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食べくらべ

私は、ポテトサラダが大好きです。
自分でもよく作りますが、お店で食べるのも楽しい。

レストランや居酒屋には、だいたいおいてあります。
材料は一緒でも、それぞれ味が違うので面白い。

以前、ふらっと入ったお店で食べたポテトサラダが、すごく美味しかった。

そのお店は、カウンターと4人がけのテーブルが二つくらいなので、すぐ満席になってしまいます。
私は一人ですから、混んでいても何とか入れました。
もちろん、カウンターです。

おしぼりで手を拭きながら、壁に貼られたお品書きを読みました。
白い紙に書かれたメニューの中に、一枚だけ黄色い紙があります。

ポテトサラダ 
食べくらべセット 5種盛り 1,000円
単品でもOKです。 一皿 300円

ポテトサラダの食べくらべ?初めてです。

改めて、内容を確認しました。
1.定番ポテトサラダ あらごし

2.定番ポテトサラダ マッシュポテト

3,タラモサラダ たらこ入り

4,フルーツポテトサラダ りんご

5,フルーツポテトサラダ バナナ

種類が多いような、少ないような、微妙な感じです。

ウーロン茶と一緒に、注文しました。
突き出しは、冷や奴に生姜とおかかをかけたものと、枝豆。
夏らしいメニューです。


「はい、お待たせ」
元気の良い声と同時に、厨房からお皿を渡されました。
丸い大皿に盛られた5種類のポテトサラダは、結構迫力があります。

1番のあらごしは、じゃがいもの食感が強い。粒が残っています。
きゅうり、人参、ゆで卵にハム。食べ応えがばっちりです。

マッシュポテトは、舌の上で溶けそうなくらい、滑らか。
コクと甘みが感じられました。

「もしかして、バターを使っていますか?」
マスターは一瞬目を見開き、にやりと笑いました。

「惜しいね。練乳だよ」
「え?練乳?」

「コクと甘みが出るからね。バターはタラモサラダで使ってるから、マッシュは練乳にしたんだよ」

タラモサラダを口に入れると、たらこの塩気とバターの甘みがきいて調和力が抜群です。
私は飲めませんが、お酒にぴったりだろうなと思いました。

「フルーツ入りも珍しいのに、2種類あるなんてすごいですね」
「りんごとバナナは、食感がちがいすぎるだろ?りんごは歯ごたえがあるから、あらごしの方がいいし、バナナは柔らかいからマッシュじゃないと浮いちゃう。だから分けたんだよ」

食べ比べると、その違いがはっきりします。
りんごのシャキシャキ感は、粗く潰したじゃがいもにぴったり。
自己主張しながらも、チームになっている、という感じです。

マッシュポテトでくるまれたバナナは、甘さがほどよく抑えられていました。ぎりぎり、おかずに踏みとどまっています。

「これだけ用意するのは大変でしょう」
「タラモサラダ以外の具は、ほとんど同じだからね。あとは潰し方の違いだけ。そんなでもないよ」

私が一番気に入ったのは、マッシュポテトです。
自分で作ると、潰すのが大変なので、ついあらごしになってしまう。

マッシュポテトを単品で追加注文して、マスターとのおしゃべりを楽しみました。

このお店はもうなくなってしまいましたが、ポテトサラダを作るたびに思い出します。

おいしい記憶は、いつまでも印象に残りますね。

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