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外国語を学ぶ人が絶対にやるべきことpart2〜「聞き流し」は「聞き流す」べし

はじめに:「量をやっても意味がない学習法」とは

こんにちは。翻訳家の平野暁人と申します。先日まで鳥取県は「鳥の劇場」で演劇作品の字幕製作・操作に明け暮れていたらすっかり更新が遅くなりました。

ところで、前回投稿した記事がおかげさまでnoteさんの「おすすめ」に選ばれ、さらに「先週もっともスキされた記事」にも入賞(?)しました。わーいわーい!

この件で改めて実感したのは、日本にはこんなに外国語を学ぶ人がいるんだなということ、そして学習法への関心の高さです。そういう意味でも、「初級のうちは教材や学習法選びに悩まなくていいので、まずは徹底的に量を」という主旨の記事を広く多くの方に読んでいただけてとてもよかったです……が!

実をいうと世の中には「選ぶべきではない学習法」、つまり「いくら量をやってもほとんど意味がないと思われる学習法」も存在します

それはずばり、「聞き流し」系教材

そうです、アレです。いくらなんでもアレはさすがにやめておいたほうがいいと思います。でも、その理由はなんでしょう? 

ダメなものを批判するのは良いものを称揚するよりも負荷が高くて疲れるのですが、約5000人もの方が前回の記事を読んでくださった以上ダメなものについても記しておく責任があると思うので、いっちょがんばって書いてみるぜ。

「聞き流し」教材とはなにか

さて、一口に「聞き流し」といっても昨今は同工異曲の教材がいろいろあるようですが、聞き流し業界(?)の元祖であり最大手といえばやはり「アレ」。みなさんも様々なテレビ、ラジオ、ネットなど広範な媒体で有名人や購入者が体験談を語るCMを見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

「聞き流し」系教材の広告で謳われている学習法は、だいたい以下の通りです。

1. ネイティヴによる録音教材を音楽のように聞き流すだけでよい

2. 併録の日本語訳と交互に聞けばよいので、辞書で単語や構文を調べる必要なし

3. 空いた時間をみつけて1日5分程度聞くだけでよい

4. 継続すればやがて原語で直接理解できるようになり、日本語訳は不要になる

5. 教材のフレーズを少しずつ真似して口に覚えさせ、発音と発話を同時に鍛える

6. 1年続ければある日ふと口から外国語がするする出てくるという感動体験が!

うーん。読めば読むほど魅力的。なにしろ楽。机に向かう必要もなければ忙しい中で勉強時間を捻出する必要もない。ちょっと聞いて真似するのを繰り返すだけで何語でもペラペラになるのかあ。いいなー。た、試してみようかな……。

はっっっ!? いかんいかん。あやうく「楽したい欲」に負けるところだった。

「聞き流し」教材は本当に有用なのか

さてみなさん。上記1〜6にまとめたような学習を続けるだけで、本当に外国語が身につくと思いますか? ある日するすると口をついて英語や中国語が溢れ出し、ネイティヴと楽しく会話できるようになるのでしょうか。

専門家のはしくれとして、はっきり申し上げます!

答えは!!

わかりません!!!

あっ。

まだです、まだ怒っちゃダメですよみなさん。もちろん私にだって納得しかねるところはたくさんあります。

「2. 日本語訳と交互に聞くので辞書必要なし」

→内容がわかってもどの単語がどれに相当するのか、どれが主語で動詞で目的語なのかすら判別できないのでは?

とか、

「4. 継続すれば原語で直接理解できるようになり日本語訳は不要になる」

→それ単に日本語訳の聞き過ぎで内容暗記しとるだけちゃうんか?

とか

「5.教材のフレーズを真似して口に覚えさせ」

聴くだけで真似するのは一部の耳のよい人にしかできない高等芸であって、だからこそ最大公約数の学習者に有効な発音指導を研究する専門家がいるのです。

とか

「6.1年後にはペラペラ」

→1年という数字に根拠がなさすぎるし、単に客単価から逆算して最低1年は継続購入させたら後は解約されちゃってもいいや♡的な焼畑商法なのでは?

とか、だいたいドラえもんの暗記パンだって食べすぎてお腹壊して排便するとリセットされるのにこんな魔法みたいな教材で解決するならいくら日本の文科省がぽんこつでもベネッセよりこの業者を優遇するんちゃうんか? とか本音をいえば書きたい気持ちは山々なので書きました。書くのかよ。はい書きます。はっはっは。

ただ、だからといってこの教材はインチ……効果がないと言い切ることはできないと思います。というか、そういう批判は筋が悪いのではないでしょうか。

だって先方(=教材会社)は「1年は継続してください」と主張してるわけです。ということは、実際に1年はこの教材を使用して(=1年間それなりの金額を払い続けて)検証してみなければ真の効果のほどは判定できないことになります。いや、判定してもいいんですけど、フェアじゃないからなあ(←ここ重要)。

「聞き流し」はどこからやってきたのか

というわけで現時点では「限りなく漆黒に近いグレー」に留まる「聞き流し」教材ですが、そもそもこの手の教材はいったいどこからやってきたのでしょうか。

業界最古参・最大手の「アレ」の創業者氏が自社の公式サイトで語っているところによれば、氏が教材開発に至る経緯はだいたい以下の通りだったようです。

1.英語が話せるようになりたくてあらゆる教材・学習法を試したが挫折した

2.悩んだ末にある同時通訳者に相談したら「とにかくひたすら聞け」と言われた

3.そこで英語の録音素材を吹き込んだテープを自作した

4.その際、すぐに意味がわかるように、英語の後に日本語訳も吹き込んだ

5.3ヶ月ほど経ったころ、話しかけてきた外国人に自然な英語で対応できた

6.しばらくするとネイティヴと長時間会話を楽しめるまでになった

なるほど。世に数多ある「革新的」な教材の定石通り、「聞き流し」もまた創業者個人の成功体験に端を発しているようです。ちなみにこの「開発秘話」には細部が微妙に異なる複数のバージョンがあり、中には同時通訳者が登場しないものまで存在します。教材誕生のきっかけをもたらした恩人がまさかの全カット。なんかもうこの時点でちょっと怖い……。あと、「話しかけてきた外国人」て誰だよ。

ともあれ、すくなくとも創業者氏(長いので以下「S氏』としますね)自身はこの「聞き流し」であっという間にネイティヴと何時間も話しこめるほどの英語力を手に入れたそうです。え、まじすか。いいなー。やっぱ買おうかな。買わないけど。

パスカルと神と詐欺師

さて、みなさんはこの「聞き流し誕生秘話」どう思いますか? 果たしてS氏は本当にそんな夢のような方法で英語を習得したのでしょうか。それとも、売らんかなの一念で嘘八百を並べ立てる詐欺師なのでしょうか。

ここで改めて、専門家としての私の見解を述べたいと思います!

それは!!

わかりません!!!

あっ。

まだです、まだ飽きるのは早いですよみなさん。「またかよ」とか言わないで続きを読んでください。お願い!ここからおもしろくなるから!たぶん!

あのですね、もちろん突っ込みたいところはありすぎるほどあるのです。

「2.同時通訳者に相談したら「とにかくひたすら聞け」と言われた」

同時通訳者養成機関のカリキュラムが「聞く」だけだとでも?

とか

「5.3ヶ月ほど経ったころ、話しかけてきた外国人に自然な英語で対応できた」

→仮に3ヶ月のあいだ英語のニュースを毎日聞き続けて完璧に暗記したとしても道案内ひとつできるようにならないと思うんですけど、いったい誰と何の話を?

とか

「6.しばらくするとネイティヴと長時間会話を楽しめるまでになった」

→私、通訳始めて10年なのに未だにけっこうしんどいんですけど!(逆ギレ

とか。

しかし、です。こうした推論をもってS氏の成功体験が虚偽であると立証するのは不可能だと思います。疑惑はあくまで疑惑であり、他人を詐欺師呼ばわりするには確固たる根拠が必要ですから。

そこで私は、このS氏の体験談を信じようと思います。

信じるのかよ!

はい。信じます。他人の話というものは、明確な反証がない限りとりあえず信じるのがいちばんうつくしいと思うからです。

余談ですが、みなさんは「パスカルの賭け」ってご存知でしょうか。フランスの哲学者ブレーズ・パスカルが提唱した理論なんですけど、ものすごくざっくり言うと

「神は実在するか?しないか? どちらに賭けるか聞かれたら、とりあえず「実在する」に賭けておけ。賭けに勝てば救済されるし、負けても別に失うものはない」

という話です(気になる人はちゃんと本物の『パンセ』を読んでくださいね〜)。

私は、他人の話というのも突き詰めるとすこし「神」に似ている気がするんです。真実のほどはどうやっても確かめようがない。疑えばきりがない。それならいっそ信じて聞いたほうが、みだりに他人を嘘つき呼ばわりするよりずっと健やかな心で生きられるのではないでしょうか。

ただし、どんな話でも信じて聞くためにはひとつ、条件があります。

信じることによって「対価」が発生しないこと、です。

「対価」は何に支払われるのか

先ほど、「パスカルの賭け」を引き合いに出して「どうせ失うものがないなら信じておきましょう」という話をしました。S氏の奇跡的な体験も、

S氏「私はこうして英語を習得しました!」聞き手「へー!すごいなあ^^」

で完結するのなら、なにも失うものはないので問題ないと思います。あくまで特定個人の成功体験を聞いているに過ぎないからです。

ところが、S氏の場合はさらに次のように展開させます;

「私はこうして英語を習得したので、他の人にも同じ方法で習得してもらうためにこういう教材を開発、販売しています!これをやればできるようになります!」

ここに至りS氏は「個人的な成功体験を通して万人に共通する成功法則を発見した」と主張しています。しかも「その成功法則を反映させた万人に有効な教材」を有料で販売している。

つまり、「突き詰めれば事実かどうかわからない話」をもとに「対価」まで要求しているわけです。

こうなってくると、こちらとしてもただ信じるというわけにはいきません。いくら私が大のお人好しでも(ほんとだよ?)、対価の伴う話を信じるためにはどうしても欠かせないものがあります。そうです、「明確な根拠」です。

それに、いくらS氏が自身の成功体験に絶対的な確信をもっていたとしても、不特定多数を相手に販路を拡大しようと思えば自説になんらかの根拠、科学的な裏付けを与えているはずです。

「聞き流し」の根拠は「聞く」に値するか

というわけで、「聞き流し」系教材がどのような根拠を掲げているのか検証するため再び最古参・最大手である「アレ」の公式サイトを訪ねてみると……ありました。「専門家」や「重役」がインタビュー形式で雄弁に語っています。例によって以下にざっとまとめてみましょう。

1. 情報処理を司る左脳ではなく、右脳に音で直接インプットするので効果100倍

2. 右脳に聞いたままをインプットし、その通りに発音するから発音が綺麗に

3. 快感を司るA10神経に作用する構造なのでノーストレスで効率的に続けられる

4. BGMにクラシックがかかっていてf分の1のゆらぎがリラックス効果を生む

5. 赤ちゃんは聞くだけで自然に言葉を覚える。子どもの習得過程を再現した教材

どうですかみなさん。くじけずに最後まで読むことができましたか。とても心配です。なにしろ書いている私のメンタルがほぼ限界です。

ともあれ、上記1〜5に挙げられている「根拠」をみなさんはどう判断しますか?成立していると思いますか? 納得できましたか?

ここで満を持して、専門家のはしくれとしての私の見解を述べたいと思います!

はっきりいって!!

大間違いです!!!!!!!!!!!!

はーーー。

やっと言えた。あーすっきりした。いえーい。

子どもだましに子どもを使う人たち

いやあ、ひとりで勝手にカタルシスを得てしまってすみません。なんせここまでさんざん引っ張りすぎたもので(自業自得)。

さて、ここへきてついに「聞き流し」の根拠は「間違い」と断定したわけですが、はたしてどれがどう間違いなのでしょうか。

右脳と左脳という現代の脳科学ではほぼ否定されている俗信を前面に出しているから? A10神経とかいうのがもっともらしくて逆に胡散臭いから? あげく「f分の1のゆらぎ」とか言い出してむしろ正気がゆらいでいる気配だから?

答えはもちろん全部です……と言いたいのは山々なのですが、ここではあえて、そのあたりには触れないことにします。なぜなら、私に脳科学の知識が全くないからです。自分の知らないことをイメージや風聞だけで判断するのは差し控えるのが、大人として節度ある態度のように思います。えへん(いばる)。

だから、私は私に語りうる項目についてだけ語ることにします。以下の部分です。

5. 赤ちゃんは聞くだけで自然に言葉を覚える。子どもの習得過程を再現した教材

初めてこの主張を目にした時、我が目を疑うと同時に、すごく純粋に、腹が立ちました。お金を儲けるために、こんなデタラメを吹聴するのか、と。

まず、赤ちゃんは決して聞くだけで言葉を覚えているわけではありません。赤ちゃんとは、ひとりでは生命活動を維持することができない超虚弱な幼体です。したがって、快適にサバイブするためには自分を庇護してくれる成体(多くは両親をはじめとする家族、養育者)との間に良好なコミニュケーションが不可欠となります。

(おなかすいたけどおっぱいくれるかな?)(さみしいからだっこしてほしい……)(うんちでたよ)(ティッシュペーパーひっぱりだすのたのしい!)。

赤ちゃんは、自分がサバイブするために重要な情報を必要に応じて泣いたり、むずかったり、笑い声をあげたりと様々な手段で発信します。するとそれを受信した相手が「おなかすいたのかな?」「おむつ変えようね」といった具合に応答する。赤ちゃんは自分に話しかける大人をみつめ、表情や仕草、声のトーンなど全情報を総合して内容を理解しようとする。相手との間に意思の疎通が成立していることを確認する。ほら、赤ちゃんてびっくりするくらい相手の目をじっと見るでしょう? 

赤ちゃんは決して相手や周囲の音を「聞き流し」たりしていません。むしろ赤ちゃんこそ、常に全身で、命がけのインターアクション(お互いに働きかけ合う活動)を行なって、すこしずつ言語を獲得してゆくのです。

それを「赤ちゃんは聞いているだけで自然に言葉を覚える」「赤ちゃんをお手本に考えれば言語学習は聞き流すだけでOK」なんて、よくもそんなデタラメが言えたものです。それなら、枕元で24時間「古今亭志ん朝ベスト盤」のCDを流していたら1歳になるころには高座で「明鳥」や「大工調べ」を演れるようになるとでもいうのでしょうか。名人なめんなよ!

……あれ? 怒りの方向性がずれてきたぞ。いかんいかん。

大人とは赤ちゃんではない

次に、10億歩譲って赤ちゃんが周囲で起きている言語活動を「聞き流す」だけで言語体系を獲得し、話せるようになると仮定してみましょう。そうだとしても、その方法論がそのまま大人に適用できる根拠はありません。というか、できない根拠しかありません。

なぜなら、大人とは、赤ちゃんではないからです。

あっ。

結局また当たり前のこと言った……。

考えてみてください。みなさんは、赤ちゃんと同じだけ睡眠時間をとりますか? 赤ちゃんと同じ食事を摂りますか? 1日の運動量はどうですか?

いうまでもなく、大人(成体)と赤ちゃん(幼体)では身体の発育状況が大きく異なりますから、求められる活動内容も異なります。そしてなにより、機能が大きく異なる。その最たるものが「耳」です。

現在、地球上には7000語近い数の言語があるといわれています。それぞれの言語にそれぞれの発音(ちょっと難しい言い方をすると、「音素」といいます)があるので、自分の母語に存在しない音は発音するのが難しい場合が多い。英語の「L」と「R」の区別などは、日本人にとって難しい音の代表例だと思います。

ただ、現在の言語学研究によると、生後半年くらいまでの赤ちゃんの耳はどんな音でも聞き分けられると考えられています。それが、生後1年前後のあいだに母語で使う音のみを判別する仕様に「最適化」される。それに伴って外国語の音(正確に言うと、母語に存在しない音)を聞き分ける機能が鈍化してくるわけです。

つまり、生まれて間もない赤ちゃんは極めて純度の高い、まっさらで柔軟な耳を持っているんですね。それに対して、大人(ここでは便宜上20歳以上としましょう)の耳は、すでに母語の音の識別に特化した、いわばフィルターのかかりまくった耳。そういう器質的な条件(=耳の性能)の違いを無視し、「赤ちゃんと同じように聞けば話せるようになります」「綺麗に発音できます」と説くのは暴論以外の何者でもないと思うのですが、みなさんはどう思われるでしょうか。

ともあれそんなわけで、繰り返しになりますがこの「赤ちゃんは聞くだけで自然に言葉を覚える。だから語学学習は赤ちゃんをお手本に聞き流せばOK」という主張は大きな間違いであると認定して差し支えないと思います。そしてこのような事実と異なる内容を根拠として喧伝している以上、「聞き流し」系教材の類は(たとえ創業者の成功体験が真実だとしても)信用してはいけないものと考えます。

「聞き流しでペラペラに」なんて話は右から左に聞き流しちゃってください!

おわりに:学問とは公共財である

なんつって、うまいこと言って調子に乗ってたらたいへんなことが発覚しました。なんと、もうすぐ7000字です。もちろん過去最長です。なんということだ。書き始めるときは「今度こそ短くするぞ」って毎回思うのになあ。読む方の身にもなれって話ですよね(反省)。

それにしても、我ながら今回も完全に当たり前のことしか言っていない自覚はあります。みなさんもきっと思ってるんじゃないでしょうか。「なんでこんなに長文で、こんなに当たり前のこと書くの?」「聞き流しがうさんくさいなんて知ってるよ(笑)」「わざわざ批判するほどのことじゃないでしょ」と。

実は、私が採算度外視(つーか無料だしさ)でこんなに本気で「聞き流し」を批判するのには明確な理由があります。それはずばり「他の人がやらないから」です。

いえ、ネットを検索すれば検証記事や批判記事、体験記の類は出てきます。でもそれらは「いち利用者の感想」の域を出ないものが多く、ほとんどが匿名です。つまり「口コミ」の域を出ない。言語を専門に扱う、それなりに名の知れた人が実名で、ある程度影響力のある媒体で批判している記事は見たことがありません。

おそらくそこには、大人の事情がたくさんあります。まず、大手メディアはスポンサー契約、広告料が生命線。したがって大口の広告主が販売している商品を指して「効果がない」などという内容の記事や番組を制作するわけがありません。

そしてまた、言語研究を専門とする研究者や、通訳、翻訳家をはじめとする実務家には、そもそも「聞き流し」系教材が眼中にない、という現実もあります。「あんなものはインチキに決まっているから、わざわざ相手にしても仕方がない」という態度です。

さらにいえば、そうした言語エリートの中には「ああいう商法にひっかかるのは知性の問題」「楽しようとしてひっかかる方も悪い」とすら考えて、「聞き流し」に頼る学習者を小馬鹿にしている人達も少なくないように思います。

そして、そうしている間にも「赤ちゃんは聞いているだけで自然と言葉を覚えますよね? それと同じです!」という誇大広告が、今日も垂れ流されるのです。

でも、あらゆる分野について等しく高度なリテラシーを獲得することのできる人はこの世にいません。私だって、いまは偉そうに外国語学習について書いていますが、ひとたび車の助手席に座れば道路標識もまともに読めません。免許ないもん。

だからこそ、自分がよく知っていることについては正しい知識を積極的に発信し、よく知らない人たちの暮らしに補助線を引いてあげることが必要なのではないでしょうか。おかしいものをみつけたら「あれはおかしいから近づかない方がいいですよ」と多くの人に知らせてあげるべきではないでしょうか。

少なくとも、学問というものは本来、公共財(=世の中の人みんなにとっての財産)であって、学問を積んだ人間はなるべく公益に資するべく振る舞う(=世の中の人みんなの助けになるように努力する)のが使命であるはずです。

だから私は言います。全力で書きます。実名で呼びかけます。「聞き流すだけで外国語がペラペラに」なんてならないと。「赤ちゃんをお手本にした学習法」に高いお金を出すのはやめたほうがいいですよ、と。外国語学習が大好きな人間として、同じく外国語を学ぶ人が、不誠実な商法に傷つけられずに済むように。

私は無名ですし、noteがどのくらい影響力のある媒体なのかはわかりませんが(noteさんごめんなさい)、前回の記事のPVが約5000人に達している以上、こうして書くことで、すこしは公益に資する発信になるのではと期待しています。

あーあ、最後は思わずまじめな話ばっかりして肩こっちゃった。ここまで読んでくださった皆さんも勇者です。もはや戦友です。でも、今回はいつにも増して長くてくどい自覚があるので、あんまり面倒なら「スキ」だけぽちっと押して聞き流してやってください。

そして次回こそは短……なんでもないです。

平野暁人

追記:「スキ」を押すとちょっと楽しいことが起こるようにしてみました☆



訪問ありがとうございます!久しぶりのラジオで調子が狂ったのか、最初に未完成版をupしてしまい、後から完成版と差し替えました。最初のバージョンに「スキ」してくださった方々、本当にすみません。エピローグ以外違わないけど、よかったら最後だけでもまた聴いてね^^(2021.08.29)