蒙昧
蒙昧したような意識の中、朝を迎えてしまった。
意識の外で、霧に煙立ったような世界はやがて幻覚へ吸い込まれる。長いと思われた朝は知らぬ間に過ぎ去り、追いつくことを諦めた私は夜に取り残された。
この中途半端な時間が、いつまでも続けばいい。
私は何にもなりたくないのだ!
あぁ、このまま何も知らぬ、さみしい自分のままで綺麗に終わりを迎えられるなら、どれほど幸福か。手短に、衰えにとらわれることなく、良い感じに。艶やかなピンク色が、褪せるという感覚を知らないように。
人はそれを可哀想だと、不幸だと手を合わせ笑うけれど、例えそういった場合でなくても、常に死んだような人の感情を勝手に推し量っていいものだろうか。他人が誰に干渉していいのだろうか。
身を振れない心への推理は、心臓を素手でなぞられたように気持ちが悪い。そのまま心臓を掴まれて、殺されてしまうと恐怖する。他意は嫌だと、言い切ればそれで終わってしまう。
けれど、私は私の意思を持っていないから、口は死人のような説得力でしか存在しないだろう。
だから君とは話したくない。
ほら、お前に聴こえる私の言葉は空虚な呪文でしかないだろう。
分かってよ!
……。
青空が、夕焼けが、暗闇が美しいと、そういった押し付けられた感情でしか貴方と話せない。
貴方は夜に取り残されたりはしない。朝昼を進み、貴方は大人のようなものになる。
生きている。それは凄い事なんだ。
私みたいな人間ともつかない朧げなものには、できないことだから。