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ラガーの祖 ドイツ

今回は前回の続きですね。

15世紀に、バイエルンはミュンヘンで誕生した
ラガービール。
今や世界の主流となったスタイルですが、
ラガー、ピルスナーから
様々なスタイルが誕生して行きます。

ラガーそのものが
ドイツで生まれた事をキッカケに
ドイツではたくさんの
ラガースタイルのビールが誕生して行きます。

-ヘレス-
ドイツのミュンヘン生まれのビール。
“ヘレス”(Helles)はドイツ語で”淡い”という意味。
英語の”pale”のドイツ語が”hell”
昔の濃い色をしたラガービールより淡色なので、
そんな名前が付いたとか。
苦味が少なく、透き通った明るい色が特徴です。
実はハイネケンがこのスタイルに当たります。
めっちゃ美味いです。

-ミュンヒナー-
ヘレスと同じくミュンヘン生まれのビール。
元祖ラガービールですね。
伝統的なものは暗い色で、一度は消滅します。
現在シュパーテン社が蘇生させ、
ピルスナーのように明かるいものになります。
ヘレスと比べて、モルトの味わい、香りがしっかりとしてる(らしいです)。
めっちゃ美味いです。

-ドルトムンダー(エクスポート)-
ドイツのドルトムント地方発祥のビール。
サッポロビールの”エビス”はこれになります。
濃くて芳醇で、美味い。
ドルトムントは盛んに輸出を行っていて
(ハンザ同盟)、
もちろん当時は馬車ですよ。
なんとか日持ちするよう美味しいビールを造り、
それが評価され、ドルトムンダーは
プレミアムビールと言われるようになります。
エビスって、なんだかちょっと贅沢ですもんね。
輸出用のビールということで、
エクスポートと呼ばれることもあります。
めっちゃ美味いです。

-ドュンケル-
ドイツ語で暗い、濃いって意味です。
そのまんまで、色が暗めで濃いめのビール。
めっちゃ美味いです。

-シュバルツ-
ドイツ語で黒という意味。
黒色のビールです。
ダークラガーと言われることもあります。
めっちゃ美味いです。

-ボック・ドッペルボック-
元の名はアインベック・ビール。
ドイツのアインベックで生まれたビールになります。
発音が鈍ったか、スペルミスか、
いつしかアインベック→ボックとなりました。
マルチン・ルターが愛したビールで、
元気が出るような、色も濃くて力強いビール。
度数も高めです。
ボック(Bock)とは雄ヤギのことを指し、
まるで雄ヤギのように力強いビールだっ。
と、ラベルに雄ヤギがいることが多いのですが、
マルチン・ルターとボックビールのお話を聞くと、
勘違いと分かるのです。
が、それはまた今度お話ししましょう。

ボックよりさらに濃いのが、ドッペルボックになります。
ドッペル(Doppel)とは英語のダブル(Double)と同意です。
”液体のパン”と言われてましたが、
このお話もまたいつか。
アイスボックなんてものもありますが、
飲むことはほとんどないと思うので割愛します。
もちろん、めっちゃ美味いです。

-ラオホ-
燻製のビールです。
出来あがったビールを燻製するのではなく、
燻製された麦芽を使用するため、
燻製香のあるビールが仕上がります。
“ ラオホ”(Rauch)は”煙”の意です。
ハンベルグという街で生まれたビールで、
そこには豊かな森林があり、
ブナの木を燃やして麦芽を乾燥していて、
その香りがついたそうです。
どんな味?と聞かれますが、
誤解なく言うと、めんつゆ味です。
めっちゃ美味いです。

-メルツェン/ウィンナーラガー、ヴィエナラガー-
前回の記事でも書いた通り、
まだ冷凍・冷蔵技術がない頃、
冬の間にビールを仕込み、それを夏の間に飲む。
とりわけ、3月は夏前最後の仕込みになるので、
日持ちするように、念入りに醸造されたそうです。
そのため品質が高く、3月に仕込むビールを特別に、
メルツェンと呼ぶようになりました。

この、秋まで汚染することなく耐えたビールを
神に感謝するお祭りが、
オクトーバーフェストになります。

オクトーバーフェストで飲まれるのが
メルツェンなのはそんな理由ですが、
10月までに仕込んだビールを飲まないと、
次のビールが仕込めなくて、
どうせ捨てるくらいならみんなで飲もう!
と集まって飲み始めた。なんて説もあります。

19世紀後半、ドイツの醸造技師 ガブリエルが
オーストリアのウィーンに
ウィンナーラガーの祖、ドレアーさんに
醸造を学び、レシピを譲り受けます。
そこで得た知識をメルツェンの醸造に活かし、
その年のメルツェンは大好評だったそうです。

そう言った変遷により、
たまにメルツェンとウィンナーラガーを
同義語とするものがあるそうです。

ウィンナーラガーといえば、
ウィンナーモルトを使用し、
赤褐色のスッキリちょいコクのビールです
(” ヴィエナ”とは英語でウィーン)。

しかし、日本で醸造されているのはほぼ見かけません(ミツボシビールさんが出していたっけな?)。

しかし、このウィンナーラガーはアメリカ大陸に渡り、そこで人気を博することになります。

メキシコではネグラモデロ(Corona Extraを造っている会社が造っているんです)。

NYではブルックリンラガーが大人気。
(ボストンのサミュエルアダムスはどうなんだろう?)

これは個人的な見解ですが、今でいうアンバーラガーはウィンナーラガーのことなんだろうなぁと思っています。
(余談ですが、スペインにはアンバネグラというウィンナーラガーがあります。)
長くなりましたが、めっちゃ美味いです。


ラガーだけで大ボリューム。
まだピルスナーが残ってますよ。

黄金色、キリッとガスと苦味の効いた味わい。
日本の4大ビールメーカーのものは
ピルスナーになります。

このピルスナーの元祖が
最近、コンビニ?でも見かけるようになったと
噂のチェコ産のピルスナーウルケルになります。
って話は前回しましたね。

ピルスナーと一口に言っても、
これにもまた種類があって

アメリカンピルスナー/アメリカンラガー
イタリアンピルスナー
ボヘミアンピルスナー
ジャーマンピルスナー

出来た国によって、
ちょこちょこ味わいや製法が違うんですねぇ。

日本の大手のものは
ジャーマンピルスナーになり、
ピルスナーウルケル
ボヘミアンピルスナーになります。
(”ボヘミア”は昔のチェコ地方の呼び名)

アメリカンピルスナーは僕の感覚ですと、
日本のものよりライトなピルスナーな気がします。
バドワイザーが代表例ですね。
スーパードライよりも軽い。
そんな気がしませんか・・・?

イタリアンピルスナーというのは
実はここ数年聞くようになったスタイルで、
文献を読んだわけではなく、
色んな人の話を聞いただけですが、

ドライホッピング(ビールにホップの香りを移す製法の一つ)を行ったピルスナーを指すようです。

それの元祖がビリフィーチョイタリアーノ(Birrificio Italiano)のTipopilsになるそうです。
死ぬほど美味しいです。

他にもヨーロピアンラガー/ヨーロピアンピルスナーがあります。
千葉県は夢の国に醸造所を構える、
ハーヴェストムーンさんのピルスナーが
これに当たり、
味わいはボヘミアンとジャーマンの
良いとこ取りと言ったところでしょうか。

どう定義されているのかよくわかりません。
本当はわかるんですけど、ビアガイドラインを見てもこれ!って答えが無かったので、あまり触れないでおきます。

こんなもんでしょうか!

あとは似たようなものというか、
いくつかのスタイルの
組み合わせが多かったりします。
今回のような大元さえ知っていれば、
飲んでいる方であれば味の想像が予測できます。

例えば、ラオホボック。

ラオホを飲んだ事がなければ、
もちろん分かりませんが(汗
言葉の意味はもうお分かりですよね。
飲まずとも、燻製香がする濃いめのビールかな?
と想像が出来るようになります。

大事なのは応用ではなく基本です。

それでは最後に、
ややこしいスタイルを一つ紹介して終わりにします。

スタイルの名前はカリフォルニアン・コモン

ビールの多くはヨーロッパ生まれですが、
こちらはアメリカ発祥のビアスタイル。

当時カリフォルニアで
金の採掘が行われていて多くの労働者がいました。
そこに巨大なマーケットを予想した醸造家が
酵母を持ってくるも、それはラガー酵母。
カリフォルニアは温暖な気候が故に、
低音で醗酵するラガー酵母はうまく活動しません。

しかし、逆転の発想か、
ラガー酵母をエール酵母を発酵させるような
高温帯で発酵させようと試みるのです。

そんな発酵をしてところ、蒸気機関車のように蒸気がもくもくと出たようです。

そのように生まれたビールが
カリフォルニアン・コモンです。

蒸気がもくもく出てきたの見て、
それは”スチーム”と呼ばれるようになります。

“エールような香りとラガーのようなキレを持つハイブリッドビール”
なんてよく言われますね。

この醸造を行なったブルワリーがいくつかあったようですが、
今でも健在なのは
アメリカのビールを支えるアンカー社です。

このアンカー社のスチームは広く支持され、スチームの名は知られるようになりますが、困ったことに、アンカー社はこのスチームという名前を商標登録してしまうのです。

これにより、他のブルワリーがスチームという名前を使うことが出来なくなってしまい、今ではカリフォルニアン・コモンがスタイル名となります。

これが、スタイル名といい醸造の仕方といい
ややこしいアンカー社のスチームのお話です。

余談ですが、全く逆の醸造をしたのがケルシュというスタイルになります。

と〜っっても長くなりましたね。
ざっくりですがスタイル毎の出自も書けましたし、
ほぼほぼラガービール完全版と言ってもいい気がします。

さらに膨大なボリュームで
エール版を作るのかと思うと、
先が思いやられます。。。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。
それでは、また。


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