尻を後ろにズラして、できるところまで深く腰掛けてみて」と言った。深く座ろうとすると、自然と膝を曲げないといけなくなるのだが、膝が曲がりそうな状態になると、痛くて左の腰やお尻が反射的に浮いてしまう。先生に押さえてもらいながら再度挑戦するも、膝は10度曲がったか曲がらなかったか、という感じだった。
その後「じゃあ、椅子に座ったまま左足を持ち上げてみて」と言われた。これはできそう、と思ったものの、力を入れているのにうんともすんとも動かない。地にしっかりついた左足は1mmも上がらなかった。
重力。床からとてつもなく強い力に引っ張られているみたいだった。その日何度試してみても、重力に逆らうことはできなかった。

少し沈黙したあと先生が、「うーん、、、。腱に問題がないか、いちお調べてみましょうね。レントゲンじゃわからないので、次回MRI検査をしましょう」と言った。
怖かった。ショックだった。怪我から1ヶ月経っても、まだ悪いところが出てくるかもしれないなんて。感染の心配がなくなり、傷口も少しずつ良くなり、骨も順調に回復している。いよいよリハビリだ!と、つい5分前に喜んだばかりなのに。
骨折宣告を受けた1ヶ月前のように、ガックリと肩を落としたまま診察室をあとにした。

MRI検査の予約を最短で可能な日の12月28日(月)に入れてもらった。1週間後か、、、。果てしなく遠く感じた。良くも悪くも早く結果を知りたかった。‘わからない’状態がいちばん怖かった。
付き添ってくれていた両親も一層心配してくれているのが表情でわかった。「腱がどうかなっていたら、どうなるんだ?」と父が言った。誰もその答えはわからなかった。1週間、時が過ぎるのを待つしかなかった。

考えても仕方ないとわかっていながらも、鬱々としてしまう自分がいた。
不安でたまらなくて、そのことを友達に話すと、「私も足上げられないから大丈夫!筋力が落ちてるだけですよ、それ!」と笑いながら言った。そう言って上げようと見せてくれた友達の足も、本当に上がっていなかった(笑)。
友達が笑っている顔を見ると、思わず自分も笑ってしまう。笑ってしまえれば、なんだか大丈夫な気がしてきたし、もし大丈夫じゃなかったとしても、また治療を受ければいいんだ!ここまで辛い日々を何度も耐え抜いたんだから、もう何だって耐えられるさ!なんて気持ちにまでなってきた、不思議。
本当に私は友達に恵まれている。心配して自分のことみたいに泣いてくれる友達がいる。そして、落ち込んでいるときでも自然と笑わせてくれる友達がいる。ありがとう、本当にありがとう。(私も友達のそういう存在でありたい、、、。)
鬱々どんより顔はこれにて終了。我ながら単純な性格で良かったなとも思いつつ、笑うってやっぱり大事だな〜としみじみ。たとえ‘カラ元気’でも、何でもいいから今はとにかく笑って過ごそうと思った。

12月28日(月)。午前中だけ仕事へ行き、午後は休みをもらってMRI検査を受けた。
何やら狭い機械の中に入れられて、変な機械音がするからと、頭にはヘッドフォンをはめられた。40分ほどの検査中、ヘッドフォンからはずっとMr.Childrenのオルゴール音が流れていたが、頭は腱のことでいっぱいだった。検査が終わり、診察室に呼ばれるのをじっと待った。

「ん〜っと〜、腱は大丈夫みたいだね〜」

診察室に入ると、MRI画像をパソコンでくるくる回転させ、膝周りを360度確認しながら先生が言った。付き添いで診察室まで入ってくれていた母と思わず目を合わせた。ホッとした。肩のチカラがフッと抜けたのがわかった。

さて、いよいよ、いよいよ本当にリハビリがはじまる。
さっそくこの日のうちにリハビリ室へ案内され、担当してくださる理学療法士の先生が現状を確認してくださった。
膝の角度はやはり頑張って10度。そのほかにも、膝周りの神経が全て剥き出しになっているんじゃないかと思うほど、少し指で押されるだけでどこそこ痛かった。前も右も左も後ろも、膝に近ければ近いほど痛みが強かった。
「これはけっこう、、、けっこう時間かかるかもね。しっかり治していこうね、頑張ろうね」と先生が言った。優しい表情で言ってくれたのが救いだった。
痛い痛いと言う私に、「ごめんね」と何回も言ってくれる先生。先生は何も悪くないのに。
先生、ごめんなさい。そして、ありがとうございます。これからよろしくお願いします。

12月28日(月)、リハビリ1日目終了。
リハビリは月曜日から木曜日まで、仕事終わりに毎日行くことになった。ただ、病院が年末年始休みに入るため、次回は1月5日から。休みの間はお風呂で膝周りをマッサージすること、タオルを膝の下に置いて無理のない程度に角度をつけてあげること、そしてなるべく左足に体重を乗せて生活すること、この3つを続けるよう教えていただいた。できれば1日も休まず、病院だけじゃなく家でも、とにかくコツコツ続けて行くことが大事だと言われた。なんだかマラソン練習みたいだな〜と思った。思ったら無性に走りたくなった。

この日から職場でも家でも隙あらばリハビリをした。痛みはちっとも変わらなかったけど、『継続は力なり』だ。
私は走ることでこの言葉が真実であることを知った。初マラソンで4時間を切れなかった日から、毎日毎日走ることと向き合って、その4年後、憧れの大阪国際女子マラソンのスタートラインに立った。この経験があるから、私は『継続は力なり』をこの先一生信じ続けることができる。

リハビリのはじまりとともに、2020年が静か幕を閉じた。

vol.5へ続く。

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