おすそわけ日記 36 「浮かび上がる」

中学高校と、写真部だった。

はじめて学校の暗室でモノクロ写真を現像した時のこと。白い紙に影が差すように黒い画が浮かび上がるのに衝撃を受けた。それで入部したものの、写真を撮るよりも現像をする方が楽しかった。

白い紙と浮かび上がる黒の対比に強く心惹かれる。

文字を紙に書き連ねるのもそう。想いを昇華するために書くこともあるけれど、書くと云う手の動作や、文字が紙の上に現れることに歓びを見出している。

生まれ変わったら、吟遊詩人になるつもりだったけれど、墨になって、しょりしょりと擦られて、紙に滴り落ちるのもいい気がする。

毎日、書く歓びを感じていたい、書き続ける自分を信じていたいと願っています。