【本19】コトラーの戦略的マーケティング

この本も会社の読書会で読んだ本です。

タイトルからは小難しい印象を受けますが、マーケティングとは何か、分かりやすく書いてあると思います。

英語で表現されている言葉は、時に誤った理解のまま、何となくこうだろうと思ったまま、自分の中にある意味づけで判断していることがあります。

マーケティングについても同じことが言えると思います。
その認識について、考える機会になる本です。

☆本の内容☆
唯一の競争優位は、企業としてどこよりも速く学習し、すばやく変化を遂げる能力以外にない。
多くの企業が「企業発想」から「市場発想」に変化できないまま、何年もの時間が経過している。
いまだ多くの企業が「顧客ニーズの適応」ではなく、「製品の売り込み」に終始している。

成功した新しい戦略はたちまち真似されてしまう。
だが新しい戦略の一部分を真似することと、その戦略全体を模倣することは、まったく別問題である。
偉大な戦略というものは、容易に真似のできない多くの強力な活動をもとにした独自の組み合わせから構成されている。

○古ぼけたマーケティング
・マーケティングと、販売を同一視している。
・既存顧客の維持よりも、新規顧客の獲得を重視している。
・顧客の生涯価値を大切にして利益を得ることよりも、個々の取引から手っ取り早く稼ごうとしている。
・目標価格の設定ではなく、原価ベースで価格を設定している。
・マーケティング コミュニケーション手段を統合せず、個々のコミュニケーション手段を個別に管理している。
・顧客の真のニーズを理解し対応することよりも、製品の販売に終始している。

○品質とは、顧客がわれわれのもとに戻ってくること、そして製品がわれわれの手に戻ってこないことである。

コスト削減にばかり目を奪われている企業は、決して大成功を収めることはない。
「売上がなければ、利益は残らないのである」

企業が才能のある人を惹きつけ、昇進の機会を与え、ステークホルダー(利害関係者)を満足させ、競合に打ち勝つためには、成長することが必要である。
だが同時に、成長そのものを目標とすることには注意を要する。
企業の目標は「利益を生む成長」でなければならない。

マネージャーたちは業界平均に勝るペースの売り上げと利益の伸張を迫られている。
その結果、彼らは可能な限りの市場と顧客をカバーしようとする。
そのため、自社のターゲット市場とイメージが曖昧になり、経営資源の有効性を希薄化してしまう。

マーケティングの中心的な役割は、利益成長を達成することである。
自社がターゲット市場において優勢でない場合は、マーケティングによって市場機会を見つけ、評価し、選択し、そのうえで頂上を極める戦略を定めなければならない。

マーケティングとは、マネージャーたちが顧客のニーズを評価し、その範囲と強さを測定し、利益を生む機会が存在するかどうかを決定する作業である。

マーケティング部門をもたないにも関わらず、大勢の熱心な得意客を惹きつけている会社がある。同社は広告も打たない。その1番の理由は、その店で働くものは誰もが顧客第一と考えているからである。

『従業員の雇用を保障するのは会社ではない。それができるのは、われわれの顧客だけだ』(ジャックウェルチ)

ウェルチは、従業員の所属にかかわらず、顧客を満足させること維持することがどれだけ大切かを、彼らの胸にしっかりと刻み込ませている。
「顧客のことを考えなかったら、何も考えていないも同然だ」

○市場細分化
あらゆる市場は、それぞれ異なるニーズと欲求をもった顧客のグループ(セグメント)から成り立っているという事実がある。
ターゲット・マーケティングを実施する場合、市場はいくらでも小さい「セグメント」に切り分けることが出来る。

○マーケティング・マネジメント・プロセスのおもな流れ
R(調査。市場調査) ➡︎
STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング) ➡︎
MM(マーケティングミックス。4P=製品、価格、流通ちゃねる、プロモーション)➡︎
 I(実施) ➡︎
C(コントロール。フィードバック、結果の評価、STP戦略とMM戦略の見直し、改善)

調査の結果、いくつかの顧客セグメントが明らかになったら、どのセグメントを攻めるかを決定する。自社の強みが真価を発揮できるセグメントに狙いを定める。
次に主要なベネフィットが顧客に分かるように、自社が提供するオファーをポジショニングする。ポジショニングとは顧客の心の中に企業が提供するオファーの主要なベネフィットとの差別点を植え付ける努力のことである。
実施段階で起こる多くの問題点は、製品管理部門、現場の営業部門、そして顧客サービス部門がきちんと連携していないことにある。これらの部門がスムーズに、しかもしっかりと結びつくためには、共同マーケティングが必要。

ブランド価値と顧客価値を一致させられない企業が多い。

○マーケティングとは、機会を発見し、開発し、利益を得るための技能である。
マーケターは、問題検出法を使用することによって、多くのことを発見できる。
現在の利用者たちに、どういった点に不満があるか、改良の余地はあるかを質問する。
・理想法 ➡︎ 消費者にインタビューを行い、彼らが現在使用している製品やサービスについて、それらの理想形を答えてもらうやり方。

○新製品やサービスをもたらす良質なアイデアを数多く開発するための2つのモデル。
・アイデア・マネジャー・モデル
企業が新製品やサービスのアイデアを求めるならば、新しいアイデアを集め、検討し、評価するシステムの構築必要である。さもなければ、たとえ名案であっても、様々な部門に散らばったまま消えてしまう。
①周囲の尊敬を集めている役職の高い人物をアイデア・マネジャーとして任命する。
②科学者、技術者、購買担当、製造担当、営業マン、マーケター、財務担当をメンバーとする、部門をまたがる委員会を編成し、提案された新製品やサービスを定期的に評価する。
③新しいアイデアをアイデア・マネジャーに伝えたいと考える人たちのためにフリーダイヤルを設ける。
④企業のすべてのステークホルダー(つまり従業員、納品業者、販売代理店、ディーラー)に対して、自分のアイデアをアイデア・マネジャーに伝えることを奨励する。
⑤年間を通じて最高のアイデアを出した人たちに報いるための報酬プログラムを正式に設ける。

せっかくのアイデアが、持って行く先がなかったり、その製品を支持する役職の高い人がいないために、消えてしまうことはなくなるだろう。
中には不適当なもの、実現不可能なものもあるだろう。それらはアイデアい・マネジャーから発案者に伝えられることになる。

・アイデア・マネジャーのアプローチによりもたらされる2つの好ましい結果
①まず、誰によいアイデアを伝えれば良いかが明確になることと、⑤報酬が与えられることから、革新志向の企業文化が生まれる。
②このアプローチによって、組織にもたらされるアイデアの数は増えるだろう。
一般には数が多いほど、その中に素晴らしいアイデアが含まれている可能性は大きい。

・戦略的ブレークスルー・モデル
企業は、販売目標を達成できない行き詰まった状況に陥っていることに、しばしば気づくことがある。売上目標を下方修正するか、さもなければ残ったままの戦略ギャップを埋めるために「ブレークスルー」アイデアを見つけなければならない。
課題①新しい顧客とセグメントを考えよ!
課題②新しい営業戦略を考えよ!
課題③新しい価格設定および機器のための融資解決策を考えよ!
課題④新しい製品特性を考えよ!
各チームはグループ単位でブレーンストーミングを行い、グループ全体に自分たちのアイデアをプレゼンテーションする。

戦略的ブレークスルー・モデルは、企業が方向性を見失い、革新的で不連続な思考を必要としているときには、きわめて有効である。
ブレークスルーセッションでは、経営幹部に対して常識的な前提や日常の仕事を忘れ、重要な新しいイニシアティブについて集団で創造的に考えるプレッシャーが与えらえる。

・企業が成長するためには、どんな方法が考えられるか
既存製品 ➡︎ 既存製品を既存顧客へ販売する(市場浸透)
                    新たな地域へ参入する(物理的か拡大)
                    既存製品を新たな顧客グループへ販売する(セグメント侵攻)
改良製品 ➡︎ 改良を加えた製品を、より多くの既存顧客へ販売する(製品改良)
                    新たな地域へ改良製品で参入する
                    改良製品を新たな顧客グループへ販売する
新規製品 ➡︎ 既存顧客へ訴求することができる新製品を開発する(新製品開発)
                    新たな地域のために新製品を開発する
                    新たな顧客グループへ販売するための新製品を開発する(多角化)

さらに、①新しいバリューデリバリー・システムの革新と②新しい市場空間への侵攻を付け加えることができる。
様々な事例はすべて、隣接の、あるいは異なる産業への参入を望む企業に機会の可能性があることを証明している。

○どんな企業も、顧客の「なぜおたくから買ったほうがいいのか」という質問に答えられなければならない。
企業は自社のコア・ポジション、バリューポジション、およびトータルバリュープロポジションを見出す作業を行うことによって、自社が顧客に提供するトータルオファーがなぜ競合より勝っているかを示すことができるのである。

○ブランド開発者は意味を伝える次の5つの特徴に注意を払わねばならない。
・特質…強いブランドは買い手の心にある種の特性を思い起こされる。
・ベネフィット…強いブランドは特徴だけでなく、ベネフィットを暗示する。
・企業価値…そのブランド名を聞いた時に、その企業が大切にしている価値観を連想させるブランドが強力なブランドである。
・個性…強力なブランドは個性的な特質を暗示する。
・ユーザー…強力なブランドは、そのブランドを購入する人々の種類を暗示する。

ブランド・ロイヤルティが醸成されるのは、顧客の期待にうまく応えた時である。
さらに、その期待を超えたものを提供できるならば、そのブランドは「顧客の喜び」を獲得することができる。

○まず顧客視点の4Cを通してマーケティング・ミックスを考え、次にそれをベースに4Pを構築すると良い。
【4P】
・Product(製品)
・Price(価格)
・Promotion(プロモーション)
・Place(流通チャネル)
【4C】
・Costomer Value(顧客にとっての価値)
・Cost to the Customer(顧客の負担)
・Convenience(入手の容易性)
・Communication(コミュニケーション)

○営業マンの生産性向上
最初に進めるべきは、作業効率性分析を行うことによって、営業会議、報告書の作成、製品や販売技術についての勉強、移動、顧客との商談などに、各営業マンが時間をどう配分しているのかを明らかにすることである。

○企業は、顧客とのすべての接点において首尾一貫した肯定的なメッセージを伝えるよう努力しなければならない。

○AIDA
見込み客の注意(Attention)を引き、
興味(Interest)を駆り立て、
欲求(Desire)を喚起し、
そして行動(Action)を起こさせる。

AIDAアプローチを用いることによって、営業マンはイニシアチブを取って見込み客とのダンスを「リード」することができる。
上手に問いかけ、耳を傾け、そして相手から学ぶことのできる営業マンが本流。

とりわけ製品やサービスの内容が複雑な企業は、最初の段階では製品やサービスそのものを売るのではなく、問題解決の可能性を売るべきである。

○新規顧客が再度購入してくれるかどうかは、最初の購買時の満足度に深く関係している。
常連客を惹きつけたいならば、彼らを対象として定期的に満足度調査を実施しなければならない。
調査の結果が、多くの不満な顧客の存在を示しているならば、その理由を突き止めなければならない。
失望した顧客から受けることになる損害は、彼らの生涯価値の損失にとどまらない。
腹を立てた顧客の影響力を過小評価してはならない。「非常に不満」だった顧客は、その不満を11人の人に話すという。そしてそれを聞いた人たちは、また同じ話を周りの人にする。その結果、その会社の悪口を聞く人は指数関数的な勢いで増えていく。
こうして不満を抱いた顧客の生涯価値を失うだけでなく、話を聞き、その会社からは買わないようにしようと決めた多くの潜在的顧客まで失うことになる。

皮肉なことに、不満が解消した顧客は、往々にして不満を感じたことがない顧客よりも、その企業に対して高いロイヤルティを持つようになる。

○ブランドとは単なる製品ではない。売り手によって作られるサービス、価値、および保証の総体である。
企業はいかに自社のオファーを差別化するかにしのぎを削っている。
今日の抜け目のないマーケターは、製品ではなくベネフィットの束を販売している。
購入価値を売っているだけでなく、使用価値を売っているのである。

○目標を設定し、それについて組織の同意を得なければならない。
目標は組織の全員に伝えられなければならない。
また目標への到達過程が測定されなければならないし、目標達成が困難な場合には修正が加えられなければならない。
つまり、プランニングというのは、良い経営が本来備えているべき一部分なのである。

○マーケティング・プランには
①状況分析
②マーケティングの目的と目標
③マーケティング戦略
④マーケティング活動プラン
⑤マーケティング・コントロール
が最低限含まれていなければならない。
①➡︎現在の状況についての記述、SWOT分析(強み、弱み、好機、脅威)、ビジネス上の主要な課題、将来についての主たる前提、の4つから構成される。

○マーケティング以外の機能(購買、製造、財務など)とマーケティングをうまく結びつけるために大切なことは、部門同士がよい密接に仕事を進め、お互いの意見の不一致について話し合うことで、企業全体にとって長期的な利益につながる解決法を全体で見つけることである。

○現状の評価と分析、および是正措置
①フィナンシャル・スコアカード(とりわけ損益計算書に注目)
損益計算書が企業の今期と将来の業績を評価する適切な手段だと言えるのか。
必要なのは、企業の基本的状況をより詳しく明らかにする、市場ベースの数値である。したがって経営陣は、マーケティング・スコアカードも同様に検討する必要がある。

経営陣はフィナンシャル・スコアカードにばかり集中してはならない。
良好な財務結果の裏には、いまにも姿を現しそうなマーケティング上の弱点が潜んでいるかもしれない。

②マーケティング・スコアカード
売上が順調に伸びているにもかかわらず、市場シェアが落ちてきている場合、おそらく市場全体が拡大しているか、企業の成長率市場全体の成長率に追いついていない。つまり、競合各社がそれ以上の伸びを示しているということになる。

③ステークホルダー・スコアカード
企業は株主だけでなく、すべての利害関係者(ステークホルダー;従業員、納入業者、流通業者、小売業者、コミュニティ)を喜ばせなければならない。

これら3つのスコアカードは、自社の最近の業績を評価し、将来に向けて業績を改善するための新規プランを準備する際に役立つ。



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