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《詩》静かなるヒーロー

あの目指す白いテープまで
ただ風だけを感じて
地面を思いきり蹴って
走っていけたら 心地いいんだろう

何も持たず
ただ自由に 身軽に
ゴールの瞬間には 両手を天に挙げて
笑顔が弾ける瞬間を
写真に収められたなら
ヒーローに違いないんだ

だけど
風を感じるより
空気を読み取ることが強いられ
地面を蹴るより
視線を気にしてひっそりと
いつからだろう
デッドラインを
ゴールと呼ぶようになったのは

両手と心の中に
厄介な荷物を抱えたまま
それでも
息を切らして生きている

複雑だからこそ
誤解がほどけた時の喜びがある
気になるからこそ
人の痛みを感じられる
静かだからこそ
心の叫びが響くんだ

ヒーローは呼ぶものじゃなくて
目指すものでもない
初めからずっと
静かにここにいる

(にじぐち)

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