ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第6章3話

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第6章 こころがクサクサ!

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3話

 陽太、遅いなぁ。
 そろそろ帰ってきてもいい時間なのに。
 さっきグレースから、ゴンの怪しげな行動について聞かされたばかりだから、不安で仕方がない。
 早く帰ってきて、陽太。そしていつものように私を抱きしめてほしい。
 私はソワソワうろうろしながら、耳を澄ませる。
 私はね、陽太やママさん、パパさんの足音が聞き分けられるのよ。うふふ、すごいでしょう?
 ……あっ。
 あの弾むような足音! 間違いない、陽太だわ!
 玄関のカギが開いて「ただいまー」の声が聞こえてくる。
 ほらね、当たったでしょ!
 私は陽太が部屋のドアを開けてくれるのを、今か今かと待つ。
 水の流れる音。手を洗って、カラカラッて変な声を出してペッてして。――それからまっすぐに部屋まで小走りに来て、ドアのレバーを下ろす。
「ミャオン! ただいま!」
 陽太! 陽太!
 私は大喜びで、陽太に身体をすりよせる。
 背負った大きなカバンを机のところに下ろす、そのほんの少しの時間ももどかしい。
 はやく、はやく抱っこして!
 そんな私の気持ちが通じたのか、陽太はすぐに私を抱っこしてくれた。
 ああ……幸せ♪ 陽太、会いたかったわ。
 でも、そんな幸せ気分を吹き飛ばす発言が飛び出したの。
「聞いてよ、ミャオン。帰りにまたあの大きな猫に通せんぼされちゃった」
 ……えええええ――ッ!?
 その大きな猫って、ゴンのことよね? それで帰ってくるのが遅くなったの?
 んもう! ゴンったら、どういうつもりなの!?
 陽太は私を抱っこしたまま、ため息交じりにベッドに腰を下ろす。
「あの『チョビ』とか『マンマル』とか呼ばれてる大きな猫、なんでぼくを狙うのかなぁ? ぼく、何にもしてないのに」
 本当よ! なんでなのかしら?
 陽太、大丈夫? ゴンに引っかかれたり、噛まれたりしてない?
 私は心配で、陽太の身体にキズがないか確かめる。 
「大丈夫だよ。あの猫、追いかけてはこないみたいだから。ほら、どこもケガしてないでしょう?」
 陽太はにこって笑ってくれた。
 そう? それならよかったわ。けど……心配。
 もし私の大事な陽太になにかしたら、絶対、ぜっっったい、ずぇ〜〜ったいに許さないんだから! たとえ相手がボス猫のゴンであろうとも!
 そりゃ、グレースから聞くゴンの武勇伝はすごいものばかりだけど。……私みたいな小さなおんにゃのこじゃ、ひとひねりかもしれないけど。でも!
 陽太を守るためなら、私、相手が誰であろうと、立ち向かうわ!
 だって、陽太は私の大切な人。私の一番大好きな人なんだから。
「心配しないで、ミャオン」
 ……そんなこと言われても。やっぱり心配よ。
 ゴンは私を「助けてやる」って言ってたけど、そんなこと頼んでいないし、助けてもらうような状況でもないのに。勘違いしてるって伝えたいけど――どうすればいいかしら。
 スノウさんや、グレースに伝言を頼む? でも、いつも頼りっぱなしっていうのも申し訳ないわよね。
 うーん、なにかいい方法はないかしら。
 私は陽太のおひざの上で丸くなる。こうしていると、安心できるの。
 いいアイデアが浮かぶのも、陽太のおひざの上にいる時。
「でも、よかったな。芽雨さんの誤解がとけて。あの女の子、キレイだけど色々と変だったしさ〜、ぼくのカノジョだなんてとんでもない勘違いだよね」
 あ、そうなの? そっちの誤解はとけたのね。
 いいな、うらやましい。
 ゴンの誤解もときたいわ。どうすればいいかしら……。
 陽太がゆっくりと背中をなでてくれる。はぁ〜、うっとりしちゃう。
「そうそう! それでさ、思ったんだけど。どうも宮尾くん、あの子のこと、知ってるみたいなんだよね」
 ハイ?
 『宮尾』って私のことよね!? え、なに? 何の話?
「ごめん、ごめん。あのね、宮尾くんが昨日言ってたんだ。あの女の子のこと。なんだったかな……『この辺のボスで、ケンカっぱやい』とかなんとかって」
 あー!
 言っちゃったかも。……うん、言っちゃった。
「だから宮尾くんに聞けば、あの子のこと何かわかると思うんだ。そしたらさ、芽雨さんみたいに、その子の誤解だっていつかとけるかもしれないじゃない?」
 ……え。ええ?
 ちょっと待って。
 陽太、待って。どういうこと?
 話が見えないわ。
 ちょっと頭を整理しなくちゃ。
 私は陽太のおひざから下りて、考えごとをはじめた。
 ええと……私にゴンのことを聞く? そうすると、どうやってゴンの誤解をとくことができるの? 陽太は今、そう言ったよね? でもね、私はゴンの誤解をとくにはどうすればいいのかって悩んでるの。私にゴンのことを聞かれても困っちゃう。私のほうこそ聞きたいくらいなのに。
 それに、ゴンとはまだちょっとしかお話したことないのよ。
 知ってるって言われても、ほとんどがグレースから聞いたことばかり。自分の目で確かめたわけじゃない。そんなので『知ってる』っていえるのかしら?
 私が悩んでいたら、陽太は何を思ったのか、おもちゃを私の鼻先に近付けてきた。
 ごめんね、陽太。今は遊んであげる余裕はないの。
 大事な考え事してるんだから。
「あれ? 遊ばないの?」
 うん。遊ばない。ゴンのこと、どうしたらいいか考えないと。
 でも、目の前でチョコチョコッとおもちゃを動かされて。
 そうやって誘われると、弱いのよね。
 どうしよう……ちょっとだけなら、遊んであげてもいいかも。
「ん〜。じゃあ、しまっちゃうよ?」
 えっ? おしまい?
 陽太ったら、おもちゃを片付けはじめちゃった。
 せっかくその気になったところだったのに……。
 陽太ったら、本当、気まぐれなんだから。
「本当に猫って気まぐれだよな〜」
 ……それは私のセリフよ! んもう……。
 陽太はどさっとベッドに腰を下ろす。
 そうそう、そうやってジッとしてて。今、考えているところだから。
 ゴンの誤解をとく方法。ゴンの誤解をとく方法。ゴンの誤解をとく方法……。
 私は、どうすればいいかなぁ?
「ああああああ! しまったぁぁぁぁ!」
 ひゃっ!?
 なになに? 何事? 陽太、なんで突然大声出すの!?
 びっくりして飛び跳ねちゃったじゃない!
「ご、ごめん。ぼく、大事なこと忘れてた!」
 え、何を?
「失敗したぁぁ!」
 だから、何? 陽太、私、全然話が見えないんですけど!
「ミャオン、ぼく、ちょっと出かけてくるね!」
 陽太はそう言い残すと、あっという間に身支度を整えて出かけていった。
 窓のカギがしまっているか、きちんとチェックしてから、ね。
 私はただ呆然と、陽太を見送るしかなかった――。

                        <4話へ続く>

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ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第6章3話

堀井明子

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堀井明子

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シナリオライターの端くれ。日本脚本家連盟・放送作家協会・本づくり協会所属。noteでの小説連載は休止中ですが、時々趣味に走った雑記を書いています。http://www.a-horii.info/