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#Designship2019 day1 ストーリーフロア ダイジェスト

Designshipとは

「業界の壁を越えた、日本最大級のデザインカンファレンス」

日時:2019.11.23(Sat.) - 11.24(Sun.)
場所:東京国際フォーラム B7・B5
公式ページ:https://design-ship.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/designship_jp

オープニング

・去年より人数約3倍
・ストーリーフロアとコラボレーションフロアの2フロア体制
・"物語の力で「デザイン」の壁を超える"が今年のコンセプト

Togetter:https://togetter.com/li/1434165

医療の当たり前をアップデートする「道具」としてのAIのデザイン / 畠山 糧与

病院で働く医師は患者を診る以外の時間も忙しい。原因としてカルテなどのペーパーワークがある。患者と向き合う時間を確保するため、Ubieは「AIによる事前問診」という策を打ち出した。AI問診ではAIが患者の回答に合わせて質問を動的に変更するため、紙の問診より深い情報が得られる。これにより初診問診時間は1/3に削減された。

医療の多くには運が作用している。医師にも過去の経験がなかったり、日々アップデートされる最新医療情報を追いきれなかったり、認知バイアスから逃れられなかったりする。ここで熟練者と非熟練者について考えてみる。熟練者は行動経済学で言うところの直観的思考と分析的思考を上手に使い分けられる。それは、今までの経験から頭の中に「地図」が存在しているから。Ubieでは可能性のある病気のリストを提示し、「病気推測による地図づくり支援」を行うことにした。

あるドクターにユーザインタビューした時のこと。当時は病名だけ医師に提示しており、医師は自分の経験を踏まえてどう評価・解釈していいかわからないという状況に陥っていた。自分が疑った病気の範疇にない病名が提示された時、なぜそれが候補に出てきたのかがわからなかった。「なぜ」に答えられないAIは、道具として使うことが困難になる。そこでAIが推測した理由を添えることで、解釈できないAIから解釈できるAIに変わった。

AIは様々な文脈で語られるが、「人格」としてのAI、「道具」としてのAIがある。Ubieは「道具」として見ている。その際、ヒトも「道具」としてのAIも完璧ではないという立場に立つことに気をつけている。

Togetter:https://togetter.com/li/1434168

ブランディングデザインのはじめかた - デザインと経営の新しい関係 - / 西澤 明洋

ブランディングデザインは目に見えるデザイン全体のことで、広告やパッケージだけに留まらない。ブランディングはふんわりとした状態だとうまく進まない。ブランディングの定義からすり合わせ、他との差異化を図り、お客様に伝える。

ブランディングとマーケティングは異なる。マーケティングはどうやったら売れるかを考えるもの、ブランディングはいかに伝えるか、いかに他に伝えたくなるかを考えるもの。ブランドに必要なのはトップの熱い思い。伝言ゲームの最初の人の伝え方が重要。加えて、良いモノとコミュニケーションチームも必要。

ブランディングデザインにはMCCの三階層がある。ロゴや広告などのコミュニケーションデザインはブランディングの一部でしかないし、差異化能力としては一番弱い。上の階層にはコンテンツデザインやマネジメントデザインがある。マネジメントデザインは重要で、コンテンツを生み出す戦略を考えたり、隠れた経営の強みを引き出す役割がある。これら全て一貫して考えるのがブランディングデザイン。デザイナーはここにも関わるべき。サービスや商品をデザインするのは当然で、経営をどれだけ可視化できるかが重要。いわば「経営のデザイン」。

これからのデザイナーにはデザイン力だけでなく経営リテラシーも求められる。経営者が言っていることを理解し、それを具現化する力が必要。逆に、経営者にもデザインリテラシーが求められる。デザインが経営資源となって初めてブランディングが生きる。ブランディングは鬼に金棒を作るような仕事。元気な鬼みたいな経営者に武器をもたせる。デザイナーはかっこいい金棒を作ることに集中しがちだが、持ちやすい道具を授けることが重要。

Togetter:https://togetter.com/li/1434170

ARグラス時代における、空間体験デザインとは / 本間 悠暉

通信容量の拡大やAI技術の発展などにより、ARがキテいる。ARによってフラットな情報を立体的にして現実世界に当てはめられる。

スタートアップでの成長はワクワクする方へ、ロードマップを引いて、スキルをかけ合わせて磨くことが大切だと思っている。ワクワクを原動力にし、サービスデザインの領域を積み重ね、BTC領域を越境する人材になる。

空間体験デザインをするにはゴールを定義し、解くべき問題を明らかにしてからアイディア出し、プロトタイプ作りをする。この中でAR特有のプロセスがいくつかある。①バックキャスティング思考。現在のデータから未来を予測するのではなく、遠い未来を想像し、そこから近い未来を逆算してアイディアを考える方法。ARのような技術が指数関数的に発展していくものに関してはバックキャスティングの方が有効に思える。

②リアリティシーケーンス。三次元のARサービスを作る時の課題は、ラフな段階でどうイメージを共有するか。そこでリアリティシーケンスとリアリティスケッチを活用する。リアリティシーケンスではスクリーンベースではなくシーンベースでユーザ体験を定義。UIも含めて現実環境を描く。

③グラスUIデザインのはじめ。ARでは従来のディスプレイに閉じない情報配置を考える必要がある。自分からどれくらい先にオブジェクトを配置するかも含めてデザインする。

④表現のチーム共有。ARは言葉や絵で伝えきれないことが多い。なのでチームみんなでARアプリを使ったり、Pinterestのインスピレーションボードを共有して感覚を共有した。

Togetter:https://togetter.com/li/1434171

メーカーにおけるデザインエンジニアの役割とラピッドプロトタイピングについて / 川島 大地

エンジニアは1つの領域に特化して突き詰める人。一方デザインエンジニアはテクノロジーとクリエイティブが担当領域で、デザイナーとしてもエンジニアとしてもアウトプットできる人。以前デザイナーと協力してFUKASE NO OWARIというものを作った。

何かを実装するための幅広い知識はレゴのマインドストームが原点。思いついたらとにかく作っていた。これに出会えていなかったら今の自分はない。おかげで理系脳になり、大学は理工学部のシステムデザイン工学科へ。社会人の最初のキャリアはサーバサイドエンジニア。が、ユーザから遠すぎるのが嫌だと感じた。個人プロダクトもやったが、もう少し普段の生活の中で使われるものを作りたいと思い、転職を決意。自分以外全員デザイナーの会社へ。自由な発想で企画し、ユーザ視点でアイディア出し、プロトタイプ作りをした。作ったものの一つに、対象物に向けるとそれが何か教えてくれるPA!GOがある。プロジェクター機能もあり、子供が撮った写真を家族に共有することもできる。ラピッドプロトタイピングで、最新技術を取り入れつつも技術が古くならないうちに短時間でサイクルを回した。これはデザイナーとエンジニアが越境してワンチームでやっていたから実現できた。イノベーション成功の鍵はプロダクトをアウトプットできる幸せ。

Togetter:https://togetter.com/li/1434173

パネルディスカッション:『イノベーションとデザイン』田久保 善彦 × 田川 欣哉

イノベーションとデザインの関係、これから求められるデザイナーの姿についてのパネルディスカッション。

BTCとはBusiness、Technology、Creativeのこと。大学で言うとBが文系、Tが工学部、Cが芸術系。なんとなく世の中はBTCで分かれている。ではBの人がTをやったらいけないのかと言ったらそうではない。今は環境の変化が早く、BTCの中間領域の人がやらないといけないことが増えてきた。

時代の影響で、今は越境型人材が必要。技術が飛躍する(パラダイムが変わる)とBTCの領域がシャッフルされるので前のやり方を引き継げず、再整理する人、境界の人が必要になる。安定期だと越境型は必要なくなる。

今はDtoCの流れが大きく、最初から最後へのプロセスを作るためにデザイナーが増えている。きちんと全体をブランディングしないと途中でやめられてしまうサブスクリプションでは特に大事。

越境型デザイナーになるには、5〜10年の長いスパンで考えてみる。専門職として5年と5年をかけるイメージ。難しいところを乗り越えてこそ成長できるので、それを経ないで次へ行くのはもったいない。1つを深めてもっと突き詰めたい人はそのまま進めばいいし、他にジャンプしてもいい。いきなり大ジャンプは難しいので、半歩ずつ、小さなジャンプを繰り返す。どちらに進むにせよ、意図を持って行動するのが大切。

越境型デザイナーを目指す人は、どうやって生きていくのが自分にとって一番いいのか、時々立ち止まって考えてみると良い。世の中技術がこれだけ変わっているのだけら、定期的に見直さない方がおかしい。

教育者たちは今明確に定義されていない仕事をやる人を育てる必要がある。人は自分は何者なのか不安になると肩書をつけて安心しようとする。とはいえ今は変革期なので名前のない職業に就く可能性は高い。世の中の進歩は名前のない領域に行ってこそ発展していく。名前がないのであれば自ら名前をつける。そうすることで箱が生まれる。自分の立ち位置がモヤッとしていてもいい。それが未来の羅針盤になる。もやもやの先が10年後のスタンダードになったりするので、うまく扱ってほしい。

Togetter:https://togetter.com/li/1434175

“世界初”を支えるデザイナーが考えること / 北村 崇

現在popIn Aladdin(プロジェクターとスピーカーがついたりーリングライト)に関わっている。このチームは内部のデザイナーがおらず、外部のデザイナーと海外の開発チームがいた。この船頭がいないチームに自分が入った。このプロダクトは世界初なので説明が難しい。機能を説明してもわかってもらえず売れない。このような時にブランディングが大事。使い方やコンセプトを伝え、日常の中で使っているイメージを持ってもらう。

開発中いろいろやりたいことが溢れ出てしまうが、「あったらいいな」はいらない。シンプルにすることが大事。「使いやすい」「便利」は当たり前で、popIn Aladdinだからこそできる体験を作るのが重要。ハードを作ることが目的ではない。

一人デザイナーとしての悩みもあった。マイクロインタラクションなどが重要なプロダクトなので、社外デザイナーからビジュアルデータだけ来ても困る。また、海外開発チームから「アプリ作ったからデザイン変えて」と言われることも。そこでプロトタイプを作るようにした。当たり前のところから整備していくのも社内UX改善の仕事の一つ。

デザイナーというとグラフィカル寄りかUX寄りかという話になりがちだが、一つのブランドを表現しようと思うと両方できないといけない。頭で整理して、手で表現できるようにしていきたい。世界初を支えるデザイナーが考えることは、「当たり前のデザインで新しい体験を作る」こと。「それ」を使っていた思い出が呼び起こせるようなプロダクト、サービスが作れるようになりたい。

Togetter:https://togetter.com/li/1434180

月間5,400万人を支えるユーザ体験への想いとその現実 / 宇野 雄

クックパッドはレシピの会社ではない。クックパッドが本当にやりたいことは、「毎日の料理を楽しみにする」こと。とはいえ現実は厳しく、毎日の料理が苦痛になることも。では苦しみがない状態、便利な状態が楽しいかと言ったらそうでもない。

自分は「優しいデザイン」と「おせっかいなデザイン」という概念を使ってデザインをしている。「今月は10回も料理したよ」という表現は悪いわけではないが、捉え方によっては残りの料理をしなかった21回を可視化してしまい、辛い思いをさせてしまう。これを「今まで10回も料理した」という表現に変えると、料理をしたということのみ伝えることができる。

「作った料理を自動で保存」機能は便利だが、あえて「作りたい料理を自分で保存」とさせることがある。能動的な行動により、毎日の達成感を得ることに繋げられる。「おせっかい」は時としてユーザファーストと対立するが、あえて面倒なことをしてもらうこともときには必要。

期待値を上回る体験を提供することが何もよりも大事。例えばハンバーグのレシピが知りたい人に対して、一番の人気レシピを提供するだけでは面白くない。実は同じ食材でキーマカレーが作れることに気づき、いつの間にかキーマカレーを作っているというのでも良い。このようなことを、押し付けでなく自然に体験して楽しくなってもらえるようにしたい。見えているものではなく、その先の未来を一緒に叶えたいと思っている。

自分にとってデザインは、物語を描くことであり、それを具現化すること。作ったものを日常的に使ってもらうことで人生を変えることはできるし、デザインにはその力があると思う。

Togetter:https://togetter.com/li/1434188

共創デザイン(和の心)で創る、ブランド戦略 / ウジ トモコ

伏見稲荷はワンカラーなのに人気がある。それは鳥居の中をくぐるという体験をしたいから。ある日、若いデザイナーに「フォントを制限されたら自由にデザインできない」と言われたことがある。が、自由に出来ない「制限」があるからこそ、決まりを打ち破るパワーを生み出すことができる。

以前は「和の心」と聞くと「平和、仲良し、公平」だと思っていた。が、例えば着物の場合は着物自体が偉いわけでも帯が偉いわけでもない。組み合わせ次第で様々な雰囲気を出すことができる。この考え方がブランディングにも生きてくる。我々には様々なサービスやパートナーシップが存在する。強烈なリーダーシップを取る人がいてそれを形にする王様的なブランディングのやり方もあるが、「誰が偉い」などに関係なく、自分でポジションをとって全体を巻き込むことで無限の可能性が生まれることもある。

制限はクリエイティブの神。今の日本は少子化だとか経済が発展してないとか言われているが、そうした制限に立ち向かえるのがデザイナー。制限は革命を生む。いろんな抑圧に負けないことこそが和の心ではないかと思う。

Togetter:https://togetter.com/li/1434193

スポンサーセッション:FJORD

FJORDはロンドンで創業されたデザインエージェンシー。人々の生活体験を向上させて、その先にある企業価値を上げることを目的としている。今日はデザインの役割が変わってきているのではないかという話をする。

近年あらゆるものがデジタル化されて導入コストが下がっている。それにより業界破壊が起こっている。業界破壊を語る上で欠かせないのがジョージ・ホッツ。自動車の自動運転ができるキットを販売し、個人の力でテスラを破壊するようなビジネスをしている。

今は頭の中で「できたらいいな」と思っていることがだいたい実現できる。一方、人間の習慣はテクノロジーのスピードについていけてない。テクノロジーを自然に生活の中に取り入れるにはデザインの力が必要。

カーニバルの豪華客船案件では、体験をデザインした。乗客には乗船券、財布、ルームキーとして使えるリストバンドを付けてもらい、体験をシームレスにした。

NGO団体とカンボジアの社会問題を解決した例もある。字が読めない、金融サービスのシステムがわからないがために銀行口座を持っていない人が多数おり、家計管理が杜撰になっていた。そこで字が読めない人でも直観的に使えるデザインのものを作った。

Togetter:https://togetter.com/li/1434196

コンテンツを(もっと、よく)デザインしたい / 有馬 トモユキ

今までに、例えばさくらインターネットのデザインを担当した。ロゴ作成に留まらず書体作成を行い、「この書体はさくら」と思える状態にした。他にも渋谷のビルの広告やパッケージデザインを行った。ガンゲイル・オンラインではVIの知見が生きた。ロゴはスタンプとして終わらせない。サーモンピンクをアイデンティティにし、コンテンツのキーにした。

コンテンツにはいろいろな領域がある。「わかりやすい」とは違う深いアイデンティティを作ることもできる。ロボットアニメが好きならメカメカしたものが好きというわけでもないはず。真に感情を喚起させるものは何なのか考える。

昔はWebの会社にするか印刷の会社にするか悩んだことがあった。が、そんなことに悩むのはおかしい。今では幅広く手掛けたいと思っている。

ACE COMBAT 7ではオリジナル書体を作って広告やムービーに使った。デザインというよりもツールや演技を作っていたり、物語に参加するイメージ。書体があるとデザインガイドラインがなくても、「なんとなくそれっぽい」を表現できる。VIマニュアルよりも強力で、「異なるもの」になってしまうことがない。直観的なコラボレーションの次を考えるのもデザイナーの仕事。

Togetter:https://togetter.com/li/1434198

失敗こそクリエイション / 望月 重太朗

以前、すでに世の中にある技術を応用して新しい体験を生み出すR&D部に所属していた。例を出すと、広告デザイン案件ではクライアントに対して「ブロックチェーンを使ってみましょう」などと新しいものを取り入れようとしても、「事例がないとなんとも…」と言われることがある。ここで新しい領域を広げるためにはプロトタイプでアイディアを可視化する。クライアントから来たボールをただ打ち返すのではなく、どこに投げるか一緒に考える。

致命傷の手前でチャンスを生むしくじり方について。まずは、とりあえず形にしてみると良い。バックキャスティング思考では遠い未来から現在を見て仮説を立て、少しずつ形にしていく。プロトタイピングで試して、世界を広げていく。とはいえ失敗を予測しつつ形にしていかなければならない。

何かを成し遂げようとしても、何も準備していないと取れる選択肢が少なかったり、やばい失敗の沼にハマって先に進めない。失敗を予測して今を見返すことが必要。失敗が起きるのは準備、スキル、リソース、時間が足りなかった時。失敗しそうな要因を見つけて、チャンスに変える要素を見つける。前に進めるフラグが立ったら前に進む。使えなかった仮説も出てくるが、別の機会に使える「いい失敗」になる。これが失敗のバックキャスティング。この考えは、自分が国際カンファレンスに登壇するときにも役に立った。「とりあえず形にしてみる」は、世界を拓く。

未来へ向けて歩く時に重要なのは、自分基準であるということ。最終的な視点は、誰かがもたらしてくれるものではない。未来基準であることも重要。賞などの過去が基準になると単にその時点で良かったものしか見えない。それならまだ見ぬこれからを基準に置く方が良い。多様性に富んだ異能チームも良い。自分が知らない視点を入れてみることによって新しい道ができる。

失敗は挑戦。失敗はいろいろなギフトをもたらしてくれる。

Togetter:https://togetter.com/li/1434200

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