ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第5章3話

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第5章 こころがモヤモヤ!

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3話

 ぼくは重いランドセルを机の脇にドサッと下ろすと、出迎えてくれたミャオンを抱き上げた。
 うわぁ……。ミャオンは今日もふわふわしていて、あったかい!
 きっとさっきまでひなたぼっこしていたんだろうな。うーん、うらやましい!
「……それで、帰ってくるのが遅くなっちゃったんだ。ごめんね」
「みゃー」
 ミャオンはぼくが話しかけると、ちゃんとお返事してくれるんだよね。
 ぼくの気持ちが伝わってるような気がするから、いつもこうやって学校での出来事とかをミャオンに話してるんだ。
「あの『チョビ』とか『マンマル』とか呼ばれてる大きな猫、なんでぼくを狙うのかなぁ? ぼく、何にもしてないのに」
「みゅ」
 ぼくはベッドに腰を下ろすと、ミャオンを膝の上に乗せる。いつもなら、ミャオンはそのまま静かに座ってくれるのに、今日はちょっと違った。膝の上で何度か足踏みすると、後ろ足で立って、ぼくに抱きついてきたんだ。
 もしかして、心配してくれてる?
「大丈夫だよ。あの猫、追いかけてはこないみたいだから。ほら、どこもケガしてないでしょう?」
 ミャオンはぼくの目をまっすぐ見つめてきた。ぼくの気持ちを読み取ろうとしてるのかな。
 透き通った金色の目は、つやつや光って宝石みたいにきれいだ。今は昼間だから、黒目の部分は細く尖っている。夜になるとこの黒目が大きく丸くなるんだけど、それもまたキレイなんだ。何時間だって飽きないで見ていられそうな気がする。
 ぼくはミャオンを安心させるように笑いかけると、背中をゆっくり撫でてあげた。
「心配しないで、ミャオン」
「みゃー……」
 ミャオンは納得したのか、ぼくの膝の上で丸くなった。
 ふふ、あったかい。
「でも、よかったな。芽雨さんの誤解がとけて。あの女の子、キレイだけど色々と変だったしさ〜、ぼくのカノジョだなんてとんでもない勘違いだよね」 
「みゃう〜」
 本当にそうだよね、とか言ってるのかな。
 あ、喉をゴロゴロならしはじめた。よかった、安心してくれたみたいだ。
「そうそう! それでさ、思ったんだけど。どうも宮尾くん、あの子のこと、知ってるみたいなんだよね」
「みゃ!」
 あれ? ゴロゴロが止まっちゃった。大声出しちゃったから、驚いたんだね、きっと。
「ごめん、ごめん」
 ぼくは落ち着かせるように、またミャオンを優しく撫でてあげた。毛並みに逆らって撫でて、その逆立った毛を撫で付けてみたりを繰り返しながら。
「あのね、宮尾くんが昨日言ってたんだ。あの女の子のこと。なんだったかな……『この辺のボスで、ケンカっぱやい』とかなんとかって。少なくともぼくよりはあのキレイな子のこと、知ってるみたいじゃない? だから宮尾くんに聞けば、あの子のこと何かわかると思うんだ。そしたらさ、芽雨さんみたいに、その子の誤解だっていつかとけるかもしれないじゃない?」
 ね、名案でしょ!
 …………。
 ……あれ? ミャオンの返事がない。
 寝ちゃったのかな?
「みゃ!」
 わっ? ミャオンは急にぼくの膝から飛び上がると、トスッと床に降り立った。
 それから、落ち着かない様子で、ウロウロとぼくの足下を歩き出す。
 ――ひょっとしてトイレの時間かな。
 猫って、トイレの前後はこんなふうに動き回るんだよね。ううん、動き回る、なんてもんじゃない、大暴れって言った方がいいな。
 弾丸みたいに、部屋中をビュンビュン走るんだ。キャットタワーに登ったり、降りたり、ひとりで運動会をやってるみたいに。
 お母さんは野生動物の頃の本能がどうとか言ってたけど……。
「みゃうー」
 ミャオンは何か言いたそうにウロウロしてる。けど、部屋の隅に置いてある、ミャオン専用のトイレには行こうとしなかった。トイレじゃないってこと?
 それじゃあ、なんだろう。遊んで欲しいのかな?
 なら、おもちゃを用意しないと。
 ぼくは立ち上がって、棚の箱からおもちゃを取り出した。
 先っぽにフワフワのボールが付いた猫じゃらし。ちょっとボロボロになってきちゃったけど、まだ使える(多分、来週には壊されちゃうだろうけど)。
 ぼくは遊び慣れた猫じゃらしを手に取って、ミャオンの鼻先に近付けた。
 ミャオンはクンクンと匂いをかぎにきたけど、それでおしまいだった。
「あれ? 遊ばないの?」
 ちょいちょいとじゃらしを動かしてみるけど、ミャオンは軽く目で追うだけ。いつものように猫パンチを繰り出したりしてこなかった。
 そんな気分じゃないってことかなぁ。
 あ、それとも、このおもちゃに飽きちゃったとか!
「ん〜。じゃあ、しまっちゃうよ?」
 ぼくはまたおもちゃを箱にしまいながら、お母さんに新しいおもちゃをお願いしなきゃって思った。
「本当に猫って気まぐれだよな〜」
 ぼくはつぶやいて、またベッドに腰を下ろす。
 そういえば、宮尾くんはものすごく猫に好かれるんだったよね。公園に行った時、たくさんの猫が集まってきてさ! あれにはびっくりしたな。
 なにか猫に好かれる方法とかあるのかな? そうだ、ぼくを狙ってくる大きな猫のことも、相談してみたいな。美少女のことも教えてもらいたいし……うわぁ、宮尾くんに聞きたいことがたくさんあるなぁ。忘れないようにしないとね……てところまで考えて、ぼくは大変なことに気が付いてしまった。
「ああああああ! しまったぁぁぁぁ!」
 思わず頭を抱えるぼく。
 ウロウロしてたミャオンが、びょんって飛び跳ねて驚いてる。
「ご、ごめん。ぼく、大事なこと忘れてた!」
 宮尾くんの名前、教えてもらったけど。
 近所に住んでるってこともわかったけど!
 家に遊びに来てもらうことにもなったけど!!
 それをいつにするとか、どこかで待ちあわせるとか、そういう具体的なことは全然決めてなかった!!!
「失敗したぁぁ!」
 どうしよう、どうしよう、どうしよう!?
 ぼくの家はここだよって教えておけばよかった!(うちのお母さんたちはコジンジョウホウとかにはピリピリしてないほうだし、歳の近い友達なら怒らないと思う)
 また会えるかな? いつになるかな? 『お店』のあたりに行けばいたりして?
 ぼくはじっとしていられなくて――。
「ミャオン、ぼく、ちょっと出かけてくるね!」
 すぐさま身支度を整えると、大急ぎで家を飛び出した。
 
                           <4話へ続く>

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ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第5章3話

堀井明子

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堀井明子

ご支援を活力に変換して、今後の創作活動に生かしてまいります。各種沼への軍資金、猫たちへのおやつとなる可能性も捨てきれませんが……なにとぞ……!

書いてよかった……!本当にありがとうございます。
シナリオライターの端くれ。日本脚本家連盟・放送作家協会・本づくり協会所属。noteでの小説連載は休止中ですが、時々趣味に走った雑記を書いています。http://www.a-horii.info/