見出し画像

父という光

今日はなんか疲れてしまって、夕ご飯を自分で用意する元気もなく、このご時世なので少し申し訳なさを感じながらスーパーに出来合いのご飯を買いに行くことにした。

20時ごろ。買い物を終えて、もうそんなに人もいない、藍色に包まれた夜の道を歩く。

ふと空を見ると、煌びやかに輝く小さな星がひとつ見えて、お昼頃に電話で母に言われたことを思い出した。

「昨日お月様見た?スーパームーン綺麗だったよ」

私は最近情報を遮断しているので(コロナのニュースに疲れてしまって自衛している)昨日がスーパームーンだなんて何にも知らなかった。

大きいお月様、見えるかな、と空を見上げて歩くが、何せここは東京。周りの建物が高くて空が見える範囲が狭いのだ。なかなか見えなくて、でも見たくて、家までの道を少し遠回りした。


上を向いて月を探していたら、小さい頃に父と2人、家の庭で夜空を見上げた思い出が蘇った。実家の隣は田んぼ、いわゆる田舎だ。だから、上を見上げなくたって空は目の前に広がってるし、星はもう数え切れないほど見える。綺麗だったなぁ、父と見たあの時の空。たしか流れ星も見たっけな。


今日私は、父に対して電話で良くない態度を取ってしまった。父はあまり気にしていないかもしれないが、私は少し後ろめたい。

父は私に、地元で就職して欲しいと思っている。私が大学進学で東京に行く時も、「東京は大学4年間だけだからな、4年したら帰ってくること」と父は言った。私も最初はそのつもりだったが、3年も経つと気持ちは変わってくるものだ。東京で就職したい、私は今、そう思っている。

就職活動をしている今、私は両親にやんわりと反対されながら東京で暮らしている。東京で就活をすることを頭ごなしに反対はしないものの、地元での就職を前面に勧めてくる。

そんなこんなで私は、父になんだか素直になれず、今日も電話であまり良くない態度をとってしまったと思う。父が私にしてくれることは、全て私を心配してのことだとわかってはいるけど、21歳になってもまだ少し頑固で反抗心の抜けない娘でごめんね。




父と見上げたあの日の夜空が、なんだかとても恋しくなった。


春の柔らかな風を感じながら、都会の夜空に父の光を探した。

結局、大きな月は見えなかった。


もしよろしければサポートをお願いします!いただいたサポートはこれから自分を素敵に鮮やかに建設していくための工事費用にいたします。