ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第7章3話

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第7章 招いたモノたち

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3話

「一生、家の中に閉じこめるってことだよな。そんなこと、許されると思ってんのか?」
 ギリギリと歯ぎしりするように、三ヶ田さんがいう。手もぎゅっと握りしめられていて、今にも振り上げてきそう。
「……許してくれないってこと?」
「当たり前だろーが! 窮屈でたまんねぇよ、そんな一生!」
「外は危険がいっぱいなんだよ!? 車や自転車にひかれちゃうかもしれない。他の猫とケンカになって大ケガするかもしれない。怖い病気にかかっちゃうかもしれない。迷子になって家に帰ってこなくなるかもしれない。ぼくは大事なミャオンにそんな危ない目に遭って欲しくないんだ!」
 ぼくはまくしたてる。
 ここで三ヶ田さんに負けちゃいけない。そう思って。
「……そ、そりゃ、おれ……あたしだって、そんな目に遭わせる気はない! だけどな! 外もそんなに言うほど悪くない! 楽しいことや面白いことがいっぱいあるんだ! 楽しい遊び場もある、友達だって増える、運命的な出会いだって……」
 ん? 運命的な出会いって? 頭の片隅に引っ掛かりを覚えたけど。ぼくは負けじと続けた。
「そうかもしれないけど、猫が外に出るってことは、それだけで、危険な目に遭う可能性が大きくなるんだ! どうしてそれがわからないの!?」
 ぐぐぐ……と三ヶ田さんは黙り込む。
 そうして、我慢ならないというように、ぼくの胸ぐらをつかんできた。
「つまり、お前はミャオンを……あの子を独り占めしようってんだな?」
「……うん」
「…………!」
「はぁ……まったく、何やってんのよ」
 急に呆れたような声が割りこんできて、ぼくと三ヶ田さんは飛び上がって驚いた。
 見れば、ぼくらのことを腕組みして睨みつけてるもう一人の人物が傍にいたんだ。
「芽雨さん……!」
「いつの間に!?」
 ぼくと三ヶ田さんは同時に声を上げる。
「さっきから見てたわよ。つまり、こういうことでしょ。ふたりは大林くんちのペットの飼い方についてモメている、と」
 芽雨さんはサラリとぼくたちの間の問題をまとめてくれた。
「う、うん。まあ、そういうことになるかな」
「お、おう」
 三ヶ田さんはそう言いながら、きまり悪そうにぼくから手を放してくれた。
 芽雨さんは軽く息を付くと、ピッと指を自分のおでこに当てて言った。
「なら、確かめにいけばいいじゃない。大林くんの家で、猫がどんな風に飼われているのか。どんな生活してるのか」
「!!」
「百聞は一見に如かず! Seeing is believing!!」
 芽雨さんはビシッとぼくらに指を突きつける。
「?」
 何を言っているのかわからなくて、ぼくと三ヶ田さんは思わず顔を見合わせる。
「あ、ごめんね。最近、英会話教室に通いはじめて。今もその帰り道なの。……つまり、人の話を何度も聞くよりも、自分の目で確かめたほうがすぐにわかるって意味。OK?」
 ああー……そ、そういうこと。
「お……オーケー」
 ぼくが仕方なく頷くと、三ヶ田さんもつられるように「わ、わかった」って言ってくれた。
 ――てことは、えっ。
 待って。
 ぼく、三ヶ田さんを家に招待する流れになっちゃった!?
 ええーっ。今日はママもパパも家にいるのに!
 こんな(ちょっとおかしな)美少女を連れて行ったら、何を言われるかわからないよ!
 ぼくがオロオロしていることを芽雨さんは気が付いてくれたみたい。
「もちろん、私も一緒に行くわ。ウワサのペット、まだ会ったことないから」って助け船を出してくれた。さすが、付き合いが長いだけあるね。 
「そ、そうしてくれると、助かるよ……」
 芽雨さんは幼稚園の年長さんの頃からぼくの家によく遊びに来てたんだよね。ママ同士が仲良しだから。
 最近は一緒に遊ぶ機会も減ってきたけど、芽雨さんが一緒に来てくれれば、ぼくも安心だ。
 なにより三ヶ田さんのこと、ぼくより上手に説明してくれると思うし。
「そうと決まれば、行きましょ。ほら、早く」
「う、うん」
 芽雨さんが先頭に立って歩き出す。
 ぼくと三ヶ田さんはその後を、黙々とついていった。

 ぼくたちを出迎えてくれたのは、ママだった。
「あらあら! 芽雨ちゃん! 久しぶりねぇ!」
 ママの声がいつもより1トーン高いのは、余所行きの声になってるから。お客様が来るといつもこうなんだよね。オトナって面白いなぁ。
「元気そうね〜。最近、遊びに来てくれないから、寂しかったわ」
 ママは芽雨さんをすごく気に入ってるみたいなんだ。いつも「芽雨ちゃんはいい子よね。仲良くしなさいよ」って念を押してくる。おもちゃを散らかしっぱなしで帰ったりしないからかな?
「こんにちは」
 芽雨さんはニコニコ笑ってる。一方、三ヶ田さんは……。
「…………」
 ものすごーく居心地が悪そうにしてる。家のあちらこちらに目を配っては、やたらと鼻を鳴らして匂いを嗅いでいる。……まるで犬か猫みたいだ。
「あら、その子は……?」
 ママが三ヶ田さんに気が付いて、目をまんまるくする。
「まぁ……」
 黙って立っていれば、三ヶ田さんは美少女だもんね。そりゃ、驚くよね。
「ほら、挨拶。『はじめまして、こんにちは』って」
 芽雨さんが三ヶ田さんの背中をトンと押す。
「お? あ、ああ、そっか……。ええと……『ハジメマシテ、コンニチハ』」
「は、はじめまして。ええと……?」
 ママがぼくと芽雨さんに説明を求めてる。そうだよね、そりゃそうだよ。
「私の友達です。三ヶ田さん。私たち、猫を見せてもらいたくて」
 えっ、芽雨さん、友達になったのの!? いつの間に!?
 ぼくは内心びっくり仰天。
 でも、ママはそれで納得したみたい。というか、ぼくが説明するより説得力があるかも。
「まぁ、そうなの! そういえば、まだ芽雨ちゃんには会ってもらっていなかったわねぇ。いらっしゃい。どうぞあがって。ミャオンは陽太の部屋にいるから」
 ママは芽雨さんと三ヶ田さんを快く家に招き入れてくれた。
「はぁい。お邪魔します」
 芽雨さんは笑顔で答えて、玄関先で靴を脱ぐ。ちゃんとお行儀よく、脱いだ靴の向きを変えて揃えて……。それから、ぼーっと立っている三ヶ田さんをせっついたりして。
「……ほら、三ヶ田さんも」
「あ、ああ……『オジャマシマス』」
 三ヶ田さんも芽雨さんの真似してる。……おかしいの。
 さっきまでぼくに殴りかかろうとしてた子とは思えないくらい、大人しくなっちゃってるよ。何だか別人みたいだ。
「……美人さんね!」
 すれ違いざま、ママはぼくの耳にこっそり耳打ちしてきた。
「…………そ、そう?」
 ちょっと、いや、かなり変な子なんだけどね……という返事は飲みこんでおいた。
 勝手知ったる他人の家――っていうんだよね?
 芽雨さんは迷うことなく、まっすぐにぼくの部屋へ向かっていく。
「ここが大林くんの部屋よ」
「お、おう」
 三ヶ田さん、なんだかすごく緊張しているみたい。かちんこちんってぎこちない動きしてる。
 ママに会った時とはまた違った雰囲気。どうしたのかなぁ?
 それより――気になるのはミャオンだ。
 いきなり芽雨さんたちを連れて行ったら、どんな反応をするかな?
 驚くよね? きっとびっくりすると思う。
 だって、ミャオンがうちの子になってから、友達を部屋に入れるのはこれが初めてなんだ。
 ……最初に招待したのは、宮尾くんだったのにな。まさか、芽雨さんと(よりによって)三ヶ田さんが一番乗りになるとは予想もしなかった。
 ミャオン、大丈夫かな……。
 ぼくはちょっとドキドキしながら、ドアのレバーを下げる芽雨さんの後ろ姿を見ていた。

                           <4話へ続く>

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ぼくとミャオンと不思議を売るお店 第7章3話

堀井明子

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堀井明子

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シナリオライターの端くれ。日本脚本家連盟・放送作家協会・本づくり協会所属。noteでの小説連載は休止中ですが、時々趣味に走った雑記を書いています。http://www.a-horii.info/