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後悔しないための「失敗」3パターン

2017年前後に書いたブログが、かなり読まれています。

このブログを書いた当時は、確かまだアイデミーの前身となる会社を経営していたか、アイデミーが生まれたての頃です。スケールするようなビジネスのアイディアの種かどうかも怪しく、ある種当時の自分を正当化しながら、もがき苦しみながら書いた記事だった記憶もあります。「エジソンよりも失敗し続ける」というキーワードがキャッチーで、今でも読まれているのかもしれません。

「用心深さ」と「失敗」の両立

その一方、「"失敗し続ける"と言い続ける割には、用心深いんですね」と言われることもあります。僕は、自分自身かなり用心深い性格だと認識しているため違和感は無いのですが、「失敗を恐れない」と「用心深い」は対極の概念に感じられる方もいるようで、相容れないような違和感を持たれるのでしょう。

例えばあの孫正義氏にも、1.7兆円でのボーダフォン買収、10兆円ファンドであるソフトバンクビジョンファンド設立、といった、「失敗」を恐れない挑戦をしているイメージを持っている方が多いでしょう。しかし、あるインタビュー記事によると、孫正義氏の性格は「すごく用心深い」と評されています。

孫氏は本当はすごく用心深い。孫氏の弟で、起業家でもある孫泰蔵氏は、兄の行動原理を絶妙な比喩で説明する。「兄はとても用心深いです。石橋を渡る前に、これでもかというくらいに何度もたたく。ほとんどは渡らない、でも、いったん渡ると決めたら、ダンプカーで渡る」。

日経ビジネス『孫正義「意地でやるヤツはバカだと思え」』より引用
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19nv/120500136/120500005/

孫正義氏だけでなく、僕の身の回りの起業家の先輩の話を伺うと、用心深いタイプの人が多いと感じます。世の中の起業家のイメージは、麻雀で例えるなら棒テン即リー全ツッパを常に貫くような、「猪突猛進」であることが多い(そしてその様子がメディアなどで取り上げられやすい)ですが、実態は、孫正義氏が「7割の勝率があれば突入せよ」(その裏返しである「7割未満であれば突入するな」)と言うように、持ち配とプレイヤーの捨て牌つぶさに見て期待値を注意深く計算しながら、ベタ降りも辞さないような、「深慮遠謀」であることも多い(そして、それは隠すことが多い)ように感じます。

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このように、「失敗(そしてその裏返しにある大きな挑戦)」と「用心深さ」は十分両立できるし、そして両立しないといけないと思っています。そのためには、「失敗」をブレイクダウンして考える必要があります。

「失敗」には3つのパターンがある

「失敗」をブレイクダウンすると、3つのパターンに分けられると思っています。

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「取り返しがつかない失敗」とは、リスクヘッジできない失敗です。家族や知人を路頭に迷わせてしまう、他人に大きな迷惑をかけてしまうなどの失敗を指しています。

「取り返しがつく失敗」とは、リスクヘッジできる失敗です。学生時代に頑張ってアルバイトして貯めた貯金が無くなる、卒業が1年遅れるなどの失敗を指しています。

「何もしなかった失敗」とは、やりたいと思っていたのにできなかったという失敗です。「起業に挑戦したい」と思っていながら、気付いたら挑戦せずに年を重ねていたという失敗などを指しています。「取り返しがつかない失敗」/「取り返しがつく失敗」が、「いま」という時間軸で捉えている失敗であるのに対し、「何もしなかった失敗」は未来方向の時間軸で捉えた失敗とも言えるでしょう。

冒頭のブログで示したのは、「取り返しがつく失敗」は、ガンガンやっていこう、ということです。2年休学して(ご迷惑をおかけした研究室の教授や先輩などには申し訳ないのですが)大学院を中退したり、大学生の時に頑張ってバイトして貯めた100万円を会社の資本金として注ぎ込んだりしたことは、「失敗しても取り返しがつく」と思っての挑戦です。以前、堀江貴文氏と対談した際に、「そもそも失敗という言葉を使うな。部分的成功と表現すべきだ」とフィードバックを頂きました。まさに「取り返しのつく失敗」とは、最終的な成功へ導くための過程であることを捉えた表現だと感じました。

一方、僕は「何もしなかった失敗」と「取り返しがつかない失敗」を恐れています。これは自分自身の人生で捉えても、会社での挑戦で捉えても同じです。この2つの失敗については、絶対に経験しないよう、用心深く石橋を叩いて渡ることを心がけています。

最も恐れているのは「何もしなかった失敗」についてで、「〜〜をすべきだったのに…」「〜〜であることは分かっていたのに足が動かずできなかった…」と後悔することです。

「取り返しがつかない失敗」についても同様です。私にとって人生で取り返しのつかない失敗は特に身近な友人の信頼を毀損することです。会社という組織も、重要なお客様やビジネスパートナーからの信頼を毀損することは取り返しがつきませんし、一定のラインをオーバーする過度な投資などがそれに該当するでしょう。

3パターンで自分の「失敗」への捉え方を整理してみよう

様々な物事を失敗の3パターンで整理するとしたら、どの失敗がどのパターンに該当するのかは、人それぞれの価値観によって変わりますし、時間軸でも異なります。例えば、「1年以内に、5,000万円のローンを組んで、都心臨海部のマンションを購入すること」を皆さんはどう評価しますか?おそらく意見は割れるでしょうし、時間を経ると意見が変わることもあるでしょう。

私も含め、「失敗したくない」というの気持ちは(私も含め)みな誰しも共感してくれることかお持ちだと思います。それを3パターンで整理すると、どの失敗を経験したくないのか、そして具体的な事象を3パターンに当てはめるとそれぞれどれに該当するのか、1年に1回くらい、振り返って考えてもいいかもしれません。


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