ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第8章1話

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第8章 招かざるモノたち

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1話

 陽太のベッドの傍に、朝になると「ピピピピピピ!」って騒ぎ出す小さな箱がある。『目覚まし時計』って呼ばれてるそれが、いつもの時間に大騒ぎしない日。それは、陽太がガッコウに行かないで、ずーっと家にいる日ってこと!
 わーい! 今日はずーっと陽太と一緒にいられるのね!
 今日はいっぱい遊んでもらおうっと。
 芽雨さんに言われた「ただのペット」なんて言葉、忘れちゃうくらい、思いっきり遊んでもらっちゃうんだ♪
 ああー、楽しみ!
 でも、慌てちゃだめよ、ミャオン。まずは朝ごはん。それから、身体をキレイにして……陽太の朝の支度が落ち着いてから。
 陽太も朝ごはんを済ませて、部屋に戻ってきてくれた。
 いつも、それから机に向かって何かゴソゴソするの。シュクダイっていうやつかな? そうじゃない時もあるし、本を読んでる時もある。その時の気分で変わるのかも。
 そして今日は……考え事をしているみたい。
 どこを見てるのかしら? どこも見てないのかしら。
 疲れたようにため息をついたと思うと、眉毛をハの字にしたり。エヘへッて笑ったかと思えば、今度はまずいものを食べたみたいな顔をしてる。
 陽太の考えていることって、その顔を見ればすぐにわかっちゃうのよね〜。
 そんなところも大好きなんだけど! うふふ。
 さて、そろそろいい頃かしら。
 私はお気に入りのネズミのおもちゃをくわえると、陽太の足下にコロンッと置いた。
 そうして待つ。
 陽太が気が付いてくれるまで。
 ――ううん。待てにゃい!
 ねえ、陽太! 一緒に遊ぼう!
 私は陽太の足にスリスリと顔をこすりつけた。
 遊ぼう! ねぇ、楽しいことしよう!
「ん?」
 あっ、気が付いてくれた!
 遊ぼう、陽太! ね? せっかくのお休みだもの!
 陽太はネズミのおもちゃを拾い上げてくれた。
 私はきちんと座って待つ。その瞬間を。
 来るわ……来るわよ!
 陽太はネズミのおもちゃを持った手を、ゆっくり何度か振って――。

 ぽーい!

 来たわぁぁ〜〜!
 私は投げられたおもちゃに飛びつく。
 ビシビシッとパンチしてから、またくわえて陽太のもとへ。
 足下に置くと、また陽太はそれを拾って、今度は何度も何度も腕を振ってから、ぽいっと投げる。
 私はそのたびに追いかけては、パンチ、パンチ、パンーチ!
 それからくわえて、また戻る。
 今度は? 今度はどこへ投げてくれる?
 陽太の手に注目!
 すると今度は一回で、すぐにぽいっと投げられちゃった。
 んもー! そうやって予想外のことするから、陽太と遊ぶの大好きなの!
 私が慌ててネズミのおもちゃを拾いに行くと――。 
「ごめんね、ミャオン。今はあんまり遊べないんだ」
 陽太はそう言って、立ち上がった。
 え……もうおしまい? そんなことないよね? まだ遊んでくれるでしょう? 今日は一日一緒にいられるんじゃないの?
 私は急いで陽太のもとへ、おもちゃを運ぶ。
 けれど、陽太はもう遊んではくれなかった。
「あのね、宮尾くんと三ヶ田さんを探しに行かないといけないんだ。用が済んだらすぐに帰ってくるから。そしたらまた遊んであげるね」
 ……え。宮尾くんって……それって、『カミカミ』を食べた私のことよね?
 じゃあ、三ヶ田さんって誰のこと? 初めて聞く名前だわ。
 新しいお友達?
 陽太はせっせと身支度を整えると、私の頭をよしよしと撫でてくれて、そのまま出かけていっちゃった。
 ――あーあ。つまらないの。
 私はネズミのおもちゃをぽてっと床に置く。
 ――退屈。
 寂しいよ、陽太。
 宮尾を探しにいってもムダなのに。
 私はここにいるのにな。
 そうよ、私、人間になる必要なんてなかったの。一緒にいられればそれだけで充分幸せ。
 だからもう『カミカミ』はいらない。
 わざわざおやつを残したりしなくても、もういいの。
 そう決めたのに。
 陽太は私を――宮尾を探してる。どこにもいない宮尾を。
 そう考えると、居ても立ってもいられなくて。
 また『カミカミ』をグレースに買ってきてもらおうかしらなんて思っちゃう。
 私がチラッと窓の方を見ると――。
 そこにはグレースがいた。スノウさんも、クロエさんもいる!
 モノクロさんたちが遊びにきてくれたわ!
 私は一目散に窓辺へ駆け寄った。
「よう、ミャオン!」
「こんにちは!」
「なあなあ、今晩、ヒマか?」
 もう待ちきれないっていう調子で、グレースが聞いてくる。
「今晩? 夜は、陽太と一緒にゴロゴロするつもりだけど」
「あのね、集会があるの」
「集会?」
 それってなあに?
 クロエさんはニコニコと微笑みながら教えてくれた。
「今夜は満月でしょう? 満月の夜はご近所の猫たちが集まることになっているの」
 満月って――?
 私が頭に『はてなマーク』を浮かべているのを、スノウさんはすぐに気づいてくれた。
「空に浮かぶ黄色いモノがあるだろう。毎日形が変わっていく、あれを『月』って呼ぶらしい。そしてあれが真ん丸になる日がある。それが『満月』だ」
「ああ……!」
 昼間は白いのに、夜になると不思議に光る、あの小さなモノ。
 あれって『月』って呼ぶのね。覚えておかなきゃ。
「満月の夜は、猫たちが集まって、日頃の色々なことを話し合うことになってるんだ」
「わぁ……面白そうですね!」
 モノクロさんたちは、みんなにっこり頷いた。こういうところは息が合ってて、ああ、きょうだいなんだなって思う。
「ミャオンも一緒に行こうぜ! 案内してやるからさ!」
 グレースは目をキラキラ輝かせてる。
 その様子からいって、とても楽しいことが待っているって伝わってくる。
 ――うん。とても面白そう。だけど。
「ごめんなさい、行けない」
「え――どうしてだよ? あっ、外に出られないからか?『カミカミ』がないなら、またおいらが買ってきてやるけど」
「ありがとう。でも『オダイキン』もないから……」
「そうなの……残念ね」
 クロエさん、寂しそう。
「『店』にも顔を出したことだし、集会デビューするにはちょうどいいと思ったのだけれど」
「集会デビュー……」
 なんだか、かっこいい響き。すてき。
 本当はね、本当は、行きたいの。行ってみたい。
 けれど、私は『家の中にいるのが一番安全だ』って陽太は言うの。
 大好きな陽太がそう言うから、私はもう外には行かない。
 それに、行ったら陽太が叱られちゃう。迷惑かけちゃう。泣かせちゃう。
 そんなの、いや。
 だから――。
「…………わかった」
 スノウさんは私をジッと見て、それから静かに笑った。
「ミャオン。今夜、この庭を少し借りるが、構わないか?」
「――え?」
「二次会、ここでやることにしよう」
「!!!」

 かくして――。
 その日の夜、陽太も、ママさん、パパさんも寝静まった頃。
 真ん丸の月が見下ろす大林家の庭に、ご近所の猫さんたちがたくさん、たーくさん集まってくれたの……!
 私は窓ガラス越しに、スノウさんに「ありがとう」ってお礼を言った。

                         <2話へ続く>

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ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第8章1話

堀井明子

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堀井明子

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シナリオライターの端くれ。日本脚本家連盟・放送作家協会・本づくり協会所属。noteでの小説連載は休止中ですが、時々趣味に走った雑記を書いています。http://www.a-horii.info/