【⑪終_コーラティング】

リリック・ラボという作詞の講座を受けたので、①~⑩に渡ってまとめました。
受講料が5万円なのですが、正直そこまで価値がないなと思ったので、講座内容に興味がある方は、まずここを読んでみるといいと思います。

(この方は、一人で一曲作詞をしたことがないのに、本を出されています。一曲考える持久力がないなら、仲間を集めればいい!ということなんですけど、それと本来のコーライティングは本筋が違う)


2015年に「コーライティングの教科書」という世界でも他にない本を書かせていただきました。これは私がディレクター時代に海外で出会ったコーライティングという作曲方法を日本の作曲家たちにも分かりやすく解説した本です。これを書いたときには作詞家(しかできない)がコーライティングに参加するというイメージはそれほどなかったのですが、今では作詞家もコーライティングに参加しないと生き残れないのでは?と思い始めています。
どういうことかというと、この数年でコーライティングというやり方が日本にも浸透してきました。それに伴ってデモ音源のクオリティも上がり、そのデモ音源のクオリエティがリリース音源に近づいてきました。そうなると、ディレクターやA&Rはそのデモ音源にあまり手を入れずに済むようになります。大げさに言うと、デモ音源にアーティストが歌を入れてミックスをすればリリースできる。レコード会社の中に音源制作機能がなくなってきたのはここ10年のことで、外部の製作会社に丸投げなんていうのは良くあることです。しかし、デモ音源のクオリティが上がったことで、その制作会社にも頼る必要がなくなってきたのです。いまやプロスタジオを使わなくても完パケ可能だし、クリエイターと直接やり取りすることで無駄も省ける。そう、チームとなったクリエイター達で制作会社の役割を果たせてしまうのです。その時に、チームの中に作詞もできるクリエイターがいればいいのですが、そうでないことも多い。海外だとトップライナーといわれるメロディメイカーは作詞までするのが普通ですが、日本の場合はシンガーソングライターでもない限り作詞のできない作曲家が多い。そしてJポップは詞が重要だということは、日本人なら誰でも知っていますよね。
ここまでコンペについてお話ししてきましたが、これからコーライティングがもっと広まるにつれて、起こるもう一つの現象がコンペ時代の終焉です。
この15年、レコード会社の楽曲の見つけ方・決め方はコンペが主流でした。この数年でインディーズやアイドルなどアーティストが急激に増え、簡単に配信などもできるようになりリリース数も増えました。またDAWの普及によってプロとアマチュアの境もなくなり作曲家もどんどん急増するなか、コンペという方法は集める方にも参加する方にも都合の良い方法でした。
コンペというのは基本的にはメロディを見つけるための方法で(作詞は作詞コンペと言います)、良いメロディが見つかればそれにレコード会社のほうでアレンジを施し、歌詞をつけて楽曲の全体を仕上げていたのです。かつてのレコード会社には、そういったことが出来るディレクターがいて、そのための予算がありましたし、多くの楽曲を集めることでたくさんの選択肢も得られ、組織化されたレコード会社にとってはその中から民主的に曲を決められることは都合がよかったわけです。たくさん集めた中から決めたのだから良い曲に決まっているという気持ちにもなれるし、上に対してもタイアップ先に対しても1000曲の中から選ばれた1曲です!と売り文句にもなる。また、ディレクターにとってはコンペが新人クリエイターの発掘の場でもありました。
しかし、制作機能がほころび、予算の減ったレコード会社にとって、”芯を食っていない”1000曲は必要じゃなくなってきました。コーライティングによる、クオリティが高く、芯を食っている数曲があれば十分になってきたのです。
最近、現場のA&Rと話をすると「もうコンペはやめた」という声をよく聞きます。売れているアーティストを担当しているA&Rほどそう言います。無駄に集まるストック曲を聴くのに飽き飽きしているし、芯を食っていない曲、クオリティの低いデモ音源に嫌気がさしています。レコード会社にとっては秘密内容であるコンペ情報が人づて・作家事務所づてにそこいらじゅうに広まってしまうのも危惧しています。増えすぎた作曲家に業界慣習という教育は施されていません。そう、いま彼らにとって信頼できる、安心の出来る少数のクリエイターで十分だというのです。
コンペがなくなると作詞コンペもなくなります。A&Rが信頼できる作詞家がいるところはその作詞家がプロデューサー的な立ち位置でアーティストの世界観まで作るでしょう。しかし、それを持たない、または必要としないA&Rはデモ音源についている歌詞までも含めて楽曲を決定するようになります。そう、最初に言いましたが“デモ音源にアーティストが歌を入れてミックスをすればリリースできる”、それを求めるようになるのです。
コンペの基本はメロディを決める作業だと言いましたが、今はアレンジや歌詞、世界観すべてを総合的にみて楽曲を決める時代になったのです。
実際にリリックラボex(extended:リリックラボの修了生による少数制の実践コース)ではCWF(コーライティングファーム:伊藤涼が関わっている作曲塾の修了生から成るクリエイターチーム)と年間60曲ほどをコーライティングによるデモ音源を作っています。ラボ生発案で行っている詞先コーライティング企画(ラボ生による詞をCWFにプレゼンし、その詞をもとにCWFメンバーがデモ音源を作る)では、10曲をプレゼンすると1週間もしないうちに殆どが売れて行ってしまいます(この時点で金銭は発生しません)。それだけ作曲家も“良い詞”を求めているし、それが採用に繋がることを体感しているのです。まだまだ作詞家がコーライティングに参加するという動きはリリックラボくらいでしか起こっていませんが、作詞家も“コンペ待ち”という受け身ではなく、積極的にアピールする時代がそこまで来ているように感じます。

座右の銘は、働かざるとも飯は美味い。